第024話 拾われた精霊剣、主に振り回される!?
『邪剣だ呪いだ等と酷い言われようじゃの。まあ良い、人助けを優先するのじゃ』
さっきと同じように手をかざしていく。この時背筋を伸ばして姿勢を良くしてると邪剣の魔力がスムーズに手から捨てられて多少楽になる事が分かったのだ。
『(まあそうなるよう仕向けておるんじゃがな。苦しそうに悶えながら回復魔法を掛けるなんて精霊剣の使い手に似つかわしくないのじゃ)』
ああ、早く終われ早く終われ。邪剣の魔力から意識を逸らそうと回復魔法に集中すると、その男の頭の中に血が溜まっているのが何となく分かった。
その血が浄化され体の本来の流れに戻って行く、こうやって治していくのか。
人を癒やすと言う事はなんと素晴らしい事なのか、思わず涙が出そうになる。
『(さっきの後遺症か、即落ちじゃの)』
「うっ、ううん……」
「おおっ、意識が戻ったか!?」
「すげぇっ! 本当に聖女様だ!!」
「金も要らねぇって話しだ。皆んな治して貰おうぜ!」
「待ちなさいよ、聖女様だって魔力に限りがあるんだから重症の人を優先しなさいよね!!」
「おうっ、嬢ちゃんの言う通りだな!」
「変な奴が来ないように俺等で見張ろうぜ」
「それは私達女の子の方が聖女様も安心するわよ。アンタ達は戦って来なさいよね!」
「俺等は他の所から重症の奴等を連れて来るよう言って来るぜ!」
ああ素晴らしい、再び生命の神秘に触れてしまいました。まるで自分の心まで洗われるような気になります。精霊剣の力ですが私の体を通して癒されていく人々を見ていると、とても嬉しく思えてきました。
『(しかし洗脳じゃないのじゃが。此奴の反応を見るとそう言われても仕方がない気がするのう。まあ精霊神様の名誉に関わるのじゃ。断じて認める訳にはいかんがの)』
次の怪我人は肩の骨が折れて血も出ていますね。体に魔力を通して骨を繋いでから血管を修復して筋肉を、皮膚を癒やしていきます。
「次の方をお願いします」
「はい聖女様っ!」
次の方は板に乗せられてうつ伏せで寝かされています。どうやら腰を痛めたようですね。命に別状は無いのですが動けないと言う事で選ばれたようです。他に命の危険がある方もいるので急いで癒やしてしまいましょう。
「終わりました。ただ次からは意識が無かったり血を多く流している、命の危険がある方を優先して下さい」
「あっはい、分かりました。申し訳ありません聖女様」
いや待って? 私何を言ってるの? まるで自分から望んで怪我人を癒やしているみたいじゃないですか。って言うか言葉使いがおかしくなってませんか?
ああ、でも余計な事を考えていられないです。今は治療に専念しないと。
「凄ぇな、どんな重症でもどんどん治していくぜ」
「ああ、これなら俺等も思いっきり戦えるな。死なない限り治して貰えるんだからな」
「おおっ、さっさとこんなクソ依頼終わらせちまおうぜ!」
しばらく治療を続けていると他の場所からも重症者が運ばれて来るようになりました。次々に治療を施していきますが追い付きません。
「どうなってんだ。何で重症者がこんなに増えてんだよ!」
「ゴブリンナイトだ! ゴブリンナイトが何匹も出やがったんだ!!」
「完全な上位種じゃねえか! やっぱりキングもいるんじゃねえか!?」
「キングは聞いてねえ! けどナイトは5・6匹はいたらしいぞ! 凄腕が倒したらしいけどな!」
「俺等は見たぞ! チームで危なげなく倒してた!!」
「ソロで瞬殺した奴もいたらしいぞ!?」
「何でそんな凄腕がこんな町に来てんだよ!?」
「どうでも良いだろそんな事! 俺等の代わりに戦ってくれるんだからな!!」
「「「イヤお前も戦えよ!?」」」
事態は余り芳しくないようです。急ぎましょう。なるべく精霊剣の邪魔をしないように、精霊剣の魔力の動きを阻害しないように、流れのままに任せつつ、私自身が精霊剣の癒しの御業を学ぼうとします。
「私達はどうしよう。やっぱり行った方が良いのかな」
「でも私達には危なすぎるよ。ルルだって死にそうになったんだよ?」
「おいおい、お前等だけ此処に残ろうったってそうは行かねえぞ!」
「そうだ汚ねえぞ!」
一部心無い者達が居るようですね。その声に萎縮してしまう少女達、いけませんね。彼女達には危険過ぎます。
「待てや! 嬢ちゃん達ランクは?」
「……2です」
「駆け出しじゃねえか。装備も初心者丸出しでそもそもブッ壊れてるし、自信も無いみたいだ。腕も知れてんだろ? 前線に出ても役に立たねえし、それなら此処で聖女様を助けてやってくれや」
「良いんですか?」
「おう、ゴブリン相手に大怪我しても聖女様の負担増やすだけだろ」
「おい! 勝手な事言うなよ!!」
「そうだぜ! お前が決めんなよな!」
「やかましいわ! 情けねえぞテメェ等!! どの道テメェ等は戦うしかねんだからカッコくらいつけろや!!」
「「ぐうっ……!」」
「良いぞオッサン、もっと言え!」
「誰がオッサンかっ! まだギリ30代だ!!」
「「「オッサンじゃねえか!」」」
「オッサンじゃねえ!! 30代はオッサンじゃねえ!! 俺は絶対認めねえからなぁ!!!」
どうにか良い方向でまとまったようですね。ですが患者の数は更に増え続けています。前線はどうなっているのでしょうか。
おっと次の方は腕が千切れていますね。千切れた腕も持って来ているのですか。何とか繋げて差し上げたいです。差し迫って命の危険がある方は……今はいませんね、やってしまいましょう。
『むむ、しかし血を止める為か表面を焼かれておるな、切り口も酷い。コレを治すには今の外魔力循環では追いつかんぞ。せめてお主の魔力量が10倍くらいあればそこまで負担は無いのじゃが』
私が負担すれば良いのですね? それで1人の人生が救われるのなら構いません。
『(これ以上の外魔力循環は本当に洗脳になりかねん気がするのじゃが。いや、それよりも此奴のこの変わりようも気になるの。うぬぅ、しかし今は仕方があるまい。使い手の望みでもあるし精霊剣としても否はないのじゃ)』
焼かれた肉がじゅくじゅくとしてボトボトと落ちて断面が新しくなってきました、千切れた腕と一緒に浄化してから繋ぎ合わせて回復魔法を掛けていくようです。
ああ、今までで一番繊細で力強い清浄な魔力が身体を駆け巡ります。まるで神様に抱き締められているような多幸感に包まれます。
「……終わりました。次の方をお願いします」
男性が涙を流しながらお礼を言っていますが1人でも多くの方々を癒さなければなりません。
『(コヤツ、我が施していた調整でも気持ち悪いと言っておったのじゃが此処までの変わりよう。コヤツには本当に洗脳のような影響があったのかもしれん。不味い、我の所為かも知れんのじゃ。コレ戻るんじゃろか)』冷や汗
次の方は背中が大きく切られていますね。取り敢えず血を止めてから傷を丁寧に塞いで癒やしていきました。
「おおーい!! キングが出た! ナイトを10体以上引き連れて来やがった! ゴブリンもソルジャーも数え切れねえぞ!!」
「おい! 動ける奴は出るぞ! 前線が潰れちまう!!」
「クソッ、行ったらぁ!!」
「1匹でも2匹でもぶっ倒してやる!」
「そしてまた聖女様に癒やして貰うんだ!!」
「「「イヤ怪我すんなよ!!」」」
イケません。ふらふらの人達まで行こうとしています。祈りを捧げるように両手を握り周囲の人達の疲労を癒やすイメージで回復魔法を放出していきます。
「うおっ、なんだコリャー!」
「すげぇな、これが回復魔法か」
『(あわわ、此奴自分で外魔力循環を初めよった。こんな所でそんな事したら魔物の邪素も取り込んでおかしくなってしまうのじゃ! 慌てて我を通して循環させたがこれでは此奴が言っていた通りまるで洗脳なのじゃ! どうすれば良いのじゃー!!)』
皆さん多少は元気になったようですが、無理をしてまた怪我をしなければ良いのですが。私に出来る事は皆を癒やす事と神様に無事を祈る事くらいです。やれる事をやりましょう。
――そしてその後も治療を続けているとゴブリンキングが倒されたと言う知らせが届きました。
「やった、やったよ! コレで帰れる!!」
「うん、凄いよ! もう駄目かと思ったのに、聖女様のお陰だよね!?」
「うおー、やったーー! キングが倒されたぁーー!!」
「勝ったぁ! 勝ったぞぉーー!!」
「聖女様ありがとーー!!」
「「「聖女様バンザーイ!! 聖女様バンザーーイ!!!」」」
歓声を受けながらも最後まで気を抜かず患者を癒やしていきます。
「――ふぅ、コレで終わりですかね」
更に一際大きな歓声を聞きながら精霊剣の外魔力循環が止まって、徐々に魔力が本来の自分の魔力に戻って来るのを感じる。
このクソ邪剣、――マジで何してくれてんの?
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