第023話 シリアスかコメディか
「相変わらずねえアンタ達は」
「全く、ドラゴンの下に向かってるってのにこっちまで気が抜けそうになるよ」
「レーディア、ツェツェーリア、こっちに来て良いの?」
「アーダルベルトの許可は取ってるよ。それに一番の要人がここに居るんだからね」
レーディアとツェツェーリア、それに他の女の人達2人もこっちに来た。
「私達もルトルートの許可を取ってるわ。今回は少数精鋭だからね。女4人で組まされているのさ」
『ルデリアとティアリスなのじゃ。ルトルートの方のチームメイトじゃな』
名前までは知らなかったけどカントラス王国でビアンカお姉様の屋敷の中で何度か見た、と言うか屋敷の侍女に紛れて美容魔法させられたな。皆んな背が高くてご立派な筋肉持ってるんだよ?
『なのじゃ。お主はどれだけ頑張っても背も伸びんし筋肉も付かんのにの』
俺が悪いんじゃない。リリィがポンコツなだけだ。
『なっ、なんじゃとぉおおー!?』
『リリィ落ち着くなのー』
『お主はリリィがどれだけ――』ギャーギャー
そうして数時間、日が落ちる前に何とか目的の中継地点まで辿り着き休む事になった。
『と言うかお主あの後直ぐに寝てしまっておったのじゃ! こっちの気も知らんと!』
『リリィが言い過ぎたからふて寝してたなのー。でも代わりにナージャに回復魔法を掛けてあげたなのー』
目が覚めたらご飯の時間だった。だいぶ疲れてたのかな?
『ちょっとしか歩いて無かったじゃろ』
『それはそうなのー』
うるさいな。食事はぼそぼそする甘くないクッキーに酸っぱいベリーのフルーツ、簡易食としては贅沢な部類だろう。食べられない固いパンより遥かに良い。
「はいアイリスちゃんお茶、特別に蜂蜜で甘くしてありますよ」
「ん!」コクリ
「何よナージャ、蜂蜜なんて持って来てたの? 私にも少し頂戴よ」
「無理です。アイリスちゃん用ですから私も使っていません」
「……はあ、貴女って人は」
抱っこして運んでくれたり貴重な蜂蜜を入れてくれたりナージャさんって世話焼きだよなー。ニコニコしながら俺を見てくるナージャさんにミリアーナが微妙な顔をしている。そんなに甘いの飲みたかったのかな?
「ん」
「えっ? くれるのアイリスちゃん」
「ん」コクリ
半分以上飲んじゃったけど味わうには充分だろう。残りのお茶をミリアーナにあげる事にした。
「ふふっ、ありがとアイリスちゃん」
「ああ、間接……」
ごくごくとお茶を飲むミリアーナに何故かナージャさんが悲痛な声を上げていた。
どうしたら良いのか分からず取り敢えず頭を撫でてあげた。女の人がしてはイケない様な笑顔になったけど機嫌が良さそうだし多分大丈夫だろう。
『何を言えば良いのか分からんのじゃ』
『なのー』
翌朝早朝、軽く食事をとったら直ぐに出発した。今度はミリアーナに抱っこされてしまった。ナージャさんとじゃんけんしてたからミリアーナが負けたのだろう。
お荷物になって申し訳ないけど自分ではこの道はキツ過ぎる。情けないが自分で歩くとは言えない。甘えさせて貰うしかないのだ。
『ミリアーナは勝ったから抱っこしてるのじゃ』ボソッ
『ナージャは抱っこ出来なくて悔しそうなのー』ボソッ
「くっ、一生の不覚っ!」ガクッ
ヴェルンは膝を着くナージャを見て思わず「そこまでか?」と言いそうになって止めた。ナージャ絡みで触れてはイケないラインと言うのが分かってきた様だ。
揺れが気持ち良すぎて何時の間にか寝てしまっていたが、起こされたら周りの空気が変わっていた。
そこにシャルロッテ様が近付いて来て話し掛けて来た。
「アイリスちゃん、周囲の魔力の質が変わっているのは分かるかしら?」
「……ん」コクリ
「そう、まだお昼前だけど軽く食事を摂って、此処からは慎重に行くわ。後2、3時間程で目的地に着くらしいけど、何か気付いたりする事があったら直ぐに教えて頂戴」
「ん」コクリ
リリィとネネェは何か分かるか?
『強い魔力を幾つか感じるのじゃ。悪意は感じぬがそれが何か迄は分からんのじゃ』
『ネネェもなのー。まだ遠くて行けないなのー』
一休憩とって再出発、今度は寝ない様にしないとな。
『主、頑張るなのー』
ん、頑張る。
『(寝ない様に頑張るって)……あまり主を甘やかすでないのじゃネネェ』
「いよいよドラゴンにご対面かねえ」
「私等は城で後宮の警護に回されていたから見れなかったしね。ちょっと楽しみだわ」
「ほらほらヴェルン、これが正しい傭兵や探索者の考え方なのよ?」
「ミリアーナ、私の本分はレンリート伯爵家の執事です」
レーディア達がドラゴンに盛り上がる中ミリアーナがニヤニヤしながらヴェルンに勝ち誇る、がヴェルンは苦虫を噛み潰したような顔で反論した。
「そんなんじゃ人生詰まらないわよー? 行く事は決まっているんだし楽しみなさいよねえナージャ?」
「私も楽しみたいのでアイリスちゃんを渡して下さい!」
そう、休憩後のじゃんけん勝負でナージャはまた負けていたのだった。
「それ疲れないのかい?」
「アイリスちゃんが回復魔法を掛けてくれてるから全然よ。寧ろ全然楽ね」
「それはちょっと体験してみたいね」
「私も次のじゃんけんに参加しようかしら」
「やめて下さい! 勝率が下がるじゃないですか!!」
「お前等いい加減にしろ!」
ナージャの悲痛な叫びを余所にアーダルベルトがキレた。
ドラゴンを前にこの騒ぎ、前回の調査の時の緊張感が欠片も無いのだからそうなるのも当然だろう。
「あの子供が悪い訳じゃねえが、居るだけでシリアスがコメディになっちまうなあアーダルベルト」
「笑い事かよルトルート」
前回ドラゴンを見たメンバーは緊張感を維持していた、にも関わらず軽口を叩くルトルートにジト目を向けるアーダルベルトだった。
「んー、やっぱり迷宮の邪素とは違うねえ」
「そうね。何かしらね、コレ」
再び進み初めて1時間程、魔力の圧が更に強くなっていてツェツェーリアとレーディアが話し込んでいる。
『んー、ドラゴンらしき気配に、精霊神社の様な気配も感じるのじゃ』
『ネネェは他にも何かの気配を感じるなのー』
俺にはアデール王国で入った精霊神社の様な気配と、何か別の気配があるとしか感じないな。
『充分鋭いなのー』
『うむ』
「アイリスちゃん何か分かるー?」
「んと、……ドラゴン、と、精霊神社、みたいなの……後、分からない」
「ドラゴンに精霊神社? 他にも何か居るの?」
「ん」コクリ
『どれも同じ場所に居る様じゃの』
『まだちょっと行ける距離じゃないなのー』
「あの子供は相変わらずだな」
「ドラゴンは分かるが精霊神社の様な何かか、精霊の愛し子なんだしそっちに呼ばれたのか?」
「他にも何か居るらしいけどな。――て言うかよう。ドラゴンを排除してくれとかだったらどうするよアーダルベルト?」
「出来る訳ねえだろルトルート」
「だよな「…………はぁ」」
アーダルベルト達はアイリスの言葉を聞いて重苦しい空気のまま歩みを進めて行った。
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