第020話 かくれんぼ、の鬼の方
「おぉーい、何だお前等ぁああーーっ!」
前の方から冒険者が走って来た。
「支援物資を運んでるのよ。水とか武器の手入れ道具ね」
「ほう、そりゃ助かるぜ。皆んな武器だけ持って来ちまったからな」
「で? アンタは1人でこんな所で何してるのよ」
「抜けて来たゴブリンを追って来たんだよ。初めは最前線にいたんだけどな。何時の間にかそう言う役割になっちまったんだよなあ」
頭をポリポリかきながら面倒臭そうに言う中堅どころと思える冒険者。パッと見30代半ば、俺とタメくらいか。草臥れた感じが自分と被るね。
『えっ?? ――お主そう言う認識!?』がびーん!?
「今どんな感じ?」
「ああ、最前線は150mくらい先かな。一応安定してるけどまだまだ終わりが見えねえからちょっと厳しいかもな」
「数が足りてないって事?」
「まあ、そう言う事だな。これからゴブリン共の本隊が来るんだろうし、厳しいかもなぁ」
「冒険者が、……戦わないから」
「そりゃどう言う意味だ嬢ちゃん?」
俺の一言に反応して冒険者の男が剣呑な雰囲気を出して睨み付けて来る。お前の事じゃないぞ? と言うか誰が嬢ちゃんか。
「そこ……木の上、2人」
俺が指差すと冒険者の男はその木にゆっくり近づいてそっと上を見上げて固まった。――アイリスの言う通り2人の冒険者が隠れていたのだ。
「何だテメェ等ぁ!! 何してやがるっ! ぶっ殺すぞ!! さっさと降りて来ぉおおーーいっ!!!」
「わっ、分かった! 降りるっ、今降りるからっ!!」
「剣を振り回すなっ! 降りられねぇー!」
バキッ「ぐわっ!」ドゴッ「痛えっ!!」
降りて来た冒険者を殴りつけた。アグレッシブだなコイツ。
「テメェ等ギルドタグ見せろ! ってランク3じゃねぇか! フザけんなよ? ランク2の半人前でも戦ってんだぞクズ共が!!」
「わっ、分かった、分かったから! 殴るな!」
「悪かったよ! 行くよ! 行けば良いんだろ!!」
「オラッ、さっさと行けやクズ共がっ! 兵士に突き出されたくなきゃちゃんと戦えよ! 後で確認するからな!?」
隠れてた冒険者からギルドタグを奪って蹴っ飛ばして行かせてからコッチに戻って来た。
「みっともねえトコ見せちまったな。――けど助かったぜ」
「いや、良いのよ。私達も欲しい情報貰ったし」
「それで何だが、まだ居たんだよな? 何人くらい見た?」
「私は分からなかったわ。アイリス?」
「ここまで、……5人」
「そんなに居たの? 何で言わなかったのよ」
「……皆んなも、言わなかった」
面倒事になるからだよ。見つけられた奴等から逆恨みされるだろうしな。
「私達は気づかなかっただけよ」
「なあ、この嬢ちゃん借りて良いか? 他の奴等も見つけて戦いに向かわせたいんだが」
「まあ、アイリスが良いって言うなら人数的には問題無いと思うけど、アイリスに変な事しないでよね?」
「しねえよ! ったく、どんな目で見てんだよ」
「ああ、俺も構わない」
マットの方は俺を追い出したいだけだろ。けどどうするかな? 逆恨みされたら面倒臭いけど前線が安定すれば俺の安全が測れる……か。
「嬢ちゃん良いか?」
「……ん、良い」コクリ
「おう、助かるぜ。じゃあ端から見つけて蹴っ飛ばして行くか」
「アイリスちゃん頑張って、気を付けてね?」
軽く手を振って別れて、言った通り端から見つけてはこの冒険者、サットンとその仲間達が殴りつけ蹴っ飛ばして最前線に送り出して行った。一応逆恨みが怖いからって事で俺が見つけてる事は秘密にして貰った。どこまで効果があるかは分からないんだけどな。
「いやぁ、話半分に聞いてたけど凄えなこの嬢ちゃん」
「おお、こんな簡単にポンポン見つけて行くとはな。どうだ嬢ちゃん、良かったら冒険者になって俺等と組まないか?」
「……ない」
「残念、――まあこんな能力がありゃ何処でも重宝されるだろうしな」
何故嬢ちゃん呼びを流すか? 冒険者とは基本関わらないからどうでも良いんだよな。
それから途中ミリアーナに見つかって詰め寄られて、変な事されてないか心配されたり付いて来ようとされたりしたけど何とか一通り見つけ終わった。
「いやー、助かったぜ。まさかこんなにいたとは思わなかったよな?」
「ああ、40人以上か?」
「それも殆どがランク3の一人前か、中にはランク4の奴までいたからな」
「そりゃ中々前線も安定しないわな。だがこれで多少は楽になっただろうし、何とか前線が安定すりゃ良いんだけどな」
「嬢ちゃんは本当に1人で大丈夫か?」
「ん、――調査依頼、……奥まで行った」コクリ
「ほう、そっちの専門家って事か。成る程な、隠れた冒険者をポンポン見つけて行くもんだぜ」
「じゃあ俺等はまた前線に戻るからよ。気を付けてな」
「んっ、皆んなも」
「「「おう!」」」
まあ気持ちの良い奴等ではあったな。暑苦しかったけど。……さてどうするかな。
『丁度良いではないか。ゴブリンを狩って鍛練の成果を試すのじゃ!』
確かに体の調子も良くなってるし、今の状態での実戦を経験しておくのも良いかも知れないな。――じゃあ危険度の低目の所を案内してくれ。
『うむ、任せておくのじゃ!』
無駄にやる気を出す妹精霊に若干不安を覚えたが注文通りに単体から、慣れて来ると徐々に2匹3匹くらいずつの相手をしていった。
2匹は立ち位置を気を付けて1匹ずつ倒せば簡単、3匹は立ち位置と倒し方を考えないと2匹に挟まれたり同時に相手しないとイケなくなったりするからちょっと気を使う。
『それでも3匹くらいなら安定して狩れるようになったのじゃ。感心感心』
まあいっぺんに襲われても目が良くなった所為か、動きが良く見えてどうとでも捌けるようになった感じなんだよな。
『目が良くなっただけで捌けるものか、腕が上がったのじゃ。これ以上の数が来ても逃げながら戦えば実質2匹ずつ3匹ずつと変わらん。お主でも落ち着いていれば充分対処出来るのじゃ。――しかしそろそろ上位種を試したい所じゃの』
腕が上がったのか、そう言われるとちょっと実感が湧いて来て嬉しいかな。でも上位種は最前線で倒されてるからコッチには来ないんじゃないか?
『何を言う、此処はもう殆ど最前線じゃぞ?』
「…………は?」
いや何してんのこの邪剣。って言うか最前線? ここ最前線なの?? ヤバいじゃん逃げないと!
何で何時の間にか最前線にいるとかド素人みたいな事しちゃってんだよ!?
『ぼうっとするでない。ゴブリンが来ておるのじゃ』
「っ……くっ」
クソッ、集中集中! 取り敢えず今は余計な事考えない! それから邪剣に言われるがままにゴブリンを屠って行く。コイツの言う通りに動かないとより危険な目に合ってしまうかも知れないから仕方ない。
『ゴブリンソルジャーが来たのじゃ。1匹じゃから落ち着いて行くのじゃぞ』
ソルジャーは150センチ、俺より20センチくらい高い、だけど筋肉質で威圧感がある。戦った事も無いしちょっと怖い。
剣を持ったゴブリンソルジャーが俺を見つけて猛スピードで迫って来た。自然と細剣を握る手に力が入って固くなってるのを感じる。ソルジャーの動きを見ながら体を小刻みに揺らし何度も細剣を握り直して固さをほぐして行く。
目の前まで迫ったゴブリンソルジャーが剣を振り上げようとしたタイミングでコッチから踏み込んで心臓に細剣を突き刺した。脇を抜けるように細剣を引き抜くと、剣を振り上げた状態のままソルジャーは倒れていった。
「…………ふぅ」
何とか上手く行ったけどちょっと、……いや、かなりビビった。ソルジャーでコレならそれよりデカいナイトやキングとはヤリたくないな。
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