第006話 ステータスとセドナ村への帰郷
「ナージャ、何か弾いて貰えるかしら?」
馬車の中でシャルロッテさんから言われナージャさんは上の棚から楽器らしい物を取り出した。それは木製で弓の様な形をした物に縦に弦が沢山張られていた。
「それ楽器なの? 何か変わった形をした楽器ね」
ミリアーナが驚いてるけど無理は無い。俺も町で見るのは木箱を棒で叩いたり、5・6本弦を貼り付けて弾くようなのくらいだからな。これは10本以上、15本くらいあるんじゃないかな?
「リーフと言います。まあ練習用の物だから良い音はしないのですけど」
「これで練習用なの?」
ナージャさんはそのリーフを膝の上に乗せて指で弦を弾いて音を出して行く。
ポローン、ポロローン
綺麗な澄んだ音が響く、音の調整を終えて曲を弾き出した。リズムの良い明るい曲だ。でも町の騒がしいだけのモノと違って情感を動かされるような曲だな。
流れるような指使いで何かカッコいい。これが多分本物の音楽と言うヤツなんだろうな。
『主よ、コレット達と別れたから今日からまたお主の調整を再開するのじゃ』
気持ちが落ち着いて来たからかリリィが話し掛けてきた。でも調整なぁ、身体の調子は良くなったけど強くなった気がしないんだよなあ。
『なっ、何を言うのじゃ! 魔法の発動がしやすくなったと言うておったではないか』
ああー、確かに。でもそれ以外でさ、力が上がったとかの実感が無いんだよな。俺って強くなってんのかね。コレット達にもどんどん追い付かれて来てたし。
『お主が言うからあの娘等の調整をしたんじゃろが! そもそもあの娘等は素で成長期なんじゃし初めた頃が1番伸びやすいのは当たり前じゃろ!』
まあそう言われるとそうなんだけどね。
『仕方のない奴じゃ! 分かりやすく数値で教えてやるのじゃ!』
アイリス 精霊剣拾得時→シラルの町最終日
体力量 10→10
魔力量 18→20
筋力量 12→13
瞬発力 13→15
スキル
魔力操作レベル013→016
火魔法レベル 014→014
回復魔法レベル000→010
[精霊剣保有魔力量 100]
[精霊剣魔法レベル 100]
成人男性平均ー成人女性平均
体力量 20ー15
魔力量 05ー10
筋力量 20ー17
瞬発力 20ー18
スキル 魔法使い平均
魔力量 030
魔力操作レベル 025
各属性魔法レベル023
『スキルレベルは10を超えるのが使える目安なのじゃ。回復魔法は100を超えると部位欠損の治癒も出来るのじゃ。リリィもレベル100だから当然出来るのじゃ』
……身体能力が成人女性より低い、低過ぎる。いや、コレット達と行動していて分かってたけど数字で聞くとやっぱりショックだな。って、それより精霊剣魔法って何だ? レベル100って何だよ。
『精霊剣魔法はリリィの魔法なのじゃ。お主の適正に左右されとるがリリィは本来あらゆる魔法を使えるのじゃ。魔力量100とは精霊剣リリィが保有出来る魔力量の事なのじゃ。外魔力循環は時間が掛かるが元から保有しとる魔力でなら即時魔法を発動させられるのじゃ。――いざと言う時の為に普段は使わんようにしとるがの』
あらゆる……って事は俺も使えるようになるのか? あと魔力操作レベルと火魔法レベルとかの違いって何だ?
『お主の資質次第なのじゃ。魔力操作レベルは魔力を集め放出、操作する技術の事なのじゃ。火魔法レベルは集めた魔力のその属性への変換効率の事じゃな。――回復魔法は知識技術が必要になるから別枠じゃがの』
んー、成る程。でも魔法関係も低いな。これからどうしていけば良いんだか。
『魔力量と魔法操作レベルは我の調整である程度上げられるのじゃ。各属性の魔法レベルは魔法を使う技術じゃからお主の努力次第じゃな。じゃがリリィは精霊剣、お主には魔法剣士を目指して貰いたいのじゃ』
魔法剣士……、どっちも中途半端だからな。まあ剣の拙い部分を魔法で補って来たからこれまでと変わらないか。
『(何と消極的な……、じゃが今の能力では仕方ないかもしれんの。鍛練もしとるし長い目で見てやるのじゃ)』
「ねえギルド長、今日中に次の町まで行っちゃうの?」
「いえ、途中の村で一泊するわ」
「ふうん、レイク達も馬に乗ってるから町まで行っちゃうのかと思ったわ」
レイク達は何時の間にか馬に乗っていた。ミリアーナの言う通りこれなら1日で次の町まで行けるのに。普通馬車の護衛は軽装で警戒しながら走って付いて来るものだ。って言っても行商人の馬車の護衛くらいしか聞いた事ないけど。
「ふふっ、それよりギルド長はレーナに譲ったから、これからは名前で呼んで頂戴」
「ええ、……そうするわ」
「あらあら。人の事口説いておいて、私の名前も知らないのかしら?」
おお、ギルド長の声が低くなった。まあ散々ちょっかい掛けてたからな。でも俺は関係ないですよ? 姿勢を正して目を閉じておこっと。
「もっ……ちろん知ってるわよ。ねえリリスちゃん?」
そこで何故俺に振る? そっと目を開けるとギルド長と目が合ってしまった。
「ん、シャルロッテ、フローディア様」コクリ
だが甘い、知っているのだよ。アンタみたいな危険人物の情報を覚えておかないでどうする。俺の処世術が火を吹くぜ、ふはははは。
『処世術??』
「リリスちゃんは良い子ね。様付けは要らないわ。シャルロッテで良いわよ」
「へえ、苗字持ちって事は貴族様?」
「一応ね。でもその家の出ってだけよ?」
「「「…………」」」
ミリアーナの露骨な話題逸らしにシャルロッテさんは冷たい笑顔のままミリアーナを見つめている。俺もこの空気に耐えられずミリアーナにジト目を向ける。早く何とかしろよ。
「はぁ、降参、悪かったわよ。お詫びは今夜体で払うわ」
「…………要らないわ」
このタイミングで良く言えたな。シャルロッテさんの視線が極冷えだぞ。ぶるりと震えちゃったじゃないか。
「そう言わずに、ね? 今ならリリスちゃんも付けるわよん?」
「ちょっ、やめっ」
ミリアーナがいきなりスカートを捲ってきた。そうなのだ。今日は白いひらひらのスカートにブラウスを着させられているのだ。シャルロッテさんの護衛って事の筈だったのに!
「はぁ〜、顔を赤くしちゃって可愛いわぁ」
「抱き付くな、んっ、やっ、めっ」
その後抵抗虚しくオモチャにされてしまった。シャルロッテさんが憐憫の目を向けてくる。――けど助けてくれないんだよ? 上目遣いで訴えるけどニッコリ笑顔で返された。巻き込まれたく無いんですね? 分かります。
「シャルロッテ様、セドナ村に着きました」
「ふえっ!」
御者をしてたヴェルンさんがシャルロッテさんに声を掛けて来た。ってちょっと待って? セドナ村?? 何で!?
「どうしたのリリスちゃん?」
「ふふっ、この村はリリスちゃんの故郷なのよ。もう簡単に来られなくなるんだから、此処で一泊しようと思ってね」
いやもう20年近く来てないんですけど? 家族が今どうなってるかも知らないし、生きてたとして女装して会うなんてとんだ罰ゲームじゃない?
俺の逡巡を無視して馬車は村へと進んで行ってしまう。
村に入る前にミリアーナとナージャさんが馬車を降りて、馬に乗ってリックとトマソンが歩いて村の中に入って行った。謎の行動だ。
窓を小さく開けて外を見ると朧気ながらに覚えている村より大きくなってる気がする。しかしこの辺の村々は皆んな木造りの家で変わり映えはしないから懐かしい気はしないな。
「リリスちゃん、ずっと此処に来て無いんじゃない?」
俺は頷く事しか出来ないでいるとシャルロッテさんが俺の手を取ってきた。
「大丈夫よ、貴女のご両親は健在だわ。会ってあげなさい」
優しく微笑んでくるシャルロッテさん……貴女も俺を小娘扱いしてません? でも35歳のおっさんなのよ? 両親と20年振りの再会が女装してって、軽く地獄だよ?
「…………この格好で?」
その笑顔のままピシリと固まるシャルロッテさん、考えてなかったのか。
「ええ〜、良いじゃないその格好で、可愛いんだしぃ」
「そうね、室内でなら変装を解いても良いわ。今日はリリスちゃんはご両親と過ごしなさい」
面白がってるだけだろミリアーナ。シャルロッテさんも結局同意してしまった。まあシャルロッテさんは純粋に俺と家族を引き合わせたかったんだろうけど。
馬車を止めて御者のヴェルンさんとナージャさんが話しを通してシャルロッテさん達は村長の家に、俺は20年振りに実家に泊まる事になった。
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