第003話 マリアンヌ様のお家で
「まあまあ! 何て可愛らしい子なのかしら!? 随分可愛らしい子だと思っていたけどその子がそうなのね?」
「は、はいお母様、私の身を守って頂いたのはリアースレイ精霊王国と、私と同じ様な立場の方々でした。そしてこの肌艶はあの子、アイリスちゃんのお陰です。断じてアデール王国等ではありませんわ」
そう言って2人が見るのは何時の間にかソファーでナージャの膝を枕にして眠っているアイリスだった。
テーブルにあるお菓子の乗っていた皿はナージャの分まで空だったのは何時もの事だろう。若干ビアンカの目が冷たくなったのを感じたマリアンヌの母ユリアンヌが「子供には退屈な話しだったのでしょう」とフォローを入れていたが当然意味はない。
「では私にその美容魔法とやらをして頂けますか?」
「一応お聞きしますが、何故お母様が?」
「私は貴女の言う事を信じたいけど周りはそうはいかないでしょう? 魔法で見た目を若返らせるなんて聞いた事もない荒唐無稽な話しなんですもの」
マリアンヌとしては母親がそう言ってくる可能性は考えていた。何とか説得してくれないかと父親に視線を送ったが逸らされてしまった。
マリアンヌの視線が蔑む視線に変わっていたが目を逸らしていたお陰で父親のアルムールは愛娘の視線に気付かずに済んで良かったかも知れない。
まあ親娘の今後の関係にはヒビが入るかもしれないが。
「パーティーや茶会等に参加すれば騒がれますよ? アイリスちゃんが居ないと美容魔法は出来ませんし、方々から嫉妬されると思います」
「そこまで効果があるのね? その子には是非我が家に来て欲しいわね! 貴女がそんなに綺麗になっているんですもの」
「あの子はフォシュレーグ王国の高位貴族の保護下に置かれているんですよ? 精霊王国にも目を掛けられておりますし、この国では手に負えませんわ」
「ふーん、それなら仕方がないわね。ならお義母様にもして頂きましょう。王妹ですから巻き込んでしまえば誰も何も言えないでしょう」
「お婆様は隣町にいましたよね? 此方に呼ぶだけでも数日は掛かりますわ。皆様にそんな迷惑を掛けられませんわよ」
「あら、貴女だって私に試して貰う為に呼んだのではないの?」
「そこは侍女でも構わないではないですか」
マリアンヌとしてはアデール王国への印象を正したいだけなのだ。
その後、ごねる母親をスカーレット姫の妹の治療が待っていると言う事で引き剥がしたが、それを見ていたスカーレットが何年も前からの病だから今更1日2日遅れた処で命に別状はないだろうと言う事でユリアンヌは美容魔法を受ける事になった。
「スカーレット姫様、ウチの母が申し訳ありません」
「構いません。リアースレイ精霊王国の方々から先に確認に行くと言って頂けましたから。アデール王国との事は私達も無関係ではありませんもの」
念の為飛空挺に残るダールトンと相談した結果、一旦リアースレイ精霊王国の面々は先にメメントリア王国に行き現状の情報を収集する事になった。
因みに妹姫の事を聞いたユリアンヌは流石に平謝りしていた。
「アイリスちゃん起きなさい」
ペシペシ「んゅぅ……、姉しゃま……?」
いかん、いきなり起こされてちょっと不機嫌になる処だった。ビアンカお姉様は大事なパトロンだからな、大人として機嫌を取らねば。寝惚けたまま起き上がりふらふらとしながらも、何とかビアンカお姉様に抱き付き挨拶した。
「んぅ、ビアンカお姉しゃま、おあよぅ」
挨拶したのに何故かビアンカお姉様は目を閉じて難しい顔をしている。確かにちょっとどもったけど寝起きなんだし許して欲しい。
「ア、アイリスちゃんおはよう」
「ん、ナーヤしゃんおあよぅ」
(はわわ~、寝起きのアイリスちゃん可愛い~)
ビアンカお姉様の反応も気になるがナージャさんに挨拶されたから取り敢えず抱き締めて挨拶を返しておいた。まだ呂律が回ってないけどナージャさんの機嫌は良さそうだ。
ついでにビアンカお姉様の機嫌も取ってくれないかな?
『何で主はいちいち抱き付くなのー?』
『ナージャに女性に対する挨拶だと教わっておったのじゃ』
因みにナージャによってこの挨拶をして良い相手は厳選されている。その為公爵夫人に抱き付いたりはしなかったのだ。全ては自分がその対象に入る様に調整した結果である。何時でもブレないナージャであった。
部屋を移動して俺とナージャさんにマリアンヌ様と母親のユリアンヌ様だけとなった。
マリアンヌ様の母親か、俺より少し年上、四十手前くらいかな? ビアンカお姉様から頼まれたから仕方がないので美容魔法をしてあげる事になったのだ。お金も貰えるけどね。
取り敢えず首から上を重点的にすれば良いのかな? 目尻のシワとほうれい線を消していく。それからシミが出そうな所を回復、代謝を活性化させて肌の状態を向上させてついでに不調な所があれば回復させていく。
「あの、アイリスちゃん? あまりやり過ぎると「遠慮せずどんどんやって下さいまし」
マリアンヌ様が何か言おうとしたけどユリアンヌ様の要望が被さった。どんどんと言われても見えない所は怪我や病気と違って健康体かどうかくらいしか分からないから無理なんだよ?
と言ったら侍女を呼んで服を脱がせて迫って来た。ちょっと怖かった。女性の美に掛ける執念は恐ろしいな。
『侍女にやった美容魔法をユリアンヌが見て、その変わり様に目を見開いて驚いておったからの』
『アレで実感しちゃったなのー』
まあビアンカお姉様や侍女さん達にも毎日やってるから慣れたもんだけどな。
『それもどうかと思うがの。慣れた所で口下手のままじゃし』
『アリアとカチュアにもまだ口下手なのー』
『それを言うならビアンカとナージャにすらそうじゃからの』
『確かにそうだったなのー』
『かと思えば城のパーティーで姫達の前で眠りこけてたおったりするしの』
『主は子供なのー』
誰が子供だよ全く。やっぱり精霊に人間の事は分からない様だな。
『『…………』』
?? 何かようやく静かになったな? このまま集中を切らさない様にしないと。
内臓を綺麗にして病気の予防に、アキレス腱や股関節を柔らかくしていって怪我の予防にしていく。これはリリィからの知識と手解きによって最近やっと形になってきた技術だ。
「何だか身体の真から暖かくなってくるわね。エリザ、お風呂の用意をさせておいて頂戴」
「畏まりました奥様」
その後ユリアンヌ様への美容魔法を終えたら年嵩のメイドさんが物欲しそうに見ていたので「やる?」と聞いたら是非に! と食い付かれたのでついでに施術を施していった。
やっぱりちょっと怖かった。何故かナージャさんまで続いてきたけどこの人は何時も通りだ。それにどうせ今日は泊まるらしいし回復魔法の鍛練に丁度良いしな。
――と思ってたら続々と侍女さん達が並んで来た。それは引き受けてないんだよ? でも何か圧を感じるし、これ断れないやつかな?
『自業自得なのじゃ』
『諦めるなのー』
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