第038話 ちょっと口下手だからって
「はい、あーん」
もぐもぐ。
「はい、これもあーん」
んっ、もぐもぐ、――ごくん。何故か思考放棄した一言でミリアーナが機嫌を直してご飯を奢られた。
「何で……構う?」
俺の質問にミリアーナは何かを見極めるようにジッと見つめて来た。
「私女の子が好きなんだけど、なーんかリリスちゃんの事は女の子として見れちゃうのよねー。見た目が超美少女でぇー、スタイルも良いしぃー。幼過ぎる所為かなーんか庇護欲が駆り立てられちゃうのよ」
ぐぐっ。近い近い、そして匂いを嗅ぐな。て言うか幼いて! やっぱりチンピラより変態の方が苦手だよ!
『えっ? 変態ってミリアーナの方じゃったの? チンピラの方でなくて?』
どっちもだよ! 体触って来るような奴等だぞ?
『アレと一緒は流石にミリアーナが可哀想じゃないかの。一応お主を助けたのじゃぞ?』
うぐ、――まあ確かに、戦力的にも受け入れるしかないしな。
「私1人じゃ流石に碌な仕事が無いしね。まぁ一緒に頑張りましょ?」
「……んっ」コクリ
リリィ、今日はお前も持って行くからな? 疲れたら回復頼むぞ?
『うむ、じゃがリリィは補助に徹する故なるべく自分で回復するのじゃぞ?』
充分だ、俺も自分で覚えたいしリリィの魔力に侵されたくないからな。そう言えばリリィ、前に俺の目を良くしたりしたよな? 体力付けたりとかは出来ないのか?
『あれは本来あるべき状態に戻したに過ぎん。が、出来ん事もないかの』
おお、じゃあやってくれよ。
『抵抗無くなって来たの、お主。じゃがリリィとしては持久力より瞬発力を伸ばしたいのじゃ』
んん〜? 何でだ? て言うか両方強くすれば良いじゃないか。
『両立はヤメておくのじゃ。お主の小さな体ではバランス型では中途半端どころか殆んど効果を感じれんじゃろな』
それなら持久力で良くないか? 年齢で落ちて来るだろうし元々体力無いから付けたいんだよな。
『そんなもん魔法で回復すれば良いのじゃ。素の瞬発力を上げておいた方が魔法で強化しても出力が出るからの』
んん〜……成る程。持久力上げても硬い奴速い奴相手じゃ攻撃は通じないし逃げられないって事か。
『そう言う事じゃな』
実際この華奢な体じゃパワーなんて上げてもたかが知れてるか。――言っていて虚しくなるな。
食事を終えてミリアーナとギルドに戻って1階ロビーのベンチでまったりしていると、コレット達がご飯を買って持って来た。
「仕事終わったのー? 大丈夫だったアレから?」
「大丈夫です。でも水汲みって結構キツいですね」
「でも馬小屋よりは良い」
「そりゃね、体力的には向こうの方がマシだけど防護服用意したり移動があったり面倒だもん、何と言っても臭いしね」
女の子は匂いが気になるか。まあ男にも人気は無かったけど。
「でも……、ソロの時、馬小屋清掃3軒受けてた」
「3件? アイリスちゃんソロだよね? それじゃ6千イェン独り占め?」
「んっ、午前中に終わる」コクリ
他の連中と取り合う事もないし安全に金が稼げるからな。
「おお〜、昨日は馬小屋と昼の仕事で1人5千イェンだからそう考えると良いのかな」
「時間的にも夕方までコッチは掛かるしねぇ」
「でもチームでやるとそんな沢山依頼ないしやっぱり臭いし汚いよ」
「女の子が好んでやる仕事じゃない」
「貴女達冒険者の時はどうしてたの?」
「大体同じですね。朝の仕事はお店の品出しとか荷運びとかで、その後外壁工事とかやってました」
「うん、それで1日1人4千イェンくらい貰ってたんだ。でも宿屋で2人部屋を3人で借りて5千イェン、朝晩のご飯で3千イェンでしょ。4千イェン余るけどキツくて毎日は出来ないし3日やって1日休んだら殆ど何にも残らなかったよ」
「でも冒険者ギルドにいた頃はギルドが仕事をくれるから食べさせて貰えるんだって教えられていて、信じてたのに……」
「ここを知ったら違った」
「仕事は変わらないのに貰えるお金が増えたし、寮生活だから食費しか掛からないもんね」
「昨日寮に帰ってお金を貰って、5千イェン、食費を引いても1人4千イェン残るって思ったら感動しちゃいました」
「泣いてたもんねー、コレット」
「あっ、ルルも泣いてたしラビィだって涙ぐんでたじゃない!」
「5日に1日仕事すれば生きていける。これは大きい」
「「そんな休まないわよ!?」」
「ミリアーナさん、皆さんちょっと良いですか?」
「カリン、どうしたの?」
「さっき絡んで来た人達の事なんですが」
「うん、どうなったの?」
「副ギルド長が10万イェンの罰金に10日間の馬小屋清掃を言い渡したんですが逆ギレして辞めてしまいました」
「あら良かったじゃない。残ってギルドの評判下げられてもねー?」
「それはそうなんですが、皆さんに逆恨みしてる可能性がありますから気を付けて下さいね。まあギルド長が戻ったら何とかするでしょうけど」
「分かったわ。皆んなぁ一、一応帯剣して行きましょうか。それと基本全員で動きましょ、特にリリスちゃんは1人にならないようにね」
「揉めたの……私、じゃない」
何で男の俺を1番の保護対象にするんだよ。
「でも目を付けられたのはリリスちゃんとミリアーナさんでしたよ?」
「ルルもそう思う」
「剣を抜こうとしたミリアーナさんも睨まれてたけど私達は空気だったね」
「コホン、たとえそう見えても全員気を付けるように」
「「「はーい」」」
「リリスちゃんも、だよ?」
「…………はぁい」ぷくぅ
今いち納得し辛い所があるけど何とか受け流した。俺は大人だからな。
『大人、――かのう?』
「ああ、そうでしたカリンさん。馬小屋清掃なんですが相手方の評判が良くて定期的に来て欲しいそうですよ?」
「そうなんですか? 今までそんな話しは聞かなかったんですけど」
「今まで……、私が……やってた」
「ああ、そう言えばそうでしたね。リリスちゃん、これからはもうやらないんですか?」
「1人で複数箇所やるから割が良いんだって、ねっアイリスちゃん」
「ああ、……成る程。では確認してから対策を考えておかないとイケませんね」
「んっ」コクリ
「それにしても、言葉遣い以前にリリスちゃんはお喋りが苦手のようですね」
「んんー、でも小っちゃい子みたいで可愛いし良いんじゃないですか?」
「……小っちゃい子……」ボソッ
「まあ乱暴な言葉使いされるよりは良いですけど」
「でも、私達にはちょっと喋れるようになったよね?」
「ああ〜……そうね、確かに」
「なっ、何ですかそれ! 私にも喋って下さいよ!!」
「ひゃうっ!」
「ほら駄目ですよカリンさん、小っちゃい子はすぐ怖がっちゃうんですから」
「ああっ、ゴメンねリリスちゃん」
「うぐぐっ……」
小っちゃい子……、ちょっと口下手だからってヒドい。
『ちょっと??』
「それじゃそろそろ仕事に行きましょうか」
「賛成ぇー!」「「はーい」」
その後トラブルも無く昨日と同じ現場で仕事を熟してからご飯を食べて寮に帰った。まあ回復魔法使ってるのは速攻バレたけど。
「だってリリスちゃんがそんな体力ある訳ないもん」
やかましい。それより問題はシャワーを浴びる時に起きた。ミリアーナが最後まで一緒に入ろうとしたからだ。
「昨日は皆んな一緒に入ったんでしょ! 何で今日は別々なのよー!!」
いや、知らんがな。
『お主はマッサージで寝落ちしとったから本当に知らんのじゃがな』
「今日はリリスちゃんまだ元気だから大丈夫なんですぅー」
「ルルは一緒でも良い」
「ルル、火に油注がないで!」
「そうよ良いじゃない! 私にもお世話させてよぉー! もしくはお世話してよぉー!」
シャワーのお世話って何だよ。俺はヨボヨボのジジイかっつうの。
『散々されておったろう。と言うか寧ろお姫様的な方であろうな』
何を言ってるんだお前は?
ミリアーナはコレット達に押し付けた、――けど無理だった。恥を忍んでお姉ちゃん呼びもしたのに耐えられた。何がそこまでさせるのか。仕方がないから回復魔法のマッサージで手を打って貰った。リリィに教えて貰いながらやったよ。
次の日も同じように仕事をして、その次の日は休みにして剣の練習にあてる事にして過ごしていった。
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