第031話 団らん
「しかし凄まじいお力ですな。ダールトン様の言によればリアースレイ精霊王国でも特に貴重な大巫女様並みのお力だとか、重篤な病を癒し、更に若返られるのですから相当なものでしょう」
「そうね。これからの事もありますしギリアムも宰相も診て頂いたらどうかしら?」
「「なっ!?」」
アプリコットの言葉に国王ギリアムと宰相カールイスはドキリとした。アプリコットの現状を見て、あわよくば頼めないかと思いながらも欲をかいてしっぺ返しを喰らうのを恐れて言えずにいたのだ。
「何より、私また子供を産める様になったのですよ? 貴方にも色々頑張って頂かないといけないでしょう?」
「む、……確かに、それが出来れば……」
王位継承権を持つ子供に女性しか居ないのはベルドット達を廃したとは言え、王位を巡りこれからも貴族達の野心を刺激しかねない。
もし新たに子供が出来れば現国王夫妻が健在だと貴族達にアピール出来る上に、国民にも慶事としてアピール出来て良い事尽くめだ。
「良いのではないかしら。あくまでもアイリスちゃん次第ですが」
シャルロッテが前向きな返答をした事で一気に話しが進む事になった。
「もぐもぐ」
当のアイリスがお菓子に夢中で聞いていない様なので、具体的には後で調整する事になったのだが。
『王族に招待されたからと言って、現実逃避もあるのじゃろ』
『主ー?』
呆れるリリィとネネェだが、最早いつもの事になっているので動揺はない。今までの経験の賜物だった。
「そして、……ドラゴンではなくワイバーン、か」
「私達も初めて知りましたがダールトン様。リアースレイ精霊王国はドラゴンとワイバーンの違いについては広めないのですか?」
「今さらルードルシア教王国ラージヒルド商業王国が、……いえ、他の周辺諸国も認められないでしょう。現状こちらに害がある訳でもありませんし、広めたところで得られるモノもありませんからね」
「つまり得られるモノがあれば公表する可能性がある、と言う事ですか?」
真実が広まれば大きな混乱が生まれるだろう。自分達が誇るモノが実はドラゴン等ではなくワイバーンと言う下位の魔物だと言うのだ。
否定する国々はまだ良いが、本物を得ようと手を出して来られたら自分達の様な小国では対抗出来ない。
「ドラゴンに関しては私達も上手く使わせて貰うわ。だからこの国は気にせず国宝としておけば良いわよ」
「――成る程。フォーシュレーグ王国がドラゴンについて使うと言うのなら圧力はそちらに行く、と言う訳か。貴国としか接していないメメントリア王国には直接圧力を掛けられる者達は居ないであろうからな」
国王ギリアムの懸念を打ち消す様にシャルロッテが口を挟むが、敬語すら使わなくなってる事がその力関係を示していた。
「それにしても、リアースレイ精霊王国はこれだけの技術を持っていて覇を唱えるつもりは無いのですか?」
「積極的には無いですね。まあアイリス様の居るフォーシュレーグ王国に対しては別ですが」
「……そこまでですか」
国王ギリアムと宰相カールイスは、能力は分かるが一個人の為に他国と同盟を結ばせてしまうアイリスに、シャルロッテとは違う畏れを感じさせられた。
「まあそれでも我々の庇護下に入りたい、と、――提示する条件を乗り越えてやって来た者達を受け入れるくらいの度量はありますよ」
ダールトンの言う条件とはその国の王都に精霊神社、治癒院、商工ギルドに傭兵ギルド等リアースレイ精霊王国の勢力の受け入れだ。
超大国であるルードルシア教王国ラージヒルド商業王国の妨害をはね除けてこの条件を満たすのは難しい。フォシュレーグ王国もシャルロッテが色々と動いているが未だ現実味の持てない空想妄想状態なのだ。
アデール王国が愚王の我が儘と癇癪一本でルードルシア教王国ラージヒルド商業王国に認めさせたのが異常なのである。
「そう言う意味では元々教王国商業王国の居ない我が国は条件が揃い易かったか」
「それもこれも、フォシュレーグ王国が隣国となったからですね」
「ふふっ、そうだな」
本物のドラゴン、黒いドラゴン装備を作成して献上されると聞いて国王ギリアムは素晴らしいモノであろうが、国内のみの宣伝にして後は国宝としてしまい込むしか無いだろうと考えた。
大国なら国として他国に自慢して回るのだろうが外圧に耐えられそうにない。何とも歯痒いがこんな考えが出来る程の余裕が生まれた事が何とも嬉しい気分だった。
「ドラゴンやユニコーンと会話していたって本当ですかアイリスちゃん!?」
「ん(こんな感じ)」コクリ
「うわぁ、どんなお話ししたのですか!?」
「治療して、……ドラゴン、帰ってもらって、――ユニコーンも治して、帰した」
「ドラゴンは分かりますけど、ユニコーンも怪我していたのですか?」
「んっ」コクリ
「……えーっと」
「ドラゴンを住処から追い出そうとして怪我していた様ですね」
コクリコットの質問にシャルロッテが気を利かせ、アイリスの代わりに補足していく。
「成る程ー、……それで、ユニコーンを何処に帰したのですか?」
「アイリスちゃんを精霊樹の下に連れて行こうとしたので自分達だけで帰させたのですが、――成る程」
「シャルロッテ殿? 何か?」
「先程アイリスちゃんは魔力で会話をしていました。と言うより魔力に気持ちを乗せて送ったと言う方が合っていますか」
シャルロッテには感知出来た様で自分なりに解釈して説明していった。チラリとダールトンを見るが首を横に振り両手を上げお手上げのポーズをした。リアースレイ精霊王国でも一般的ではない知識なのだろう。
「それを感じ取るには一定以上の魔力感知能力と理解する知能、後は一定以上の魔力量も必要かも知れませんね」
「貴女は魔法使いとしてはどの位のランクなのですか?」
「この辺りでは最上位、だと自負しておりますわ」
「それは間違いありません。シャルロッテ殿はリアースレイ精霊王国でも上位に入るでしょうからな」
スカーレットの問いにシャルロッテが答えダールトンも補足していく。
「シャルロッテ殿は多才だな。しかしこんな光景を見れるとは思いもしなかったぞ」
疲れた様に言う国王ギリアムだが何処か嬉しそうであった。眩しいモノでもみるかの様に目を細め柔らかい笑顔で家族の団欒を見ていたのだ。
「私もドラゴンやユニコーンと会話出来る様になるでしょうか!?」
「コクリコット姫様もスカーレット姫様も、勿論アプリコット王妃様も相当に魔力が多い様です。可能性はあるかと」
「まあっ! それは素晴らしいですわ!」
「コクリコット、ドラゴンは何処に居るか分からないしユニコーンの居る場所には人が行けなくなっているのだぞ?」
と言うかドラゴンなんて何処に居ようと危険過ぎるしユニコーンの居る湖まで往復で4日、魔物も出るのに行かせられる訳がない。
「あっ、……そうでした……」しょぼん
「ふふっ、まあ魔法を鍛えるのは貴女の体の為にもなります。スカーレットや周囲の者達の話しを良く聞いて鍛えておきなさい」
「っはい、お母様」
「もうっ、お姉様と呼んでって言っているのにコクリコットまで、照れているのかしら? ねえ、アイリスちゃん? あら、寝てるわこの子」
お菓子を食べてお腹が膨れたアイリスは、興味の無い話しを子守唄に王妃に抱かれたまま寝入ってしまっていた。まあ我慢して起きているつもりも無かった様であるが。
「――後で説教ね」ボソッ
そんなアイリスを見て招待されていたビアンカが呟いていた。まあその説教がビアンカの望む通りの理解がされるかは甚だ疑問だが。
午後になって目覚めたアイリスが、お昼を食べてから国王ギリアムと宰相カールイスの疲労回復体質改善が行われた。因みに添い寝は無い、時間は1時間程、それも2人一緒にだ。
2人も流石に女性陣と比べて随分と簡易ではないか? と思ったが重病だったコクリコット姫や、毒の所為で体を壊され作り替える必要があったアプリコット王妃とは違うと言われれば反論の余地はなかった。
だが実は裏でアプリコットに自分より若返らせない様にとシャルロッテに頼まれていたのである。女として譲れないモノがあるのだろう。シャルロッテは国王ギリアムと宰相カールイスが不満を持たない様にフォローする事を条件に受け入れたのだった。
ダールトンが聞いていたらよりにもよってわざわざシャルロッテに弱みを握らせるとは、と怖じ気を走らせていただろう。
結果国王ギリアムは10歳程若返って30手前程、宰相カールイスは元々歳が行っていた為15歳程若返って40歳程の見た目となった。
「ふふっ、日々美肌に取り組んできた成果なのでしょう。貴方も此れから美肌に取り組めばより若く見られる様になるかも知れませんわよ?」
「勘弁してくれ」
多少体を動かすだけで明らかに快調なのが分かり上機嫌な国王ギリアムだったがアプリコットの言葉には苦笑いで答えた。ギリアムには肌くらいならそこまで拘りは無かったのだ。
そんなギリアムの様子に、上手く誤魔化せたと20代半ばの肌艶を手に入れたアプリコットは妖艶な笑みを溢していた。
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