第028話 王妃様の治療と国の行く末について
あの魔力はキツい。以前治癒院で馬車に轢かれた家族を癒した時と近いレベルで精霊神様の魔力を受け入れた状態だったけど、今回は更に時間が掛かった。
ドラゴン2頭にユニコーン10数頭、使った魔力が半端ない。使った側から補充されて行くけどその魔力が清らか過ぎて体に合わないのだから今のこの状態も仕方がないだろう。
アイリスは現在ミリアーナの膝の上で身動き1つせずぐったりとしていた。巫女モードが解かれてからこの調子である。
『ぬうーーっ』
『主ぃー、大丈夫なのー?』
リリィは精霊神の魔力を受け入れられないアイリスに不満だったが、人間と言う種の限界と聞けば仕方がない。ネネェはただ心配そうだ。
巫女モードを解いてもユニコーン達はアイリスから離れなかったがぐったりと座り込んでしまったアイリスを心配そうに取り囲み、そのまま精霊樹の下に連れて行こうとされた。
すんでの処でナージャ達に引き留められ、アイリスがそれを受け入れていたのを見て残念そうに精霊樹の下に帰って行くのだった。
「これ、大金持ちになるなぁ」
「そんなレベルじゃねえだろ。下手に表に出したら戦争ものだぞ? それに俺等のじゃねえしな。治療したのもお礼として貰ったのもあの愛し子様だ」
「わぁーかってるよ。俺等の事じゃねえ、あの子供様の話しだ」
「ドラゴンの鱗に、少数だが牙や爪もあるな」
「量が多すぎる、少数精鋭で来たのが仇になったな。コレどうやって運ぶよ?」
「そんな事よりこの国にはどう報告します? 下手すると所有権を主張されますよね?」
「ああ、確かに。ユニコーンの角は隠せてもドラゴン素材の方わね」
「そうね。ユニコーンの角はそのまま持ち帰るとして、ドラゴンの方は纏めて隠しておきましょう。後でダールトン様に協力してもらって飛空挺で回収してもらうわ」
その後アーダルベルト達によってドラゴンの素材を纏めて草葉の影に隠す作業が行われた。
「それにしても、この国の奴ら此処の状況知らなかったのかね?」
「湖の手前までは来れるんだ。ユニコーンが見つかっていてもおかしくないと思うんだがね」
「そう言や湖の情報も無かったな」
アーダルベルトとルトルートが会話しながら作業中、精霊樹の力が急速に増していくのを感じ取った。
「何だっ!?」
「気を付けろ! あの精霊樹が変だ!!」
皆んなが警戒する中、精霊樹はその神聖な魔力を更に増して行き、霊素に満ちた領域を広げて行った。
ドラゴン素材を後で回収する為に、それまでの精霊樹の領域から完全に離れた所に居た為、何とか避難する事が出来たがドラゴン素材は浅い所とは言え精霊樹の領域に入ってしまった。
「精霊樹の領域が、広がった?」
「ドラゴンが居なくなったからかしら? アレが本来の領域なのかも知れないわね」
「成る程、此処からじゃ確かに湖も何も見えないな」
湖も見えなければユニコーン達も見えない。先に進む事が出来なければ情報が無いのも当然だった。
「――それよりもドラゴンの素材回収、どうしましょうかね?」
「「「…………」」」
隠したドラゴンの素材は広がった精霊樹の領域にある。入れるのはアイリスだけだが当然持ち運べそうになかった。
その後アイリス達は2日かけて城に帰って行った。因みに帰りはレーディア、ルデリア、ティアリスの順でぐったりしたままのアイリスを運んでいた。
ぐったりしたままなのは清浄過ぎる魔力の後遺症もあるが、自分を運ばせるのを申し訳なく思ったアイリスがリリィ達に彼女達への回復魔法を継続させたからである。
只でさえ清浄過ぎる魔力でぐったりしている中で、更にリリィ達の魔力に晒されていれば当然そうなるだろう。
そんな訳で城で1泊、休みを取って朝食を食べてから王妃様の治療が待っている。
「この子の治療は一緒に寝ていれば治るんですよお母様」
後宮の王妃様の部屋までコクリコット姫が手を引いて案内してくれたのだが、そのコクリコット姫の一言で王妃アプリコット様に添い寝しながら治療する事になってしまった。
人妻だけど良いのだろうか? ――まあ俺が考える事では無いか。時間が掛かるらしいし起きて治療だとその間リリィとネネェの毒魔力に晒されるからそれよりはマシだろう。
『『むぅーー!』』
解毒はしたが毒で壊された体の方は長年壊れた状態でいた為、単純に治癒力を上げてもその状態が維持されてしまう。なので作り替える様な回復魔法が必要なのだが俺にはお手上げだ。
怪我の治療ならそれなりに大怪我でも治療出来る様になったんだけどな。
『傷を塞げば良い怪我と違って正しい体の知識がなければこう言った治療は難しいのじゃ』
『巫女モードになれば出来るなのー』
緊急時でもないからなー、結局リリィとネネェの清浄な魔力に耐えながら寝てる事しか出来ないのか。
『寝とったら耐えるも何も感じんじゃろ』
「ふふふ、起きたら生まれ変わった様な気分になるなんて言われたのよ? 貴女達を見ると私も期待してドキドキしてしまうわ」
「ふふっ、楽しみにしていて下さいお母様。私もお母様が生まれ変わる姿を楽しみにしていますよ」
「私もです! アイリスちゃんは私達の天使様ですから!」
ついでにシャルロッテ様が何か言ったらしくて何だか王妃アプリコット様のテンションが高いのだ。スカーレット姫とコクリコット姫も追従して期待感が凄い。大丈夫かなコレ?
『美容じゃろ』『美容なのー』
体は治せるとしてそっちは期待外れとか言われたらどうしよう。不敬罪とかで罰せられたら堪らないぞ?
『なら全力でやるなのー』
『(精霊神様の偉大さをお主に知らしめる為に)目にものを見せてくれるのじゃ!!!』
――まあ、任すわ。
「それではドラゴンは去り、もう来ないと言う事で良いのかな?」
「今回の一件については解決したと言う認識で良いかと思いますわ」
王城の執務室で国王ギリアムと宰相カールイスはシャルロッテから事の顛末を聞いていた。宰相はシャルロッテからドラゴンはもう来ないとの言質を得たかったが、さらりと躱される。そんな攻防が続いていた。
「しかし精霊樹か、それのお蔭で西からの魔物が少なかったのだな」
「誠に、その様なモノが在るとは聞いた事がありませんでした」
「精霊樹に関してはそもそも人を寄せ付けませんからな。知りようも無いのでしょう」
そこにシャルロッテに同席させられたダールトンが補足していく。
「それで、そちらの国賊共は如何なさりました?」
(((来たっっっ!!!)))
シャルロッテと護衛のレイク以外の空気が一気に張り詰めていく。居合わせただけのダールトンは良い迷惑だろう。
そんな地獄の空気の中、宰相のカールイスによって説明されていく。後宮に押し入ろうとした貴族達本人は全て捕らえられ牢獄へ。家も武器防具を差し押さえられ外出禁止措置を執られた。
ベルドットのグライスロー公爵家は先代共々家族全てが捕らえられ牢獄に入れられていて、使用人達も取り調べを受けさせている。
「それで? どの様な判断を為さるおつもりですか?」
「未だ決まっておらん」
「未だ? 4日も経っているのに? 何も、ですか?」
「「……」」
シャルロッテの「無能ですか?」と幻聴が聞こえそうな顔と物言いに物が言えなくなる国王ギリアムと宰相カールイス。だがシャルロッテとしては今後の不安材料は排除しておきたいのだ。
「いや、流石にグライスロー公爵家の取り潰しと、先代当主と現当主のベルドットの処刑は決めておりますよ」
「うむ、あそこまで増長してるとは思わなかったな」
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