第004話 化かし合い
「アデール王国第五国軍は当該探索者を従えて迷宮30階層への探索を命ず」
それがアデール王国の愚王からの勅命だそうだ。しかし俺等が迷宮の30階層攻略する事を知っていたか、つっても商業ギルドが絡んでるんだろうけどな。
「アーダルベルトさん。我々探索者ギルドとしてもこんな強引な横入りは拒否したいところなのですが、陛下の許可を得てしまっている様なのです」
「要するに攻略に自信がないから寄生するって事だろ? 力が無いのを認めておいて何で偉そうなのかね」
おいルトルート、ゲッフェルトとか言うおっさんが真っ赤になって血管ぶち切れそうになってるぞ?
「ふざげるな! 我等が本気になれば迷宮等簡単に攻略出来るわ!!」
「ほぅ〜そりゃ凄え凄え、だったら俺等を頼らずに行けんだろ?」
「当然だ!!」
「待って下さいゲッフェルト殿! 陛下の勅命ですよ? 探索者共を使ってやらねば陛下の顔を潰してしまいます!!」
あ、惜しい。もう少しで単独攻略させる事が出来そうだったのに。
「俺等が30階層に到達すりゃあこの国の最深階層を更新するからな。自分達で攻略したって言いたいんだろうさ」
「商業ギルドも参加賞が欲しいのでしょう。副都は商工ギルド傭兵ギルドが強いですからな。冒険者を増やして商業ギルド冒険者ギルドの勢力を増やしたいのでしょう」
ルトルートとデルトファス様の言う通りだろう。この迷宮専門の探索者ギルドはリアースレイ精霊王国の施設だけど登録すれば誰でも迷宮探索が出来ると言うシステムの弊害が出たな。
結局愚王の命令じゃどの道断れない。話し合いを進めていくしかないか。
「補給物資はどうすんだよ、コッチには余裕はねえぞ?」
「そんな事は無いでしょう? 余裕を持って準備していますよね?」
「イレギュラーを想定してだ。軍が同行すると分かっていたら倍は用意してるぞ。分ける余裕は無えな」
「ふむ、仕方ありませんね。我々で用意しましょう」
出来るんかい!? 狸親父め、流石商業ギルドってトコか、この強引な横入りだってコイツ等の画策だろうしマジで油断ならないな。
「物資が此処に無いと言う事はそれは既に何処かの拠点に用意してあると言う事ですか? 何処で誰に用意させているか教えて下さい」
「何故そのような事を? 我々が信用なりませんか?」
探索者ギルドのデルトファス様が口を挟んできた。商人には商人、俺等じゃ手玉に取られかねないし任せるか。
「此方の契約と被ってないか、誤りが無いかの確認ですね。皆の命が掛かってますから、万が一も無い様にしませんとイケないでしょう?」
「しかし守秘義務と言うモノがありますからなぁ」
「話せないと言うのであれば我々は問題が起きた場合、探索者の行動を支持しますよ」
「何を言っているのです? 国軍を優先するべきでしょう? 陛下の勅命でも探索者は従う様に書かれていますよね?」
「そうなれば同行する探索者の生存率が下がります。出来る準備を怠るのは其方の怠慢でその責任まで此方では負えません」
「はぁー、ここまで道理が分からないとは、……仕方がありませんな。物資の調達を依頼しますよ」
「待てコラ、やっぱり用意して無かったって事じゃねえか。俺等から奪うつもりだったって事か? あぁん?」
「はっはっはっ、まさかまさか、私は唯の商人ですよ? 探索には同行致しませんし、誇り高い国軍の方々がそんな盗人のような真似をするとでも?」
ルトルートがぶち切れそうになったけど俺も同感だ。けど狸親父は涼しい顔で更に煽って来やがった。
その後も化かし合いの様な話し合いを続けさせられたが結局は15階層まで新たに探索者を雇って国軍の物資を運ばせる事に、大分金を出させて少し溜飲が下がった。
高位の探索者達は俺等が既に雇って20階層に物資補給をさせていたからな。これで奴等は15階層から自分達で荷運びしないとイケなくなった。
更にルトルートが煽りまくった結果、攻略は15階層までは俺等が、25階層までは国軍が、そこからは一層ごとに交代で攻略する事になった。
国軍のゲッフェルトと商業ギルドのザーザルは渋い顔をしたがルトルートが付き添うだけなら成果は当然俺等だけのモンだよな? と言い探索者ギルドのデルトファス様が同意した為こうなった。
しかし国軍は17階層までしか攻略出来て無かったのにどこから自信がでるのか、それとも現場で押し付けるつもりか? ――どちらもありそうだし気を付けるしかねえな。
迷宮1階層噛みつきネズミ、30センチ程の素早い魔物で寄って来たところを斬り上げる。2階層吸血蝙蝠は避けられない様になるべく引きつけてから胴体を斬り裂く。
3階層の跳ね兎、1階層の噛みつきネズミより一回り大きく壁を使って飛び跳ねながら方向転換して来るけど、これもギリギリまで引き付けてから首を撫でるように斬り裂く。
「中々戦えてたじゃない嬢ちゃん」
「んっ」コクリ
今は迷宮3階層、4階層手前まで来ている。けど姐御ことレーディアさんに褒められたけど嬢ちゃん呼びが定着してしまったな。俺はナージャさんヴェルンさんミリアーナに加え、レーディアさんとツェツェーリアさんと言う女の人と組んで最前線で雑魚狩りをしてる。
ナージャさん達には付き合わす事になるけど、どうせいずれ戦力として付いて行けない領域に入って唯の回復要員にされるんだ。それまで実戦経験を積む事になるし点数稼ぎをして報酬を増やして貰おう。
「4・5階層は草原エリアになっていて次の階層に行くには真っ直ぐ行くだけで良いんだけどな。これまで出て来た魔物が草原から飛び出して来たりするから気が抜けないんだよ」
そう言って俺の頭をポンポンするツェツェーリアさんはレーディアさんよりちょっと低い180cmくらいの筋肉質な女性だ。
あと違いは胸の大きさか、レーディアさんもミリアーナくらい大きいけどツェツェーリアさんは更に2回りくらい大きい、シャルロッテさんに次ぐ大きさ、俺の顔くらいある。
全く、その身長と筋肉を少し寄越せと言いたい。何故俺はこんなちんちくりんなのか。
「この先は嬢ちゃん達は行って無いんだろ? 初めは私等が先行しようか?」
「いえ、ナージャと私は去年20階層まで潜っていますので問題ありません。お2人は変わらずフォローをお願いします」
「ふーん、分かったよ。でも無理そうなら代わるからな?」
「はい。お願い致します」
小休止を終えてこれまで俺とミリアーナが先頭だったのが、ヴェルンさんの提案で俺と経験者のナージャさんになった。4階層は若干明るくなった気がする。確かに草原、でも天井も奥に見える壁もこれまでと同じ石壁だ。
「何か不思議な光景ねえ」
「んっ」コク
「景色に見とれて注意を怠らないでね2人共」
ミリアーナに同感、凄い違和感があるな。でも他のメンバーは経験済みだからか落ち着いていてナージャさんに注意を受けてしまった。
下の階層の方向が分かっているから真っ直ぐ進めるけど、魔物が草陰や天井の溝から襲って来る事もあるらしくて気が抜けない。
それでも4階層は30cm程の草原だったから歩けたけど、続く5階層は草が50cm位の高さになって俺の身長だと腰くらいになって少し歩き辛い。
「まあ6階層から先暫くはそこまで歩き辛い階層では無いですよ」
ヴェルンさんにそう言われて前後を変わって貰ってしまった。
無属性魔法に周囲の警戒に使える感知魔法と言うのがあるらしいけど鍛えてないから使えない。リリィがいるから鍛えるつもりも無い。
『まあ身体強化魔法に念動、もっと優先する魔法があるからの』
身体強化魔法はなんとなくコツが分かってきたかな? 皆んなとの鍛練では使わないと話しにならないし、ぶっちゃけ今も使ってる。――使わないと歩くだけでも付いて行けないんだよ? どんだけ体力無いんだよ俺、回復魔法も併用してるから魔力がどんどん削られる。
小休止の度にリリィに眠らされて外魔力循環で魔力を回復させてるからなんとかなってるけど精神的に辛い。
もう一つ、無属性魔法にある念動魔法は第三の手みたいな感じで近くの物を持ったりするくらいは出来る様になったけど、実戦レベルにはまだまだ遠い。
慣れれば見えない手で殴ったり足を引っ掛けたり出来るらしいから、今も身体強化魔法と一緒に集中的に鍛えてるけどな。
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