第018話 スタンピードの始まり
「ゴブリンだぁーー!! ゴブリンが動き出したぞぉーーーーっ!!!」
昼過ぎになって更に50人程村に人が増えた時にソレは来た。
「よおーーっし、決められた通りに行けぇーーっ! 突出せんようにな! 臆病風に吹かれたら承知せんぞ!!」
「兵士達も行けっ! 脇から取りこぼさないようにしろ!! だが深追いして陣形を崩すなよ!?」
漸く人心地ついたと思ったらコレかよ。ダラダラと歩いて冒険者ギルドのギルド長に怒鳴り付けられてる奴等がいる、まあそう言う奴等もいるよな。いかにも冒険者らしい。
「どうする? 俺達も行くか?」
「何言ってんのよ。ランクが足らないから私達は不参加って言われてたじゃない」
「分かってるよ! でも俺達だって戦えない訳じゃないだろ!?」
「そうだな、上に上がる功績が足らないだけで戦えないって訳じゃない」
「此処で活躍したらランクも上げられるかもな!」
12・3歳の少年少女達が血気にはやって戦いに参加しようとしてる。無謀としか言いようがない。
「アイリスちゃんはどう思う?」
そこで俺に振る? て言うかちゃん? 俺、君等の倍以上生きてるんだけど?? それに俺は君等のチームじゃないんだけど? ……若干腑に落ちないけどまあ良い。この娘は止めて欲しいんだろう。
「何だよアイリス、お前反対なのかよ」
「どうせ怖いだけだろ」
うぐぐ、小さくて華奢だからって10代前半の生意気そうなガキ共にまでタメで話されるって、クルんだよな。
「……ランク、落とされる」
「ああっ? 俺等が弱いってのか!?」
冒険者ギルドと違って傭兵ギルドは低ランクの奴等が無茶しないようにそこら辺厳しくなってるんだよ。
「強さ……関係ない」
「あん? じゃあ何でだよ!」
「違反、行動……減点」コテリ
「うえっ!?」「マジかよ!?」
って言うか何でお前等知らないんだよ。どうせ説明聞き流したり手引書も読んで無いんだろうけど。それよりやるべき事は沢山あるんだ。遊んでいる場合じゃない。
俺は女の子、イリアを連れて村人が集まっている所に走って行った。村の女達や老人を避難させないといけない。少年達には支援物資を運んで来た商工ギルドのオッサン等を止めて村人達を馬車に乗せてくれるように説得に行かせた。
『殆どイリアが話しておったがの』
――良いじゃんか別に。
村の女性達が集まって何故か逃げようともしないで話し合っている。
「ああ、アイリスちゃん。アタシ達も戦おうと思って」
「うん。この槍があればアタシ達でもヤレるからね」
商工ギルドからの支援物資として長槍が村の人達に配られて、柵を越えて来ようとするゴブリンを柵の内側から刺していくように指導したんだそう。けどやる気が暴走してしまったようだ。
ゴブリンが来るまで念の為って頼んで残って貰ったのに何言ってんの?
「自分達の村だもん自分達で守りたいじゃない」
「それに柵の内側から槍でゴブリンを刺すだけなら出来るかなって」
やる気になってる女達を横に村長をジト目で見る。お前何してんだよ。説得しておけよ。
「すいませんアイリスさん、力不足でして……」
「……本当に……」
ジト目でばっさり言ってやったらうなだれた。ああクソ、俺の仕事増やすなよな。
「柵、……壊されたら?」
「「「えっ?」」」
「柵は、……壊される」
「「「あ………………」」」
「我儘言わない」
ばっさり言ってやったらうなだれた。
「アイリスちゃん、凄いね」
イリアお前……、ちゃん付けで尊敬の眼差しで見られてもね? 子供にちゃん付けされてちゃオッサン複雑だよ?
イリア達にはチームメンバーと避難する村人達を護衛して送ってくれるように頼んだ。これでイリア達も村の女達も安全だろ。
残ってる村の男達に水を次々台車に汲んで貰っているとイリア達が走って来た。
「アイリスちゃん! 商工ギルドの人達が村の人達と一緒に避難してくれるって。でも自分達で護衛雇ってるから私達の護衛も要らないってよ?」
「何かやるなら付き合ってやるぜ!」
まあ村の女達にも念の為何本か槍を持たせたから、要らないと言われればそうなんだろうな。取り敢えず柵に向かうと殆どの兵士冒険者傭兵達は出て行ってた。
「おっヤッホー、アイリスちゃん!」
「……ミリアーナ」
ミリアーナのチームの他にも何人かいるけど皆んな傭兵か。
「場が落ち着くまでは此処に居ようかと思ってね」
「逃げてんじゃねえの?」「怖いんだろ」
ヒソヒソ言ってるけど聞こえてるぞお前達。
「なあにアイリスちゃん、何時から子供達の引率初めたの?」
「してない」
何か後ろでガキ共がギャーギャー言ってるけどシカトシカト。
「ん、ゴブリンは?」
「やっぱり何匹か来たわ。ほら向こう、見えるでしょ」
ミリアーナが指差す先、森の入り口付近にゴブリンが20匹くらい倒されていた。
「まあ初めは連携が上手く取れなかったりして、どうしても漏れて来るから仕方がないのよねえ?」
「「「「「………………」」」」」
「で、そろそろ場も落ち着いて来たみたいだから私達も行こうかなってね」
ガキ共を見ると食って掛かった奴等が気まずそうにしてる。そうこうしてると村人達が桶に水を入れて台車で運んで来た。
「アイリスさーん。水持って来ました!」
「んっ、……ありがと」
「アイリスちゃんそれって?」
「補給」
何もしないとお金貰えないしな。前線まで行かなきゃ大丈夫だろ。いざとなれば逃げれば良いし。
「ああー、水に石鹸とボロ布もあるのね。どのくらいの長期戦になるか分からないし、剣の血油も取りたいし確かに必要ね」
「アイリスちゃん、私達も手伝うよ」
「おっ、おう。なっ?」
「ああ、俺等も手伝うぞ」
7人の少年少女達がやる気を見せるけど実力が分からないし、暴走して死んだりしたら俺の所為にされそうで連れて行きたくないな。……どうするか。
「ミリアーナ、……リーダー」
「えっ、私? ……ああ、確かにまだ皆んなランクが低い子供だし、アイリスちゃんじゃ纏められないか」
頭を撫でんな、間違えて俺まで子供扱いしてるぞ?
「となると〜、どうしようかしら。皆んな手伝ってくれる?」
「そうね、良いんじゃない? 誰かがやらなきゃいけない事だと思うし」
「必要になってから動いたんじゃ間に合わないもんね」
「台車がまだあるなら俺等のチームも入って2つに割って西と東に補給するようにしたらどうだ?」
「確かに補給は大事だしな」
「うんうん、アイリスちゃんが困ってるならお姉ちゃんが助けてあげるよ」
ミリアーナのチームがメインでやってくれるみたいだ。これなら何かあっても俺の所為にならないな。――うむ、助かるよお姉ちゃん。
『お主節操ないのう』ジト目
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