第006話 探索1日目8階層手前
7階層は6階層と同じく岩地草原エリアで出て来る魔物の同じ。でも石猪は一回り大きくなった、俺のへそ下くらいある。石猪は突進して相手を倒して獲物を食べる習性だから俺がコイツの突進を受けたら大怪我するだろうな。
まあ今回はリリィの探知があるし、大きくなって見やすくなったからかえって倒し易くなったくらいだ。――怖いけど。
ルートが岩地の所為で回り道になったから通り抜けるのに30分程余計に多く、2時間程かかって7階層を終えた。
「今日は此処で泊まりだ。冷静に戦えてたし、良く付いて来たじゃないか嬢ちゃんは、なあルトルート?」
「ああ、正直ここまでとは思ってなかったな。まだ余裕がありそうだったし、中型の魔物が出るまではイケるかもしれねえな」
「一応回復要員として来てるんだからねアーダルベルト。まあ魔物相手に動ける事、ある程度自衛が出来る事は分かったわね」
「何言ってんだ、戦いながら此処まで来たんだよ? 立派なもんじゃないかレーディア」
「分かってるわよツェツェーリア」
嬢ちゃんじゃないけど褒められると気分が良い。ふふふん。
『まあ許容範囲の足手まといって言う程度の評価じゃろうがの』ボソッ
7階層終わり、8階層手前で野営をする事になってアーダルベルトとルトルート、そしてレーディアにツェツェーリアがそのまま話し合っている。その間に他の探索者達は皆んなで食事の準備にテントの設置等をしていた。
俺達は早々にテントの中に入って身体を拭いてからそれぞれ武具の手入れをする。精霊剣は魔力を通すだけで手入れ要らずだけど防具の方は手入れしなきゃいけないからな。
『ふっふっ、リリィは精霊剣じゃからなぁ』どやぁ
「アイリスちゃん替えの水出してくれるぅ?」
「んっ、もう魔力ない」
て言うかさっき試しに水を魔法で出してみたら出来ちゃったんだよなぁ。
『魔力操作レベルは一般魔法使いレベルを超えたからの。適正があれば使うだけなら出来るのじゃ』
ほうほう。でも属性魔法は火魔法が一番役に立つからなぁ。水魔法は戦闘では役立たずだし、そのままじゃ飲めないし。
『水魔法は戦闘で使えん訳じゃないのじゃが、確かに技量が無いと難しいからの。飲むにも周囲の澱んだ魔力も染み込んでしまうからの、時間を置くしか無いのじゃ』
――成る程。
「もうミリアーナ、アイリスちゃんは疲れているんですよ? ヴェルンか後で良いなら私が出します!」
「いやぁ私今裸だし、ならナージャに頼むわ。あぁ〜あ、私も水魔法が使えたらなぁ。あ、でもそれより魔剣が欲しいわ。手入れが楽そうだし強そうだもんねえ?」
「分かりましたから先ず服を着なさい。それと魔剣なんてそう簡単に手に入る物じゃありませんよ」
ミリアーナが武具の手入れをしながら愚痴るのをナージャさんが嗜める。ミリアーナが言う魔剣と言うのは精霊剣リリィの事だ。
リリィは魔剣として認識されている。魔力を通すだけで手入れ要らずだからな、いちいち隠して戦うのは流石に面倒だから近しい人達にはバラしたんだ。
『と言うかバレたんじゃろ。バレた時あっ、て言っておったしの』
…………いや、計算だし?
『目が泳いでおるのじゃ。碌に手入れする振りもせんで、バレて当然なのじゃ』
うぐぐ。
『お主もうちょっと考えて行動したらどうなのじゃ?』
ぐふうっ!!
外に出てご飯、黒パンに石猪の肉増し増し麦雑炊だ。黒パン固いから嫌いなんだよなぁ。日持ちを考えるならクッキーで良いのに。ガジガジ噛み付くけど石食べてるみたいで全然食べれない。
「アイリスちゃんこっちを食べて下さい」
「んっ」
ナージャさんが薄くスライスした黒パンを渡してくれた。
「スープにつけて食べれば良いですよ。ではアイリスちゃんの黒パンは私が頂きますね」
「……食べかけ」
「ご褒美で……、いえ気にしません、気にしないで下さい」
まぁ良いけど。んっ、何とか食べれる、かな。でも雑炊だけでも良かったかな。
『(ナージャも業が深いのう。食べかけを女子に食わす主も主じゃが)』
「ねえヴェルン、テントは少ししか設置していないわよね? 夜番で交代で使うにしても少ないんじゃない?」
「ああ、テントは夜番をする人間が交代で使うんですよ。他の皆んなは寝袋ですね。寝袋は直ぐ脱げる様になっているし、着けたままでも戦える仕様なんですよ」
「ふうん、私達はテントで良いの?」
「ええ、アイリスは回復要員、私達はその護衛として入ってます。戦闘員ではないので私達は夜番は免除です。まあ良く知らない人達に任せられないと言う事もあるのでしょう」
「成る程ねえ、じゃヴェルンも私達と寝るの?」
「いえ、私は寝袋で寝ます」
ミリアーナとヴェルンさんが話してるけどヴェルンさんはテントで寝ないようだ。
「? ……何で??」コテ
「ヴェルンは女性だらけの中に入りたくないそうです(まあ一緒に寝るとか許しませんけど)」
ふっ、恥ずかしいのかね? ヴェルンは青いなぁ。
『……そうかのう?』
早々にご飯を食べてテントに入って寝た。まあ何時も通りだけどナージャさんとミリアーナに挟まれている。違うのは俺以外はパジャマじゃなく革鎧を着てる事だ。何故か俺だけパジャマ……。いやコレも防御力のある特別製らしいけど。
『こんな物作って寄越すなんてダールトンも大概おかしいのじゃ』
うむ、意味が分からんしな。
テントの外が騒がしい。レーディアさんとツェツェーリアさんにガラの悪い見知った男達の声だ。
「姐御〜、俺等もテントに泊まらせて下さいよ〜。マジで一日中荷物持ちやらされて死にそうですよ〜」
「ああん? お前等は休憩の度に嬢ちゃんから回復させて貰っただろ。甘えんな」
「そんな〜」
「寧ろその所為で地獄が続いたんすよ!?」
そう、休憩の度にコイツ等の体力回復をさせられたのだ。思わず俺の視線も冷たくなっていったのも仕方ないと言うモノだろう。その上回復させる度に恨みがましい目で見て来やがって、……後でマシマシで請求出来ないかな?
初めは身体強化魔法と回復魔法を併用して皆んなに付いて行ってたのに、コイツ等に回復魔法を使わされる事になって、危うく起きてる時にリリィの外魔力循環で魔力を回復しないとイケない所だったんだぞ?
『危うくってなんじゃ! リリィの好意を踏みにじるのか!?』
イヤそこまで言わないけど体質に合わないんだよなぁ、お前の魔力。
『それはお主の心根の問題じゃと言うておるじゃろ! 精霊剣の清い魔力を受け入れられんとはなんじゃ! 嘆かわしいのじゃ!!』
まあそれは何とか免れたんだけど、節約の為に身体強化魔法は使わず回復魔法だけで乗り切る事になってしまったのだ。歩幅が合わないからペースを合わすのがどれだけ大変だったか。
明日から02時10分と08時10分に投稿します。
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