第019話 コクリコットの治療、終了
まあスカーレット姫とは数回しか手合わせしてないし、もうする事も無いだろうから良いや。後話せるのはアデール王国で言えば副都の迷宮に潜ったくらいか。まあ回復要員としてだったけど。
『初めはそれも無くお客さん扱いじゃったのじゃ』
コクリコット姫は剣を握ったり鍛練するのは苦手みたいだけど冒険譚を聞くのは好きらしい。瞳をキラキラさせて聞いている。
『話しとるのはナージャじゃがの』
ナージャさん何時の間にか戻って来てたんだよ?
『主は口下手だから仕方ないなのー』
『と言うか何故にお主まで瞳をキラキラさせて聞いておるのじゃ』
そんなつもりは無いんだけど改めて客観的に話しを聞くと面白いなぁーと、気を紛らわすのに丁度良いし。
でもナージャさん? 何故か俺が主人公みたいな語りになってるけど、絶対そんな事なかったよね?
「初めての作業でしたのにポーションの出来は熟練の探索者達を驚かせたのです。――ああ、あの真剣な眼差しは何とも愛らしくて――」
ポーション作りとかやったなあ。良い稼ぎになったよな本当。安全に潜れるなら迷宮で稼ぐのもアリかも知れない。まああの時一緒に潜った探索者達くらいの強者じゃないと不安だし難しいかな。
「アイリスちゃんの防御魔法は、隙を突いた大人の身の丈程の大きさはある大角大黒狼の一撃を難なく防いだのです!」
何それ、知らないヤツ。
『リリィがやったのじゃ。真後ろから噛みつかれそうになっておったからの』
えっ!? 怖っ!!
グリフォン、大きな黒い狼の群れを引き連れて襲って来られて、咆哮とか体の芯まで響いて怖かったな。前足上げると4、5mくらいの大きさで素早くて凄く迫力もあった。
翼を広げると更に大きく見えて、空も飛ぶしグルルーって叫んでうるさかったよな。
30階層まで潜ったんだけど最後に出たのはタイタンスネーク、全長20mはある蛇で胴体の高さも2m近くある化け物。グリフォンもそうだけどあんな大きさの魔物は見た事もなかったから驚いたよ。
身体の皮も凄くに硬いらしくて、翼の無いドラゴンや堕ちたドラゴン等と呼ばれたりもする非常に強力な魔物だそうだ。
「傷付き、次々と倒れて行く熟練の探索者達。そんな中でも臆する事なく癒しの御業で人々を癒してゆく様は光輝いていて、ゴツい大人だらけの中幼く愛くるしい美幼児たるアイリスちゃんは正に天の使いの如く――」
兎に角皆んなが怪我する度に癒して戦地に送り込んで何とか倒しきったんだよな。
『聞き流しておるのじゃ』
『この人何言ってるなのー?』
そう言えばアレからスリングショットは余り練習してないな。完全に遊び道具に成り下がってしまっている。俺の傭兵としての正規メンバーはミリアーナだけだからな。
ナージャさんやヴェルンさんはビアンカお姉様付きの執事と侍女だし、2人で狩りをする事も考えると落ち着いたら真面目に鍛練するかな。
「ですからアリアちゃんとカチュアちゃんを奴隷として購入したのはアイリスちゃんの慈悲なのです!」
おっと、何時の間にか場面が変わってた。そう言えば迷宮を出たら何か知らないけどカントラス王国に行く事になっていて、良く分からない事態になっていたな。
あの2人も貧しい村で税対策として売られてしまったんだよな。今はビアンカお姉様の下で一緒に使用人見習いとして色々学んでいるしガリガリだった体も肉がついて来た。
成人前にはその借金分は働き終えるだろうし家族の元に帰るかビアンカお姉様の下で使用人として働くかになるのかな? 家族を取るかお菓子を取るか、……か。
『絶対そんな選択肢では無いのじゃ』
『ネネェもそう思うなのー』
何のかんのと3日経ち治療は終わった。体を動かせなかったから鈍ってないかちょっと心配だけど、休暇と思えば色んなお話しも聞けたし悪くはなかったかな。
『結局寝てばかりじゃったの、お主』
仕方ないじゃん。話せる事はだいたいナージャさんが話していくし、後は侍女さんにこの国の本を読んで貰うくらいで俺に出来るのは聞きに徹する事くらいだったし。
「どうだコクリコット?」
「はい、昨日よりももっと体が軽いですお姉様!」
ポロポロと涙をこぼしながら笑顔でスカーレット姫に手を引かれながらゆっくりと歩くコクリコット姫。スカーレット姫も周りの使用人達も嬉しそうだ。
『日々体が動かなくなって来ていれば死の影もチラついてもいたのじゃろうしの。無理もないのじゃ』
うえっ!? そんな深刻だったの?
『まあもって2、3年といった所であったろうの』
「ふふっ、アイリスちゃん有り難う御座います。これで久し振りにジャム作りが出来ますわ」
ジャム作りと言うのはこの国の名産品らしい。クッキーに乗せて食べさせて貰ったけど、色んな実のベリージャムがあって何れも甘酸っぱくて美味しかった。
健康な頃にジャム作りを手伝った事があるらしくてその話しで盛り上がったのだ。
「ん、出来たら、食べる」コクリ
「はい! あっ、でも一緒にジャム作りをするのも楽しそうです! どうですかアイリスちゃん!?」
「ん、楽しそう」
「ちょうど収穫を終えている頃だ。時間が合えば参加してみると良い」
(本当は未婚女性の仕事なのだが。アイリスちゃんならまあ構わないだろう)
スカーレット姫はそう言ってコクリコット姫と俺の頭を撫でてくる。まあ良いよ? 皆んな嬉しそうだし、俺も大人だから空気を読んで何も言わないし。
頭を撫でられても子供じゃないし、何も言わないよ?
『分かった分かった、お主は大人なのじゃ』
『主、偉い偉いなのー』
分かれば良いのだよ。うん。
「王妃、アプリコット様がおいでになります」
「お母様が!?」
「落ち着くんだコクリコット。病が癒されたと聞いたのだろう。元気になった姿を見せてやれば良い」
「はっ、はいお姉様」
「体力は落ちているのだ。はしゃぎ過ぎない様にな」
「分かっております。はしゃぎ過ぎ……ません?」
「何だその微妙な顔は」
「いえ、何時も剣を振り回していたスカーレットお姉様からその様に言われるとは思わなかったので」
「ほう? 言う様になったなコクリコット。健康になったからには2度とその様な病に掛からぬ様に私自ら鍛えてやらねばな」
「えっ、笑顔が怖いですわお姉様!?」
「ふふっ、人の笑顔が怖い等と、社交も学ばねばならないか。これから大変だなコクリコット」
「お姉様!? 私病み上がりですからお手柔らかに、お手柔らかにお願い致しますわ!」
仲良いなあ。
「「ようこそいらっしゃいました、お母様」」
あの人が王妃様かー。髪や瞳の色は同じだし、つり目がちな顔立ちも確かに似ているな。コクリコット姫とスカーレット姫はスカートをつまみカーテシーで迎え入れた。
俺は何故か2人の間に挟まれて挨拶をさせられた。取り敢えずスカートは履いて無いけど2人の真似をして挨拶をしたぞ。
『カーテシーはオナゴの挨拶じゃぞ?』
……知ってたよ? でも両隣からやられたから流されちゃったんだよ? 仕方がないよね?
明日から02時10分と20時10分に投稿します。
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