第028話 報酬と、尋問?
「アイリス、今ギルドが空いてるから依頼報告するならやっておけ」
「んぁふ、…………んにゅぅ、……行くぅ」
ふて寝してたらエリックに起こされた。念の為フードを深く被って寝ぼけ眼のままギルドに入って行く。寮から徒歩1分て良いよな。依頼報告してすぐ帰れるし。
ふらふらと若干怪しい足どりでギルドに入って行くと4つある受付が2つ空いてる。その空いてる所に行こうとしたら受付と話してたレイクが手招きして来た。
「アイリスさん、粗方事情は話してありますから此方にどうぞ」
「んっ」コクリ
成る程、目立たないように手早く済まそうって事か。やるじゃないか。
「アイリスさん?」
しかし受付の女、カリンが訝しそうに顔を覗き込んできた。そして衝撃を受けたかのような顔をして俺の手を取って引っ張っていった。
「ギルド長ぉーー!? ギルド長ぉーー!! 大変ですぅーーっ!!!」
「痛たっ、何? 何!? 痛い痛いぃーーっ!」
「ちょっ、カリンさん? 何してるんですか!? 待って下さい! カリンさぁーん!?」
レイクが止めるも有無を言わせず3階のギルド長室に連れ去られた。何がどうなってるのか全く分からん。レイクもエリックも分かって無さそうだ。
俺何かやっちゃいました? 心当たりが全く無くて怖いんだけど?
『え? ……無いの? ……全く?』驚愕
「ギルド長、カリンです! 緊急事態です。入りますよ!」
「何ですかカリン、騒々しい」
凛とした声に惹かれて目を向けると、白銀の髪に切れ長の碧い瞳をした物凄い美人から冷たい視線を向けられていた。――受付のカリンがだけど。
このギルド長、女性の中では背が高くて185cmもある。俺の頭2個分は高くて爆乳、ミリアーナよりもデカい。今まで見た中でも1番デカい。俺の頭くらいあるんじゃないかと思う。
俺より少し年下くらいか? すっごい美人だけど冷たい印象で怖いんだよな。けどカリンは意に介してなさそうだ。
「見て下さいアイリスさんを! この変わりようは只事じゃありません! これは最早アイリスさんじゃなく、アイリスちゃんです!!」
「「………………」」
――心底どうでも良い事だったな。
ホッとしたけど、こんなのに受付なんてやらせて大丈夫か傭兵ギルド? そしてカリンさんよ、勝手にフードを捲るな、頭を掴むな、ギルド長に差し出すな。荷物の受け渡しか?
「何ですかその反応は、っと……そう言えばギルド長は余りアイリスちゃんと接点がなかったですね。アイリスちゃんは最近鏡見ましたか?」
「…………?」コテン
「可愛い、じゃなくて見て下さい。ほらコッチです」
部屋の中にある鏡を見させられる。鏡は貴重だからな。普通の家じゃ置いてないんだよ。でも肌艶が良くなった程度で大袈裟なんだよ皆んな。
『「………………………………」……(汗)』
鏡に映った自分の顔は、肌艶が良くなった程度では説明がつかない程若く見えた。更に子供の頃より何か顔が整っているようにも見える気がする。――それこそ聖女様と言われれば信じてしまいそうに。
「うええぇーーっ!?」
パッと見10代前半にも見えるくらいに若返ってる(アイリス基準)!? えっ? 何これ?? 何で言ってくれないんだよリリィ!!?
『いや、お主が良く寝たからって皆に言っておったからそうなのかと思うたのじゃ(と言うか元々ちんまいのと童顔なのもあるじゃろな)』
んな訳ねえだろアホか! 常識で考えろよな!!
『かっ、体を調整した副次効果じゃな! 本来あるべき状態になる故、多少若返って見えるくらいはあると思うとったのじゃ。じゃが何故ここまでになったのかは分からんのじゃ! 言うておくがコレはお主の特異性であってリリィの所為にするで無いぞ!?』
邪剣が何か言ってるけど周りの反応が気になる。
「そんなに若返って見えるの?」
「アイリスちゃんはコレで35歳ですよ! 寝てただけでこんな事になりますか!?」
「……女性としては見過ごせ無いわね。――良いわ。この件はカリン、貴女に任せるわね」
「はいっ、徹底的に調べ尽くします! アイリスちゃん頑張りましょうね!?」
ギラギラした目で両手を握ってくるカリン。顔近っ、怖いんだけど? コレ断れないヤツだな。――俺は空気を読めるんだぞ?
『――空気を、……読める?』訝しげ
「まあその件はカリンに任せるとしてアイリスちゃん。取り敢えず此処で依頼の件の話しもしましょうか」
「……ん」コクリ
アンタもちゃん呼びかギルド長。
「先ずゴブリンを発見してから今日まで10日間、1日2万イェンとして20万イェンを村の防衛依頼として支払うわ」
コクッ(コレで村長に請求しなくて済んだな)
「次にゴブリン発見の報告に200万イェン、洞窟に居たゴブリンの殲滅に4万イェン」
「200……」
町の大人の一般収入が年150万イェンくらいだからそれだけ高く評価されたって事だろう。俺の貯蓄は120万イェン、殆んど傭兵になったこの5年でコツコツ貯めた物だ。冒険者時代はカツカツだったからな。
とは言え臨時収入の多さにドキドキして来た。目を大きくしてると俺の疑問を感じたのかギルド長が答えてくる。
「スタンピードに繋がるような事態じゃなかったらこんなに出さないわよ? 小さな集落くらいだったなら発見から殲滅までやって50万イェンくらいかしらね。本当ならもっと出してあげたい所なんだけどね。総報酬額が決まっていて他にも色々評価して出す所もあるからごめんなさいね?」
「んっ」コクコクッ
「次に調査依頼に同行してもらった件ね。サージェスから聞いたけど随分活躍したらしいわね。30万イェン出すわ。ちなみにサージェス達とレイク達がチームで70万イェン、エリック達が50万イェンよ。まあサージェス達はその後の調査報告等で別途支払われているけど……」
個人で分けたら俺が1番多くなるけど良いのか?周りを見るとサージェス、レイク、エリックがそれぞれ頷く。
「それでスタンピードが起きてからね。補給基地を作ったのは大きいわ。そのリーダーシップをとったって事で2万イェン、だけど貴方途中で冒険者に協力して隠れてた冒険者を見つけていったそうね?」
……何か不味かったかな?
「それに1人10万イェン、47人で470万イェン冒険者ギルドから貴方に貰ってあるわ。特別報酬として出すわね?」
470っ!!?
「そのお金に関しては傭兵ギルドではなく各冒険者への罰金から出ているわ」
余りの金額の多さに固まっているのにも構わずギルド長は話しを続けていく。
「そして聖女様の件は取り敢えず置いて……、最後の残党狩りに参加で5万イェン、合計731万イェンよ。ここまでで何かあるかしら?」
「………………」パクパク
「無さそうね。本来ならここにランク2のスタンピード対策報酬が上乗せされるんだけど……でも貴方、ランク2なのに前線で戦ったらしいわね?」
ビクッ!
怖ぇ〜。氷の微笑とでも言うのか、冷たい微笑みが大金が入りそうなのに懐が温まるどころか身体中から冷水を掛けられたみたいになってるよ。
「貴方、何時から冒険者になったの?」
「……よっ、傭兵、でしゅ」
また噛んでしまった。き、緊張するとダメなんだ。情け無くて涙目になってギルド長を見上げると難しそうに眉間を押さえている。怒ってるよコレ、怖いよぉ〜。
「噛んでからのその涙目、そして上目遣い、ポイント高いですよアイリスちゃん。流石です」
カリンが何か言ってるけどそれどころじゃないんだよ!?
「貴方は無事で戦えていたのだから問題無かったのかも知らないけど、ルールはルールよ。罰金として10万イェン、それと講習を8時間受けて貰うわ」
コクコク
普段なら10万イェンはかなり痛いけど大金が入るから今なら大丈夫だ。それで済むならぶっちゃけ助かったかな。
「で? どうしてそんな事したのかしら?」
ひょっ!? 全然助かって無かったぁーー!!
「えっ、えと、でちゅね? ……〜〜」
「「「………………」」」
うわー! また噛んだぁーー!! 恥ずかしくて思わず顔を覆って蹲ってしまう。鏡で見た自分の顔の衝撃で動揺が収まらなかった所為だ! 己れリリィめ!
『いやいや、今のをリリィの所為にするのは無理があるのじゃぞ?』
「ちゃあんと人の顔を見て話しましょうねえアイリスちゃん?」
「あっ止めっ」
カリンが立たせて手を取り顔を出させる。けどまだ顔が赤いんだよ? 恐る恐る周りを見るとギルド長以外皆んな目を逸らしてる。カリンはキラキラした目で見て来るけど。
ギルド長は目を閉じて眉間に皺を寄せている。やっぱり怒ってるよぉ〜。どうすんだよコレ、怖ぁ〜。
とっ、取り敢えず何もなかったかのように話しを続けよう。俺は何とか誤解を解く為に前線に行ってしまった経緯を話していく。
「……何時の間にか、前線に……」
「……迷子かよ」
「「「ぶふっ!」」」
サージェスぅ〜〜! 貴様覚えてろよ〜! それと邪剣もなぁ! リリィに促されるまま戦ってた所為なんだからな!?
『あれは……悪気は無かったのじゃ。……すまんのじゃ』
「……ふう、――不可抗力と言う訳ね?」
「んっ!」コクコク
「ギルド長、確かにこれまでのアイリスさんの記録から好んで戦うようには思えません」
「成る程。でもそれで罰を無くすと、それを言い訳にして真似する人達が出て来るだろうから、申し訳無いけど罰は受けて貰うわよ?」
コクコク(助かった?)
「その代わり冒険者を見つけた報酬に傭兵ギルドからも10万イェン上乗せしておくわ。あれで大分前線が安定したらしいからね」
実質マイナスは講習を受ける事だけになった。寮暮らしで食費だけなら10万イェンで3ヶ月はもつから大金を貰ってたとしてもありがたい。こう言う所も冒険者ギルドとは違うんだよな。嬉々として他人の金削ってくるからあそこは。
「さて、次は聖女様のお話しね?」ニッコリ
「にゃっ!?」
終わってなかった!?
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