第030話 幕間 終結
「屋敷を守るんだ! 隊列を乱すなよ!? アーダルベルト行くぞ!!」
「おう! ってちょっと待て! 飛ばし過ぎだルトルートぉ!!」
此方は近衛兵を足しても門前に居るのは60人程度、向こうはその3倍以上集まって来ている。
それでも力押しで勝てるだろうが王弟の私兵や神兵達は兎も角、殆んどが庶民出の冒険者達は巻き込まれただけだろうから余り被害を出したくない。
そう考えたアーダルベルト、ルトルートは先ず近衛兵と切り結んでいる王弟の兵士達を大剣で切り捨てた。その力は凄まじく一刀で複数人を切り裂いていく程だ。
「「「ぎゃあっ!!」」」
「何だコイツ等わあぐぅっ!!」
「ひいっ!ぐぺっ!!」「ぐふっ!!」
取り敢えず王弟の兵士達を標的とした2人は次々と切り捨てて安全圏を作りながら突き進み首を跳ねて行った。
ガキンッ!「ぬうっ!」
隊長格の兵士達は身体強化魔法も使い、剣の腕もそれなりで何とかルトルートの一太刀を両手剣で受け止めたが直後アーダルベルトが腹に蹴りを入れてバランスを崩し、立て直す前にルトルートに止めを刺された。
「ぎゃっ、ちょ、待っぷ!」
「うーん、弱ぇな」
「気ぃ抜くなよルトルート、どんどん行くぞ」
その後も隊長格に狙いを定めて次々と敵を屠って行くと周りの兵士達は恐慌状態になって逃げ出す者達も出て来る。
「隊長が!!」
「ひいっ、強過ぎる!?」
王弟は殺すにも逃がすにも身分が高過ぎて面倒なので首根っこを引っ掴んで近衛兵の前に投げ付けた。
「ぐおっ! きっ、貴様っ「近衛ぇ! 屋敷の中に放り込んでおけぇええーー!」
「うおっ! うっ、うむ! おい屋敷に引っ張って行け! 自由にさせるなよ!!」
「「はっ!!」」
「やっ、止めろ貴様等! 我を誰だと思っておる!! おい貴様等! さっさと助けんかぁ!!!」
王弟であるベルトルート公爵が叫ぶが、主である公爵が捕らえられ指揮する隊長格の者達もアーダルベルト達に軒並み倒されてしまっている。
そして公爵を取り返そうにも近衛兵達を更に傭兵達が囲んでいて何も出来ずに屋敷の中に入られてしまった。
「王命である!! ベルトルート公爵を無事に返して欲しければ王家への反逆を今すぐ止めよ!!」
「くっ、どうすれば!」
「閣下を奪い返さなければ不味いんじゃ!?」
「けどどうやって! もう屋敷の敷地内に入られてしまったぞ!」
「誰か閣下を助けに行け! このままじゃ王命に背いたってどんな罰が下るか分からねえぞ!!?」
「だったらお前が行けよ!」
「くそっ! 何だってこんな目に!!」
近衛の大隊長グリゴーストの声を聞き兵士達が混乱で動けなくなっているのを見てアーダルベルト達は標的を神兵達へ切り替えて剣を振るっていった。
「あ~あ、私等もアッチに行きたかったな」
屋敷の中からアーダルベルト達が猛威を振るっている様子をレーディアとツェツェーリアは暇そうに見てぼやいていた。2人は女性ながらも腕が立ち、アデール王国の副都の迷宮でアイリス達と共に行動していて信頼性もある為に屋敷内の警備に回されていたのだ。
「そぅお? 雑魚しか居ないじゃない」
「そうね。ははっ、兵士が紙切れの様に千切れ飛んで行ったわね」
「雑魚狩りはしないで司祭達の方に行くみたいね、意外。あら? あーあ、殺るつもりだわアレ」
神兵達を切り裂きながら司祭達の下へ突き進んで行くと司祭の側に控えていた身分の高そうな鎧を纏っていた神兵達は司祭を守りもせす逃げ出そうとしていた。
「ひいっ!」「何だコイツ等わあ!!?」
「にっ、逃げるぞ!!」
「まっ、待ちなさい貴方達! 家がどうなっても良いんですか!?」
「そんな事知った事かよっ!」
「死んだら終わりだろう!」
「好き勝手出来るから入ってやったんだろうが!!」
道が開かれ一気に距離を縮めるアーダルベルト達に慌てて止めに入る司祭達。
「まっ、待てお前達! 私達に手を出せばどうなるか分かっているのか!!」
「金か!? 女か!? 何でも欲しいだけやるぞ!!!」
「要らねえよ!!」
「取り敢えず死んどけや!」
ズバッ「「ぎゃあっ!!」」
高位貴族の兵士と司祭や神兵と言った身分の高い者達が、次々と切り捨てられていく様を見て冒険者達は恐慌状態に陥っていた。逃げれば商業王国から睨まれ戦えば王命違反で国に逆らう事になる、そんな状況に身動きが取れなくなっていたのだ。
そんな中、司祭を切り殺した2人はそのまま身分の高そうな神兵達を切り伏せて行き冒険者達の方へと向かって行った。
「ああ~、俺等はろくに事情を知らされていない冒険者にまで手を出す気はねぇぞ。そこの商業王国の馬鹿共を引き渡せばな」
冒険者達はルトルートの言葉を聞いて直ぐに商業王国の重鎮達から離れて行った。取り残され名指しされた商業王国の重鎮達は顔面蒼白である。
彼等は戦闘状態になって直ぐ危険を感じてこの場を去ろうとしたのだが傭兵達がさせない様に睨みを効かせていたのだ。
「おっ、お前達! 逃げたらどうなるか分かっているのか!! 家族も生きていられると思うなよ!!」
「そうじゃ! 助けよ!! 我等を助ければ幾らでもくれてやるぞ!!」
金の話しを聞いて冒険者達の一部がぐらついた様だったが傭兵達が殺気だった為直ぐに消沈した。戦いを見て既に力の差ははっきりしているのだ。無謀な真似をする馬鹿はいなかった様だ。
「お前等にはもう何も出来ねえよ。教王国と同じく死んでも代わりの奴がその地位に居座るだけだ」
「んじゃサヨナラな!」
「ちょっ、待ちなさい! 助けっ」ザンッ!
「死にたくない! 死にたくない!! 死にたくないいいいーーっ!!!」ザンッ!
「「「…………」」」
命乞いする自分達のトップがあっさり惨殺されていく様にこれが本物の戦闘職なのだと戦慄する冒険者達だった。アーダルベルト達が呑気な会話をしているのが更に現実感を失くしていた。
「はあ、何で殺されないと思っていたのかね?」
「自分等に表立って争える者はいない、と増長していたんだろ?」
「精霊王国がこの国に来て50年位だったか、当初はいさかいがあったんだろうが住み分けが出来てその脅威も忘れてしまったのかねえ?」
その後冒険者達と生き残った神兵達は散り散りになって居なくなった。ベルトルート公爵の兵士達は公爵が捕らえられている事から引く事が出来ずにいたが、暫くしてから王国軍が来て公爵とその兵士達は拘束されて連れて行かれる事になった。
更にその後の顛末として王弟は教王国に唆されたと主張して減刑を求めたが教王国は当然それを否定、寧ろ王弟に脅迫され被害を受けたとして国に賠償を訴え(脅迫し)商業王国もそれに乗っかった。
精霊王国とレンリート伯爵側は王弟の主張を支持、カントラス王国側も同調したが互いに平行線を辿って答えは出なかった。
但し唆されたとしても王命に反し国を乱す行動を起こした事は否定しようもなく、教王国商業王国がそこに謝罪も賠償もしなければカントラス王国内で王国を滅ぼそうと画策したと噂が出るかも知れないと精霊王国が懸念を示した(脅した)事で教王国商業王国は折れる事になった。
王弟は表向き病死扱いで死去、公爵家からは罰金と幾つかの権利を手放す事で国と合意した。
「超大国もアイリスちゃんの前には形無しね」
アイリスの回復魔法と新たな精霊剣に翻弄された結果である。ビアンカの言葉にヒストロスは白目を剥きそうになっていた。
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