第030話 王妃様の、完治??
そしてその傭兵達が王家に献上したのはユニコーンの角だけではない。黒いドラゴンの鱗から作られた装備一式もだ。手を出せる職人が居なかった為にリアースレイ精霊王国で作られる事になったが、完成したらそれも献上される事になっている。
ドラゴンの水場となっていた所から回収出来た物として送る事になったのだが、シャルロッテが全て隠し通すよりも有効活用しようと画策した結果である。
メメントリア王国には国宝となっている物はあるが真に国宝級の価値がある物は無かった。この黒いドラゴン装備一式は国宝級の中でも最上位、ユニコーンの角は更にその上の伝説級の代物だ。
それがアプリコット王妃、コクリコット姫の慶事に傭兵達から贈られたとして庶民にも御披露目された。ただユニコーンの角は兎も角ドラゴンの装備はまだ出来てない為、代わりにドラゴンの鱗が数枚出されている。
ただ周辺諸国ではワイバーンがドラゴンとして広まっている。本物のドラゴンが人前に姿を現す事が殆ど無いのでそんな勘違いが起きたのだ。
周辺諸国はワイバーンを倒してドラゴンスレイヤーと言い張っているのである。痛々しい事だがドラゴンの真実を広める事はその周辺諸国を刺激しかねない危険な事なのだ。
だがこのメメントリア王国は高地にあり他国との繋がりもリアースレイ精霊王国とフォーシュレーグ王国のみである。問題ないだろうと言う事で、国民にその勘違いを正してからお披露目となった。
「あれが王妃様を救うのに使われたって言うユニコーンとか言う希少な馬の角か、思ったより細長いんだな」
「でも綺麗ね。宝石みたい」
「それよりも黒いドラゴンの鱗だよ! コレが使われて黒龍の装備が出来るんだろ!? どんな感じになるんだろうな!」
「ああ、国宝でも最上級の装備になるって話しだしなぁ」
「何言ってんのよ! ユニコーンの角なんてその上の伝説級よ伝説級!!」
「アデール王国やカントラス王国ですら持ってねえってんだからなぁ」
「「すげえよなぁ」」
他国に誇れるモノが無かったメメントリア王国の国民にとって、自分達よりも大国である国々も持てない物を所有していると言うのは何ともむず痒く心をくすぐられるのだった。
メメントリア王国側も何もかもをシャルロッテの言いなりなのを良しとせず、まだ希少品があるかも知れないと人をやり湖まで確認に行かせたりもしていた。
しかしシャルロッテの報告にある通り、神聖な魔力によって湖があるとされる場所まで誰も進めなかったのだ。
交易品の交渉等も文句の付け様も無い内容なので、結局シャルロッテの言いなりの様な形で終えてしまった。
何の主導権を握る事も出来ずにシャルロッテに良い様にやられてしまっているが、しかしそのシャルロッテでも計算外の事が起きていた。
この国の安定化策として将来2人の姫のどちらかが王位を継いだ時に合わせ、もう1人の方を新たな公爵家にと言う話しでシャルロッテは話しを進めていたのだが翌朝になってその事態が一変したのだ。
治療を終えた王妃アプリコットの提案で王家でお茶をしていたのだが、何故かアイリスがアプリコットの膝の上に乗せられていた。
「お母様、アイリスちゃんを独り占めしないで下さい。ズルいですわ」
「あらコクリコット。私の事はアプリコットお姉様と呼んで頂戴と言ったでしょ?」
「お母様、戯れが過ぎますよ?」
「あらスカーレットが言ったのでしょう? 姉と言っても受け入れられそうだって」
そう、アイリスの所為でアプリコットが若返り過ぎたのだ。厳密に言えば張り切ったリリィとネネェの所為だが。
『どうじゃ! 精霊神様にお力を与えられたリリィが本気になればこのくらい訳無いのじゃ!! 偉大さが分かったであろう!?』
『ネネェも頑張ったなのー、誉めて誉めてー』
(――ああうん、偉い偉い?)
胸を張るリリィとネネェだが、アイリスが精霊神の魔力を受け入れられるかは別の話しで偉大さは関係無い。
アイリスもアプリコットが満足してそうなので不敬罪は無いだろうと安心するだけで、誰もやり過ぎと言う認識は無かった。
ニッコニコのアプリコット、33歳だったが大人の骨格なので20代前半、肌艶だけなら10代にすら見える状態になっていた。これで機嫌が良くならない人は居ないだろう。
体も完全に治され何ならまだまだ子供も産めそうである。――国王ギリアムが頑張ればの話しだが。
そう、シャルロッテの計算外とは新たに王子王女が産まれる可能性が急浮上した事であった。
その為公爵云々の話しは一旦流れる事になった。これから何人も産まれて公爵家が乱立、なんて事は出来ないのだから当然だ。
「確かに言いましたが、実際に姉として振る舞えとは言っておりませんよ。お母様?」
「あら怖い、そんなシワを寄せちゃって老けちゃうわよ。ねえアイリスちゃん?」
「ん? もぐもぐ」
「「……」」
心底楽しそうに振る舞うアプリコットにお菓子に夢中のアイリス、それをジト目で見るスカーレットとコクリコット。
だが2人共どこか楽しそうだ。様々な不安材料が払拭された上、こんな風にお茶をするのも数年振りなのだから当然だろう。
「……」
そして国王(夫)の前で王妃(妻)の膝の上でお菓子を頬張るアイリスを、頭痛を抑える様にシャルロッテが見つめているのだった。
「それにしても驚いたぞアプリコット。正に若返ったかの様だ。病の方は完全に治ったのだな?」
「はい、この子、アイリスちゃんのおかげです。スカーレットにもコクリコットにも元気になった姉の姿を見せられて良かったですわ」
「お母様、まだその様な」
「ずっとそれで通すおつもりですか?」
「――う、うむ、良くやってくれた。その方には後で褒美を取らそう」
スカーレットとコクリコットの苦言にもニコニコとしているだけのアプリコットを見てギリアムは触れずに流す事にした。長年の経験則である。
「もぐもぐ、――ん?」
ふとアイリスを見てお菓子で良いか? と口に出そうになり止めた。
下手に頷かれでもしたらシャルロッテから何を言われるか分からない。人の妻の膝の上で呑気にお菓子を食べている子供を見ると有り得そうで怖い。
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