第006話 カントラス王国入国
それから数時間、カントラス王国の王都の飛空場へ降り立ったビアンカ達一行はダールトンの案内で精霊神社へ向かい巫女様と挨拶をしていた。
「貴方が精霊の愛し子ですか。ふふっ、本当に人間の男の子なんですねえ」
「ん?」コテリ
「アデール王国に勤めていた巫女のオリビア様から良く聞いておりますわ。オリビア様は残念ながら既にリアースレイ精霊王国へ帰られてしまいましたが貴方に会いたがっていましたわよ?」
オリビア様は見た目30代後半の実年齢80代だったけどカントラス王国の聖女は20代中頃の金髪碧眼でニコニコゆるふわな感じの女性だった。名前はリビエラ様と言うそうだ。実年齢は分からない。
この神社にも精霊がいっぱい居てリリィも嬉しそうだ。そう言えばアデール王国の精霊神社の精霊達はどうなったんだろうか。
『オリビアが連れて帰っておるじゃろ』
心配ない様だな。
「お帰りなさいませビアンカお嬢様」
「ふう、やっと戻って来たのね」
ビアンカは新しく購入した屋敷の自室で一息付いていた。とは言ってもビアンカ自身1日泊まっただけでアイリスを迎えにアデール王国へ戻った為全く馴染んではいないのだが。
それでもアデール王国の屋敷で自分に仕えていた者達を見て漸く気を緩める事が出来たのだ。
今この部屋には執事長ヒストロスと侍女長アリーニャ、ビアンカに同行していたナージャとヴェルンがいて情報交換と今後の方針について話しを進めていた。
「アリアとカチュアは?」
「アイリスと共に別室で寝ています。飛空挺ではしゃぎ過ぎたのでしょう」
初めは緊張していたが、子供がそんな状態で何時間も保つ訳が無い。
緊張が解けたところにアイリスがお菓子やジュースを飲み食いし始め、幼い子供が勧められたら我慢出来る筈もなく。アッと言う間に打ち解け、騒ぎ疲れて眠ってしまったのだ。
「……あの子が計算して打ち解けたのなら大したものね」
「「「………………」」」
有り得ない、部屋に居る全員の気持ちが一致していた。
「大丈夫です。アイリスちゃんは中身も立派な幼児ですから計算等ありません」
「――何ですって?」
空気を読まずに自信満々で答えるナージャに対して頭痛を覚え、眉間に寄ったシワをほぐしながらビアンカは再度聞き直した。
「はい、アイリスちゃんは見事な幼児体型です! 2人と比べても遜色ありません。そして中身も完全に幼児「貴女は何を言っているの?」
「ですからアイリスちゃんのたい「違うわよ! 一体何の報告してるのよ貴女は! ヴェルン!!」バンッ!!
「申し訳ありませんビアンカお嬢様。ナージャは迷宮探索以来おかしくなったままでして……」
「ミリアーナと言いナージャと言いどうしてこう……」
「ミリアーナが如何しましたか?」
「何でもないわよ!」
ビアンカは数日前にしたミリアーナとのやり取りを思い出していた。
アリアとカチュアの事を未成年だから手を出さないと言っていたが「それよりビアンカ様の方が全然先じゃない?」と捕食者の目を向けてくるミリアーナを思い出し、怖じ気が走って自らを抱き締めるのだった。
「タヒュロス王国の公爵令嬢、マリアンヌ様がカントラス王国に捕らえられました」
「マリアンヌ様が? どうして!?」
ビアンカはヒストロス達と情報交換をしていたが、そこで衝撃的な話を聞かされていた。
マリアンヌはビアンカと同じ少数派グループに所属していて、かなり親しい間柄だったのだ。
「はい、カントラス王国はタヒュロス王国に戦争を仕掛けられた為と言っておりますが実際は逆でございます。タヒュロス王国に戦争を仕掛けましたが大敗、マリアンヌ様を人質に戦後交渉に望むつもりではないかと」
「大敗? ……何があったの?」
「そこまでは分かりませんでした」
「国力では確かにカントラス王国の方が上だけど……、どうなるかしらね」
「タヒュロス王国は小国です。カントラス王国が求める額を出す事は難しいでしょう。カントラス王国が大敗したと言ってもタヒュロス王国にも被害は出ているでしょうしな」
「それでも、侵略を受けた事にする以上半端な賠償ではこの国の貴族達が納得しないわね」
「アデール王国が混乱しておりますし、場合によってはカントラス王国の属国になるかも知れませんな」
タヒュロス王国はカントラス王国の南東にあり、アデール王国にも接している小さな国だ。
「アデール王国もフォシュレーグ王国と戦争したばかりだし、カントラス王国やタヒュロス王国に干渉出来る状態じゃないか」
「その混乱を知ってタヒュロス王国を攻めたのかも知れませんな」
「――結果負けてれば世話ないわね」
「ええ、ですが戦争と言っても小規模のモノで、カントラス王国の民は余り関心が無い様です。気にしてるのは貴族くらいでしょうか」
「体面を気にする貴族に気を使って国がマリアンヌ様を捕らえたって事ね」
ビアンカにはアデール王国同様カントラス王国も愚かに思えて来た。
「それにしても、タヒュロス王国はカントラス王国に攻められるとは思っていなかったのかしらね」
「と言うと?」
「そもそもマリアンヌ様はアデール王国に人質として来ていたんだし、カントラス王国にもマリアンヌ様の様に人質を送っていた筈じゃないかしら?」
「アデール王国は方々にちょっかいを掛けていましたから、カントラス王国はそれに比べると理性的な国と思われていたのではないかと」
「比較対象が悪すぎたのね」
「そうかも知れませんが。戦力に劣る筈のタヒュロス王国が勝ったのですから、他に何かがあるのかも知れませんな」
「――そうね。でもマリアンヌ様も戦乱を避けてカントラス王国に来たのにそこで囚われるなんて災難ね」
「そう言うビアンカお嬢様も中々ですが」
ヒストロスとの会話に割って入ったヴェルンの言葉に、ビアンカもヒストロスも反論出来ずに渋い顔をした。
「ええっと、後はメメントリア王国の第一王女スカーレット・メメントリア様からビアンカお嬢様とお会いしたいとお話しがあります」
「スカーレット様が? 何かあるのかしら?」
メメントリア王国はアデール王国の北にある小国でマリアンヌと同様実質人質としてアデール王国に来ていたのだ。ビアンカはマリアンヌと同じくスカーレットにも仲間意識を感じていた。
アデール王国の学院でも同じグループに居たし、ビアンカの屋敷に招いてアイリスと顔合わせをしていた程だ。
「分かりません、此方に来たらなるべく早く連絡が欲しいとの事です」
「そう、……問題が無いのなら手紙を書くわ」
「お願いします。それでは私は商工ギルドへ行き、ダールトン様と会って情報収集をして来ます。馬車を使いますが宜しいですか?」
「ええ、構わないわ」
「では失礼致します」
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