第006話 神聖なる魔力?
シャルロッテ様に抱き付いて誤魔化しているとそのまま抱き上げられてしまった。その後皆んなも挨拶を交わした後それぞれ席についた。俺だけシャルロッテ様の膝の上だけど。
何とか顔の火照りが収まってシャルロッテ様を見る。前に会った時はねえねも居たんだよな。もうすぐ会えるのか……、早く会いたいな。
奴隷になってるとは思わなかったけど何とか買い取れて、小さい頃の様に一緒に寝たりして仲良くなれたんだよな。
あ、ヤバい。思い出しているとホロリときてしまった。ああ止まらない。シャルロッテ様に顔を埋めて誤魔化そう。ギュッと抱き付くけどねえねを思い出して会いたくなって涙が止まらなくなってしまった。
「んく、ぐすっ」
「ああ、アイリスちゃんどうしたんですか!? やはり私が! シャルロッテ様私が慰めますよ! ほーら、べろべろバー!」
「「「……」」」
『――のう、信じられるか? あれでアリアとカチュアの親代わりのつもりなのじゃぞ?』
『……その内逆転しそうなの』
それよりもナージャである。公爵家の面々とスカーレット姫の目の前での醜態、ナージャの趣味嗜好は知っていたが時と場所はわきまえていた筈だったのだ。
因みにダールトンにはとっくにバレているので今更である。
「ああ、可愛い。可愛らしいですねー、アイリスちゃん」
パシャ、パシャ!
「ナージャ、貴女は何をしているのかしら?」ピキピキ
「エヘヘー、シャルロッテ様。実はコレ写真を撮っているんですよ? ダールトン様にお借りしたんです。景色を絵にして残す機械でして、現像? をして貰うと何とアイリスちゃんの可愛らしい姿絵にして貰えるんです!」
「はあ、――粘り負けしました。貸すだけで中身を確認してから写真にして渡します。撮影機の解析は当然不許可です」
「熊獣人の方々が動画も撮れると言っていたのでダンスやお歌の練習、それにお眠な所も撮ってあげたいんですよ!」
満面の笑顔のナージャにダールトンは疲れた様に言うが、シャルロッテにして見ればそれでも利用法は幾らでもある。軍事に政治にその用途は様々思い付く。
けど下手に望めばリアースレイ精霊王国との間に亀裂が入り兼ねない。
(――考えなしのナージャが羨ましいわね)
「ナージャ、貴女今まで随分好き勝手していたみたいね」
「まさかっ! シャルロッテ様のお胸様程ではありませんよ!?」
「お胸様……、貴女は少し黙っていなさい」
「うぐっ、……はい」
シャルロッテはアイリスの頭を撫でながらアイリスを避けてナージャに向けて魔力で威圧を放っていた。
その余波は部屋全体に行き渡り、威力は落ちるが公爵家の面々やスカーレット姫にまで届いて冷や汗をかかせた。それでもナージャにこれ以上醜態を晒されるよりはマシと判断したのだ。
『ぬ? 魔力を乗せた威圧か』
『あの人魔力凄いなのー。主よりいっぱいあるなのー』
本来なら礼を失した行いだろうが、周りにはおかしな侍女を窘めただけにしか見えていない。
『魔力を使った威圧だと気付いたのはレイクくらいじゃしの』
『使える人間が滅多にいないからなのー』
因みにシャルロッテの威圧の余波を受けてアルムール公爵は漸く目の前にいるシャルロッテの体ではなく人物像に目を向けた。
(あれ? この女もしかしてヤバい奴??)
アイリスは微妙になった空気を感じる事もなく瞼が涙で赤くなっていたのでこっそり(?)回復魔法で癒して周囲を見渡していた。
そう言えばシャルロッテ様にも前に美容魔法をしたんだっけな。
まだ1年も経ってないから効果は殆んど落ちてないだろうけど、今ならもっと出来ると思うしヤっちゃおうかな?
シャルロッテの顔をまじまじと見ながら頬をつんつんとつついたりペタペタと撫でたりしている。
そんなアイリスを周囲は畏怖と畏敬の念で見ていた。因みに畏敬の念で見ていたのはナージャとレイクだけである。
レイクは悪目立ちする事を避ける為に楽に稼げるだろう回復魔法を隠してきた(と思っている)のに、スタンピードで重症者が出た時に躊躇う事なく皆んなに治療していったアイリスの慈愛の精神(?)に胸を打たれていたのだ。
――言うまでもなくナージャについては性癖である。
シャルロッテはアイリスから回復魔法が掛けられているのを感じ驚愕する。
(魔力の質が変わった!? それも、――この神聖さは何!??)
会談中に勝手に回復魔法を掛ける非常識さも相まって流石のシャルロッテも笑顔のまま表情を固まらせてしまっていた。
アイリスの魔力が神聖さを帯びたのは才能もあるが、眠っている時は常にリリィとネネェの清浄過ぎる回復魔法を浴び続けていたし、施術や鍛練等で魔力を使う度に魔力の供給も受けているのだから影響を受けない筈がない。
厳密にはアイリスの元々の魔力とリリィ達の清浄過ぎる魔力が混ざった様な魔力になっている。シャルロッテがアイリスの様に拒否反応を示さなかったのは純粋なリリィ達の魔力では無いからだ。
『ネネェ達の魔力を受け入れれば楽になるのになのー』
『主自身魔力の変質に気付いていないからの。また洗脳とか言われそうじゃし、言わんでおくのじゃ』
「先ず妹のコクリコット姫の事ですが。現在はカントラス王国の精霊神社にいる巫女様の助言に従って回復魔法を止めさせ、食事療法に切り替えさせております。それからは症状が安定していると聞いてます」
シャルロッテはアイリスの回復魔法を受けながら内心の驚愕を表に出さずスカーレットに妹、第二王女コクリコットの現状を伝えていく。
症状を聞いた巫女から回復魔法が効かないのは魔力が体外に放出出来ない状態になっているか毒を盛られている可能性が高いと言う事だった。毒の場合は通常の回復魔法では効果が無い。
一応毒を警戒した食事療法にしたが、シャルロッテは回復魔法を使うと暫く体調を崩してしまう所を見て毒の可能性は低いと見られている。
当初回復魔法を止める事をかなり渋られたがシャルロッテの説得(脅迫?)によって断行された結果、回復はしない迄も容態は安定して悪化する事はなくなっていたのだ。
「そうですか、安心しました」
「ええ、後はこの子の回復魔法を受ければ必ずコクリコット姫も快癒なされる事でしょう」
「回復魔法、ですよね。大丈夫でしょうか?」
「巫女様の助言ですから大丈夫でしょう。どちらにせよメメントリア王国まで行ってからですね。この子も実際にコクリコット姫を目にしなければ何も言えないでしょう」
「それは、――そうですね」
回復魔法で体調を崩したと聞いて不安を口にするスカーレットに有無を言わさぬ笑みで返すシャルロッテ。だがそれ以上の説明は出来ないのだから納得して貰うしかない。
「では行きましょうかビアンカ様」
「えっ? あっ、そうね(本当に説明の為だけで来たの? あのシャルロッテが?)」
ビアンカは他の人間でも出来る様な事の為にシャルロッテがわざわざ来た事に違和感を感じた。けど抱えているアイリスを見てリアースレイ精霊王国へのアピールとしてならあり得るのかと納得したのだった。
しかし納得出来ない者達も居る。マリアンヌの両親、ルクセンガング公爵家夫妻だ。
明日から03時10分と21時10分に投稿します。
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