第002話 アーダルベルトとルトルート
何とかナージャを正気に戻してから今回の迷宮探索についての話しを始めた。
「しかしルトルートじゃないが本当に俺達と迷宮探索をするつもりなのか? お陰でダールトンの旦那から結構な援助を貰えたから良いんだけどよ。言ってもリスクはあるんだぞ?」
「ええ、此方にも事情があるのですよ」
ビアンカ達は桃色髪の天使騒ぎがある中でアイリスが更に騒ぎを起こさずにいられるとはとても思えなかった。かと言って屋敷に閉じ込めておく事もリアースレイ精霊王国の人達の手前出来なく、苦肉の策で迷宮探索の許可を出したのであった。
「アイリスちゃん起きて、朝よ」
「ふわぁあ……ん」
ミリアーナの声に目覚めたら見知らぬ部屋のベッドの上だった。何時も通りナージャさんとミリアーナに挟まれて寝てるけど、……俺は馬車で寝ていた筈なんだけどな?
それにしても女の子に囲まれての生活もすっかり慣れてしまってるな。……1人で寝られなくなったらどうしよう。
『何を今更、お主は始めからそんなモンじゃったのじゃ』ボソッ
「ん、……アイリスちゃん、起きたのですね。昨日夕ご飯食べずに寝てしまったからお腹空いたのではないですか?」
「んっ、……んん?」こてり
『馬車の移動中から此処まででほぼ1日寝続けておったのじゃ』
ほう? ……良く寝たなぁ。
『(リリィが寝かせたのじゃがな。能力拡張は繊細過ぎて寝かせておる時しか出来んし此奴にヤル気を出さすには少しでも強くするしかないのじゃ。しかし筋力は子供並みで既に頭打ち、今は魔力を増やして扱い易くするしかないのじゃ! 剣なのに! リリィは精霊剣なのに!! 天使だの聖女だの! そこは剣聖じゃろ!? そもそも男じゃろうが!!)』
何故かリリィが頭を抱えながら空中で地団駄を踏んでいる。精霊にも悩みがあるのかなあ?
「ほらミリアーナ、朝ですよ。アイリスちゃんもお腹空いてるでしょうし食堂に行きましょう?」
「んん〜、ナージャ〜……」
「きゃっ、ちょっとミリアーナ! 寝ぼけて、あんっ、寝ぼけてないわね!? アイリスちゃんが見てっ、ひゃあっ」
確かにお腹が空いてるな。ナージャさんがミリアーナを起こしているし、俺も食堂に向かうか。
『おい、ナージャが……、良いのかの?』
うーん、重い。自分より大きなぬいぐるみって何だよ全く。ずるずる引きずっちゃうじゃないか。
『なら置いておけば良いじゃないかの?』
………………廊下に出てから言うなよ。
「あらお嬢ちゃん目が覚めたの?」
「ん?」
上を向くと大きなお姉さんがいた。180cmくらいかな? 筋肉モリモリだな。て言うか誰がお嬢ちゃんか。とか思ってたらその知らないお姉さんにぬいぐるみと一緒に抱き上げられた。食堂に連れて行ってくれるみたいだ。
――まあ良いか、お腹空いてたし力入らなかったし。
「くっ、私のアイリスちゃんを抱っこするなんて……」
「貴女のじゃないけどね。アイリスちゃんがぬいぐるみを引っ張ってるのをただ見てるからよ」
後ろから憎々しげにアイリスを抱き上げた女性を睨み付けるナージャにミリアーナが呆れたように話す。
「何言っているんですか! 見目の良い幼い子が自分より大きなぬいぐるみを引きずりながらヨタヨタ歩いているんですよ!? 庇護欲を唆るでしょう!? コレが愛でずにいられますか!!」
後ろが五月蝿い、誰が幼い子だ。それにしてもこの人凄い力だな、本当に女、――だよな?
「ちょっと、くすぐったいわよ? 悪戯しちゃ駄目だよお嬢ちゃん?」
「んっ」
おっぱい触ったらあった。確かに女の人だった、結構デカいしミリアーナ並みかな?
『何ちゅう確認の仕方をするのじゃお主は……』驚愕
リリィが信じられないモノでも見た様に言って来た。けどローブで見えなかったんだから仕方がないだろ。
『いや……、まあもうええわ』
「??」コテ
「おうレーディアの姐御っ、何時の間に娘が出来たんだ?」
「ギャハハ、あんな可愛い娘が姐御の娘な訳ねえだろ! 笑わすな!」
「そりゃそうだ! 姐御っ、どっから攫って来たんすか!?」
「「「ギャハハハハ!!」」」
「……テメー等ぁ、良い度胸じゃねぇか。よっぽどアタシと遊んで欲しいみたいだねぇ?」
「ハッハッハッ、いやいや姐御、残念だけど今日から長期の迷宮探索だぜ? そんな時間ある訳無いっしょ?」
「そりゃそうだ!」
「「「うはははは」」」
「良い度胸だよテメー等ぁ」ピキピキ
「お姉ちゃん、お腹空いた」
レーディアはぶち切れそうになったがアイリスにお姉ちゃんと呼ばれ、小さい手で頬をツンツンされて頬を緩ませていた。
『(何がお姉ちゃんか。まあ此奴はおっさんが若いの女性を呼ぶ様なつもりで言ったんじゃろが)』ジト目
「チッ、お前等遠征中はずっと荷物持ちな」
レーディアはアイリスを席に座らせてから揶揄って来た仲間達に無慈悲な命令を下した。荷物には携帯食料や予備の武器防具、整備品等で30キロ以上あり一番キツい仕事なのだ。
「ちょっと待って下さいよ姐御! 荷物持ちはローテーションって決まってますよね!?」
「お前等で持つ荷物をローテーションすれば問題ない」
「イヤありまくりですよ! それローテーションって言わないですよ!!」
「そうですよ! 姐御の鬼!! 鬼畜!!」
「ああん? それだけ元気なら大丈夫だろ? 期待してるぞ、なあお前等?」
「「「ひいっ!」」」
「クククッ、揶揄いが過ぎたなお前等」
「「団長!」」
「団長何とか言って下さいよ! 荷物持ち専門なんてキツ過ぎですよ!?」
「自業自得だ。それよりその嬢ちゃんか、連れてくのは。――大丈夫か? 迷宮探索は命懸けなんだぞ?」
「んっ」こくこく
嬢ちゃんじゃねえけどな。最早子供扱い女児扱いは慣れたものだ。
『いや慣れてどうするのじゃ。ってお主はずっとそんなモンじゃったの』
そんなモンってどんなモンだよ。
団長って事は此処の偉いさんだろう。なのに俺を嬢ちゃん扱いするって事はヴェルンさん達が何か意図があってそう言う事にしてるって事かも知れないしな。否定しない方が良いだろ。
「アイリスちゃんご飯よ〜、ってミリアーナ! 何で貴女がアイリスちゃんを抱っこしてるのよ!?」
「だって椅子のサイズが合ってないんだから食べ難いでしょう?」
「それは私の役目でしょう! 私は侍女なんですよ!?」
「そんな事より早く食べさせてあげなさいよ。可哀想でしょ?」
「はっ! そうでした! アイリスちゃん、あーんしましょうねぇ?」
「あーん、んっ、もぐもぐ」
『お主それで良いのか?』
いや夕飯食べてないからマジでお腹空いてんだよ。もう目眩起こしそう。それにナージャさん相手に考えるだけ無駄だからな。――にしてもこの分厚いステーキに肉増し増しのスープ、それに固い黒パン、朝から重いわ! 食い切れないぞ?
「なあヴェルン、マジで大丈夫か? 思った以上に幼いぞ。それに見目も良すぎる。これじゃ王族貴族にだって目を付け、……られたのか!? それで迷宮に逃げる事に?」
「後商業ギルドと神聖教会にもですよアーダルベルト」
「……マジかよ。それで迷宮に入るのかよ。何かあっても責任取れないぞ? お前等に任せるからな?」
「団長ぉー! それより姐御に何とか言って下さいよ!? ずっと荷物持ちはキツ過ぎますって!!」
「だあっ!! 黙ってろ!! コッチはそれどころじゃねえんだよ!!!」
『――のう? お主の事で揉めとるようじゃぞ?』
もぐもぐ、知らん。
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