第013話 治療に向けて
「これはスカーレット姫様! 無事のご帰還お喜び申し上げます!」
「ええ、コクリコットに会いに来たのだけれど良いかしら?」
「はっ、(コンコン)スカーレット姫様が参られました」
部屋の前に2人の女騎士が控えていた。スカーレット姫が来ると先に知らされていたのか直ぐに扉を開かれ侍女さん達に招き入れられた。
中は広く白を基調に可愛らしい家具が揃えられていて、此処彼処にぬいぐるみが置かれていて正に幼いお姫様の部屋と言った感じだ。侍女さんが4人、女騎士さん達も3人隅に控えていてちょっと物々しいかな。
『横の控え室に更に侍女2人と女の騎士が4人、他に傭兵が4人控えているのじゃ』
「コクリコット、久しぶりね。3年も見ない間に随分と大きくなったじゃないか」
俺達は部屋の入り口で待っていると、スカーレット姫様はベッドに向かって行った。側に付いていた侍女2人が頭を下げて横に下がりスカーレット姫様は寝ている姫様に声をかけている。
「……お姉様、お久しぶりでございます。お姉様こそお元気そうで、……いえ、失言でした」
「良いのよ。私は何事もなく無事に帰って来たのだから。会えて嬉しいわ」
「私も、お姉様に、お会い出来て、嬉しいです」
「体調はどうかしら?」
「はい、最近は調子が良くて、……この間も、庭でお茶をしたのですよ」
「ふふっ、それは良いな。次は私も一緒にさせてくれ」
「はい、……是非、お姉様も、……ご一緒して下さい」
「そうだ。向こうで仲良くさせて貰った友がいるのだ。紹介させてくれ」
スカーレット姫様に呼ばれてシャルロッテ様ビアンカお姉様に連れられてベッドの側に、ベッドで横になっているのがコクリコット姫様なのだろう。俺よりちょっとだけ、本当にちょっとだけ背が高い気がする。
『ちょっと、……まあええじゃろ』
『何のこだわりー?』
病気って言うけどアリアとカチュアと会った時の痩せ細った姿に比べれば大分健康そうに見える。金持ちの病人より貧しい庶民の方がよっぽど病人ぽいんだよな。――何か複雑な気分。
赤く長い髪にややつり目がちの瞳、顔立ちもスカーレット姫と良く似ている。外に出ていないからか肌は白過ぎて不健康そうに見えるけど。
「ほらアイリスちゃん?」
「ん……ん?」
『皆んな挨拶し終わったのじゃ』
『主の番なのー』
「(えっ? 何が? 何時の間に?? 挨拶?)……ア、アイリしゅ……」
「メメントリア王国、第2王女のコクリコットですわ。宜しくね、アイリスちゃん」
「ん!」
ふう、何とかやり過ごせたな。
『……ええ、……お主』呆れ目
『……主ぃー?』ジト目
「私達はコクリコット姫様を専属で診させて頂いております。どうか姫様を宜しくお願い致します」
ベッドの横にいた侍女さん2人が頭を下げて来た。侍女さんだと思っていた4人の内2人は医師の様だった。服がちょっと違ってたから疑問だったんだよな。
2人の医師がアイリスを受け入れたのはリアースレイ精霊王国の巫女から助言を受け、回復魔法を止める事でコクリコットの病状が安定したからだ。
長年苦しめてきた自身が仕える姫の病状を、アドバイス1つで改善させた精霊王国からの太鼓判を押されて来たアイリスだ。
見た目が幼くあなどられそうだがスカーレット姫が気を使っている相手だ。更に無駄に見目麗しく神秘的な雰囲気を醸し出している事からもただ者ではないと認識させたのだった。
「それでアイリスちゃん? コクリコット姫様の容態はどうかしら」
どうかしら?
『突っ込んだ方が良いのかの? まあ、魔力が固まっておるの』
「魔力、……固まってる」
「――成る程。それで? 治療は出来るかしら?」
『固まった魔力を抜いて、魔力の通りも良くして自然放出量も上げんとならんのじゃ』
『時間が掛かるなのー』
「ん、……時間、掛かる」
「治療は出来るのね。それでどのくらい掛かるのかしら」
『1日中やっても3日は掛かるのじゃ』
『それネネェの協力も入ってるなのー』
『体質改善には時間が掛かるのじゃ。治療が終わらんと主は帰れんのじゃぞ』
むっ? それはヤダ! 早く帰ってねぇねに会いたい!!
『むぅー、仕方ないなのー。主の為に頑張るなのー!』
それをシャルロッテ様に伝えると皆んなで話し合いが始まってしまった。
魔力の通りを良くすると言うのは元通りにするのではなく成長させるらしい。だからこそ時間が掛かるのだそう。
――俺の筋肉をなかなか成長させられないのと同じだな。
『そこまで絶望的では無いのじゃ!?』
ひどい。
「手を握る等、体の一部を接触させて治療する形で1日中やって3日、……ですか」
「ふむ、それでコクリコットが治るのであれば是非とも頼みたいが、流石に1日中治療すると言うのは無理ではないか?」
コクリコットに付く者達は姫と手を握ると言う事に難色を示すが、スカーレットは寧ろアイリスの方を心配した。
これまでの自身やビアンカ達への美容魔法の効果や、精霊王国側の評価から治療出来ると言うなら出来るのだろうと分かるが、無理をさせて互いの関係に亀裂は入れたくないと考えたのだ。
「大丈夫ですよ。この子は寝ながらでも治療出来てしまいますから」
ビアンカはアイリスがアリアとカチュアの回復をしながらお昼寝していた事を説明した。――自分が夜抱き枕にして美容と健康を維持している事は当然口にしなかったが。
「しかし、原因は良く分からなかったわね」
リリィ達からの話しでどう言う病かは分かったが、倒れたのが何年も前の話しで原因までは聞かれなかった。アイリスの拙い説明もあり聞き出すのを断念してしまっていたのだ。
リアースレイ精霊王国に注視されているアイリスを詰めて機嫌を損なう訳にはいかなかったのだが、詰められなかった事を幸運と思うか幼子扱いされた事を不満に思うかはアイリス次第だろう。
「――恐らく、庶民や身分の低い者は掛からない病だと思うわ」
「あら、それは何故かしら?」
シャルロッテの発言に伯爵家の令嬢の身分を持つビアンカが気になって質問をした。
「恐らくだけど、王妃様は高い魔力を見込まれて嫁がれたと聞くわ。スカーレット姫様もコクリコット姫様も高い魔力を持っている様に見受けられるの。幼い頃はちょっとした事で熱を出して倒れたりするし、その時に回復魔法を掛けられたのではないかしら?」
「それは勿論っ、姫様に何かあっては大変ですから!」
シャルロッテが医師達に聞くと王家に仕える事に誇りを持っている彼女達はら間違い等犯していないと憤慨したが、シャルロッテは冷静に分析を続けていった。
「ええ、その判断は通常なら当然の行いよ。ただコクリコット姫は元々高い魔力を持っていてそれを消費する術を知らなかった。更に病で弱っている処に回復魔法で外部から許容量を超えた魔力を送り込まれて魔力が固められていったのではないかしら」
「しかし、それなら私も幼い頃に回復魔法を受けているのだが?」
「スカーレット姫は幼い頃から剣術を嗜んでいると聞きます。魔力も体の一部、体を動かす事でも体力の様に自然と消費される魔力量が増えると言われてます。もしかしたら身体強化魔法を無意識に使っていた可能性もありますが」
「身体強化魔法か。まあ今なら多少は使えるが、流石にそんな幼い頃では無理だな。しかしそうだとすると回復魔法が仇となったと言う事か……」
「待って下さい! コクリコット姫様は元々お淑やかでか弱いお方です! スカーレット姫様の様に兵士相手に暴れ回ってる方とは一緒に出来ません! スカーレット姫様と比べての判断はしないで下さい!!」
王家に仕える医師として単なる予測で間違いを犯した等と判断されるのは受け入れ難い。まして自分達の施した回復魔法が原因だと言っているのだからその焦燥は無理もない事だろう。
「ほう? ――私はお淑やかでもか弱くもない暴れん坊か……」
ただその物言いにスカーレットの機嫌を損ねる間違いを犯したのは確かだった。
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