第036話 チーム初仕事、足手まといはだぁれ?
「それで、――どうしよっか?」
「えっ?」
「仕事、お金リリスちゃんに借りる形になっちゃったし少しでも稼いだ方が良いのかなって」
「「「………………」」」
3人が顔を見合わせてから話し合っている。もう馬小屋の掃除くらいしかないんだけどなあ。
汚くてキツいから人気ないけど俺は良くやってたんだよ? 危険が無くて取り合いにもならないからトラブルにならずに安定して稼げる貴重な仕事だった。
「リリスちゃん、その仕事やりたいと思うんだけど良いかな?」
「ちょっとでも稼いでおかないとね」
「うん」
俺は構わないと言うと皆んなで馬小屋清掃を受ける事になった。馬小屋清掃は一箇所2人までだから2つ受ける手続きをコレットがしに行った。
「本当にこんな依頼で、良いの? アイ、……リリスちゃん」
ラビィが不安そうに俺に抱き付いて聞いて来た。
「んっ」コクリ
まあ一時的とは言え組んでるんだから先輩としてフォローしないとな。
「リリスちゃん何か用意する事あるかな?」
「あっち、奥。清掃用の、防護服借りる。汚れて良い服、着て、――タオルも必要」
ふう、女言葉は良くわからんけど、この娘達相手なら少し話せるようになったかな?
「「………………」」
「…………何?」コテン
「ううん、何でもないよ」
「うんうん、何でもない」
「気にしない」
「??」コテン
『コレット達はお主の事を回復魔法以外何も出来ない無知なお姫様のように思っておったからの、……仕事の知識を教えられて戸惑っておるのじゃ』
俺そんなイメージだったの!?
『お主……、村にいた時は寝てばかりだった上に湯浴みも食事もこの娘等に世話されとったろうに』
リリィが呆れたように両手を広げてジト目で心を抉ってくる。いや確かにそうだったけど、あまりにも自然に世話を焼いてくるから受け入れちゃったんだよ? ……楽だったし。
『楽だからって普通は受け入れんじゃろ』呆れ顔
ぐはっ!!
その後、馬小屋清掃の準備をして店に行って、依頼を受理した事を伝えて仕事を始める。
「いやー、助かります。最近は中々受けていただける人がいなくてね」
1つ目の場所に行くと依頼者のおじさんが笑顔で迎えてくる。まあ元々まともに受けてたの俺だけだったからな。依頼で町を10日以上空けてたし。
「しかし4人もですか? 依頼は2人までなのですが」
「ここは私達2人です。初めてだけどリリスちゃんがやり方を知ってるって言うんで教えて貰おうかと思って」
言葉使い言葉使い……。えーっと聖女モードの時みたいにやれば良いのかな?
『それが出来るんならそれが良いのじゃが、……無理な時は取り敢えず微笑んでおくのじゃ』
「――成る程、お嬢様は経験があると。ご自分の馬の世話ですかな?」
「? ………」ニコッ
どう言う意味だ? お嬢様とか訳分からんわ。
「それならば此方のお嬢さん方は私の方でお教えしましょう」
「……??」コクリ
「「ありがとうございます」」ペコリ
「いえいえ、では初めましょうか」
良く分からんが手間が省けたな。この場はコレットとルルに任せてラビィともう一つの現場に向かう事にしよう。
『多分、金持ちのお嬢様が自分の屋敷でちょっと馬の世話を手伝わせて貰った程度だろうと思われたのじゃろうな』ボソッ
「お嬢様が……ですか?」
『だから当然次の現場でもこの反応になるのじゃな』
「んっ、大丈夫」ニコリ
取り敢えず有無を言わせず進めてしまおう。その後ラビィと糞尿をまとめて捨てて、水で洗い流して新しい藁を敷いて仕上がりを見てサインを貰って皆んなと合流してから帰った。
「うう〜、臭かったよぅ。匂い付いてないよねぇ?」
「その為の防護服、……だよ。シャワー浴びて、着替えれば大丈夫」
「それにしてもおじさん最後までチラチラ見に来てたね?」
「ん、……不本意」ムスッ
「あはは、リリスちゃんが可愛い過ぎて見に来てたんだよー。ずっとリリスちゃん見てたもん」
「うえっ?」
気持ち悪っ! 思わず怖気が走る。オッサンにそんな目で見られるって何つうエグい罰ゲームだよ。
「これで1人千イェンか、割に合わないと思うんだけど」
「でも、――冒険者ギルドより良い」
「うん、半分の5百イェンだもんね。だから誰もやらないよ。まあ千イェンあれば安い所なら1日の食費分になるからやる意味はあるけど」
「2箇所以上やれば黒字」
「そっか、ルルの言う通り私達は寮生活になったから宿代も掛からないもんね」
「うん」
「傭兵ギルドってそれでもやってイケるのかな?」
「……多分?」コテリ
「あはは、そこは多分なんだね」
それだけ冒険者ギルドとその上の商業ギルドがぼったくってるって事なんだろうけど。
ギルドに戻ったら先ず防護服を洗って返してシャワーを浴びて一息ついた。何故か俺の体を皆んなで洗うのが当たり前になってる事に疑問を感じるんだけど。
『抵抗せんからじゃろう』呆れ顔
楽だからなぁ。
「はあ、さっぱりしたぁ!」
「うん、でもおじさんに定期的に来てくれないかって言われちゃったんだよね。仲間に相談しますって言って来たんだけど」
「ルルはパスしたい」
「うーん、他の仕事が取れた時はそっち優先したいよね」
「そうなんだけど、私達リリスちゃんに借金押し付けちゃったから確実に受けられる仕事を確保しておいたらって考えちゃうんだよねぇ」
「「うっ」」
「――気にしない」
気を張り過ぎても長く続けられないし無理しないのが1番だからな。
メインの仕事は家の改築工事の手伝いだ。馬小屋清掃の時に一緒に受けておいた。10時から16時までで4千イェン貰える肉体労働系の仕事としては標準的だ。
「本当はギルドに帰る時に何か買って来たかったんだけどねえ」
「流石に馬小屋清掃で臭いまま食べ物買いたくないよ」
「うん」
「もうちょっとまったりして、9時過ぎに出て買い食いしながら現場に行こっか?」
「賛成ぇー」「「んっ」」
9時過ぎてギルドを出て、屋台で肉と野菜を挟んだパンとスープを買って皆んなで食べてから現場に向かった。
「おう、女の子4人か。大丈夫か? 力仕事だぞ?」
「大丈夫です、頑張ります!」
「あんまり酷いようなら帰って貰う事になるからな? でも無理はするなよ?」
「「はい!」」「「ん!」」
それから崩したレンガを町の外に捨てて新しいレンガを持って来たり、屋根や柱に使われた木材を薪にして新しい木材を持って来たりしていく。
「此処って結構大っきな家が出来るんだねえ」
「3軒潰して大っきな家を建てるんだもんね」
「大きい」
「3階建の宿屋になるそうですけど、レンガで建てるみたいですね」
「おうよ、と言っても基本は木造になるけどな。商工ギルドじゃもうコレが主流になってるな。木とレンガの複合で5階建てまでは出来るからよ」
「なんたってこの町の商工ギルドと傭兵ギルドは俺等が建てたんだからな? ……にしても嬢ちゃん等、意外と動けるじゃねえか」
それ俺入って無いよな? 1人手足が震えてるけど、覚えたての回復魔法で疲労を回復させる事が出来なかったら付いてイケなかったぞ?
「お嬢様も中々頑張ったぞ? これならちゃんと金も出すから安心しな」
年端もいかない少女達に働き盛りのおっさんが体力で負けるなんて。途中リタイアになってたら致命的な精神ダメージを負ってたな。
「……はい、ありがとうございます」
お陰で魔力が空だ。覚えたてでかなり効率悪かったからな。リリィを置いて来るんじゃなかった。持って来てたらアイツに回復させてたのに。
「領都はもっと高い建物だらけなんですかねー?」
「そうなんじゃない? 一番栄えてるんだから」
「いやいや、確かに領内では一番栄えてるけど建物の高さはそうでもないんだよ」
「そうそう、儂等は領都でそう言う建物を建てようとしたんだがケチが付いてな」
「ケチ?」
「ああ、商業ギルドと教会から圧力が掛かって途中で取り壊しになったんだよ。ああー! 今思い出しても腹が立つ!!」
「自分達より高い建物を建てられるのが気に入らなかったんだな」
「肝っ玉の小せいセコい奴等だよ!」
「奴等の建物は石造りで3階建てが限界みたいだからなぁ。悔しかったらもっと高い建物建ててみろってんだ!」
おっさん等の話しを聞き流し、その後も何とか仕事を続けやり切った。
でも体が痛ぁい! 長時間の力仕事ってマジでキッツい! だから今まで避けて来たのに!
その後動けなくなった俺は3人にその場でマッサージを受けた。そして何故か気づいたら着替えて部屋で朝になっていた。
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