第027話 精霊剣命名と帰還
翌日、エルビアの町から応援が来た。そこで疲労のあるシラルの町の兵士と冒険者、傭兵の殆どを帰してエルビアからの冒険者と傭兵に入れ替える事になった。
エルビアの兵士はそのまま帰って貰ったそう。スタンピード自体は終息してるから過剰戦力になるって判断だね。まあ文句が出そうだけどサージェス曰くウチのギルド長が黙らせたそうだ。
何だろね? ウチのギルド長ってあの背の高い暴乳美人だろ? 只者じゃない感満載の、何か考えたら怖くなるな。
その後サージェスの言っていた通りレイク達とガストン達と組んで残党狩りをした。前回調査し残した小集落に戻ってたのを見つけてどんどん潰して行っただけだけど、……俺以外が。
幾つかのグループに分かれて狩って行ったけど俺達とサージェスの組んだグループで殆ど狩ってしまったようだ。他の奴等も仕事をしろよな。走り回って大変だったのに、……俺は走り回っただけだったけど。
『でも1番疲れておったの』
うむ、頑張った。
『……褒めて無いのじゃが?』ボソッ
サージェスに褒められたけど頭を撫でて来やがったので睨み付けてやったら目を逸らした、……勝ったな。
『これで本当にスタンピードは終わったの』
ああ、問題は山積みだけどな。
『そうじゃの、じゃが先ずは我の名をそろそろ決めんか?』
それこそどうでも良いだろ。て言うかもう邪剣で良いよ邪剣で。
『それは止めた方が良いのじゃ。この精霊剣の形状が変わったのを覚えておるか?』
当たり前だろ?片手剣が細剣になってたんだからな。
『うむ、下手をするとお主のイメージする邪剣の形に更に変化するかも知れんのじゃ』
……………………マジかよ。
『大マジなのじゃ』
そんなモン持ってられねえぞ!? どうすんだよマジで?
『じゃからそんなイメージにならんような名を付けろと言っておるのじゃ!』
クソ、先に言っておけよな。イメージ、イメージ、邪剣に引っ張られないイメージ、うーん。アネモネ、――は妹の名前まんまだし紛らわしいよな。
『と言うか我が妹の姿をしてるからって剣に妹の名前付けるってどうなのじゃ?』
紛らわしいから諦めただろうが。
『…………あきらめ……』ジト目
何を言いたいのか意味が分からん。うーん、………………………取り敢えず……リリ……リリィで。
『随分可愛いらしい名じゃがまあ良い。しかしお主は昔からあだ名すらオナゴのようじゃったのか』
くっ、昔の自分のあだ名を使ったのがバレた。でもリリちゃんだったからな?そのまんまじゃないぞ? て言うか心を読むなよな!? やっぱり邪剣だろお前。
『表面で考えてる事くらいしか読めんのじゃ。それよりも邪剣じゃなくリリィと呼んでキチンと意識付けするのじゃ』
はいはい、リリィ、リリィ、リリィ、リリィ。
『――投げやりは良くないのじゃ』
村に帰ると夕方になってたから最後の1泊をさせて貰った。
「アイリスちゃん怪我してない?」
「大活躍だったんだってね? 凄いよ。サージェスさんが言ってた通りだったんだね」
「一緒に浴場行く。ルルが洗ってあげる」
避難してた村人が戻って来ていて冒険者や傭兵も居るし、1人で浴場なんて行けないんだよな。はあ、……聖女騒ぎが無ければなぁ。
『何を言う。アレで多くの命を救ったのじゃぞ? 少しは誇らんか』
それは分かるけど俺にとってはマイナスにしかなってないんだよ。教会に捕まったらマジでヤバい、奴隷のようにコキ使われる未来しかないんだぞ?
その後コレット達に食事の介護に添い寝までさせられた。子供の人形遊びに付き合わされた気分だ。
「アイリスちゃんもう帰っちゃうのね? 寂しいわ。また何時でも遊びに来てね?」
ガバッ!「むぐくん!?」
翌朝村を出る事になったけど村長の奥さんのユリカさんに熱い抱擁を受けてしまった。意外に力強くて離れない、いやマジで。コレ何時終わるんだ? 村長、嫁が他の男に抱き付いてるぞ? 止めろよ! 何で微笑ましい感じで見てんだよ!?
『…………』
何とか(コレット達が)引き剥がして帰りはコレット達とガストン達に紛れて帰る事になった。けどその前に大問題が起きたんだよな。
『うむ、リリィとしても想定外なのじゃ』
精霊剣、リリィの意匠がまた変わってしまったんだよ!? それも10代の少女が好みそうな可愛い意匠に!!
そして何故かコイツは自分の事をリリィと呼ぶようになっている。気に入ったのか?
剣の鍔が精霊の羽のように、柄が植物の蔓が絡み付いたようなデザインから花と花びらが追加されてるんだぞ? どうなってんだよ? こんなファンシーな剣恥ずかしくて持ってられないぞ!?
『お主のイメージに引っ張られたのじゃ。むしろ幼い頃のあだ名なのじゃ。子供のオモチャのような剣にならずにリリィはホッとしとるのじゃぞ?』
くうっ、今は鞘が無いって事で布を巻いて隠してるからバレて無いけどこれからどうすんだよ?
『昨日までの剣のイメージをしっかりすれば元に戻るかもしれんのじゃ』
……本当かよ。
『(まあ精霊剣のリリィと言う名の由来も自身の幼い頃の呼び名じゃし、リリィのこの姿もアイリスの妹の幼い頃の姿じゃからの。どちらも子供をイメージさせるから精霊剣がこの姿になったのもリリィにとっては予想通りなのじゃ)』
精霊剣としてはおぞましい邪剣のような姿にならなければそれで良いので敢えて言わずにいた。更に自分をリリィと呼ぶ事で幼さをアピールしてこの状態のイメージで精霊剣を固定させようとしている黒いリリィだった。
精霊の姿が幼い少女の姿になった事で精神も引っ張られたのか可愛い精霊剣が気に入ってしまったのだった。
その後町の手前の村まで進んでから軽食を摂って、夕方前にシラルの町に戻って来た。4mくらいの高さの木の壁に囲われていて内側はレンガで下半分くらい補強されている。こうやって囲われているだけで魔物から守られてる気がしてホッとするんだよな。
……いや、聖女騒ぎがあるからホッとしてられないか。町の中はほとんどが一階建てで木の柱に壁はレンガ造りで屋根は木造になっている。
一部商業ギルドや冒険者ギルドとかは石と木造の3階建てで商工ギルドと傭兵ギルドは木造5階建て、町で1番高い建物になっている。と言っても見栄を張ったとかじゃなく広い土地を貰えなかった為の苦肉の策らしいけどな。
まあ商業ギルドや冒険者ギルドは自分達より高い建物を苦々しく思ってるらしいけど。だったら広い土地を使わせれば良かったって話しだ。
フードで顔を隠して何とか騒がれずに傭兵ギルド隣にある寮の自分の部屋に帰る事が出来た。この寮も木造5階建てだ。と言っても民家のような薄っぺらい造りじゃなく町の塀より頑丈そうに見える。
『間違いじゃないのじゃ、かなり頑丈に造られとるのじゃ』
お前そんな事も分かるのかよ。最早なんでもありだな。
直接ギルドに入って依頼の報告をしようかと思ったけど騒ぎになるからとガストンに止められた。空いて来たら知らせをやるって言ってたから素直に部屋で待つ事にした。
冒険者ギルドと傭兵ギルドの大きな違いの一つがこの寮だ。狭くて立つ事も出来ないくらいだけど1人1部屋あって鍵付きの部屋が無料で使えるのは大きい。
俺が冒険者から傭兵に鞍替えした決め手がこの寮だ。冒険者時代は安宿代を稼ぐだけで苦労してたからな。
まあ入寮して10年以降は少しお金が掛かるようになるけど、それでも鍵付きで安宿よりも出費を抑えられるのは充分良心的だ。3人以上のチームを組んでる奴等は安宿をチームで1部屋借りた方が安くなるけど。
「――はあ……」
それにしても本当にこれからどうするかな。部屋のベッドに横になってこれからの事を考えると憂鬱になる。――問題は聖女騒ぎだよ。この剣みたいに俺も姿を変えられれば良いけど、そうはいかないからな。
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