第031話 幕間 シャルロッテ、暗躍、そして……
3人が私から目を反らして話す中、チラリと伯爵が目を向けて来たので捕捉しておく。
巫女の能力と扱いについて、あんな国に派遣されるくらいには数がいる事。精霊神の加護を受けて巫女の能力を得たと言っていたから貴重だけど替えが聞く可能性もある事を話していった。
「いや待て待て、精霊、神? ……神の加護だと??」
「彼等は信じている様でしたよ? 実際に精霊を見れる人がいるそうですし、超常の能力を持つ巫女に飛空挺なんてとんでもないモノを見させられて信じない訳にはいかないでしょう。ねえシェルビドさん?」
「ああ、見ちまった……からなぁ」
「完全に私達人間の国を見下していましたね。何時でも大陸くらい統べられると考えている様でした」
「じゃあ何でしないんだよ」
「人間の国ごときが自分達と同じ精霊神の統治下に入る事を好ましく思っていないのでしょう」
「「「………………」」」
「はぁ…………シャルロッテに関する事はグランツ、お前がやれ」
「は? ……父上?」
「今後の領地運営、国政にも関わる事だ。今後はお前がこの領地を継いで行くんだし、若いお前の方が良いだろう。年を取ると頭が固くなっていかん。任せたぞ」
「ちょっ、父上!? 父上えぇええええーーーーっ!!!」
またこの茶番、流行ってるのかしら? まあ2人共逃がさないけど。
「ちょっと待て! 貿易に関してはアデール王国に隠れてそのリアースレイ精霊王国側が密輸させてくれるんだろ!? だったらコレは何だ!!?」
「バカ正直にやったって税は取られるし道中の費用も掛かるのよ? 更なる密輸の手段を模索したり潜入工作の間者を送り込むのは当然でしょう?」
「いや、だがしかし……」
「ついでにアデール王国の王都からレンリート伯爵領までの道中を円滑にする為に間者を商人に偽装させて、そこまでの領地へ商工ギルドの商品を卸して行く事にしましょう」
「そっちがついで!?」
お金になるし安全に他国の情報を得られる。余計な荷物を持たなければならないけど、ここは割り切るしか仕方ないわね。
「密輸や潜入工作の問題は国境を越える時ね。レンリート伯爵領に隣接してるアデール王国のブラン侯爵領とは今のところそこまで仲は悪くない。伯爵の優柔不断なことなかれ主義が功を奏したわね」
「お前、人の親父を、って言うか自分とこの領主だぞ? 少しは敬えよ」
「でもアデール王国自体が不穏な今、これからはそうは行かないわ。今の内に商人兼間者を仕込んでを送り込まないと。商工ギルドのダールトン様を使ってアデール王国の国籍を持たせれば比較的安全に活動出来ると思うわ」
「なあ聞いてる?」
「此方側からも何か売れる物を提示出来ないとね。それに工作はうちの領地からだけじゃ厳しいでしょ。北西のマトルア伯爵とは仲が悪いし南のラーダンス子爵領を使うしか、いえ、マトルア伯爵領側を使って色々仕込むのも良いわね」
「………………」
「――例えば、マトルア伯爵領側から人を送り込んでアデール王国の田畑を焼き払って、支援を装って商人としての行き来の道筋を作ると言うのはどうかしら。色々詰めて行かないと駄目だろうけど何とかならないかしら」
「いや駄目だろう! 怖えわ!!」
「まあ確かに机上の空論ね。やるのは実際に人を送り込んでから考えていきましょ。アデール王国側はこれで良いとして国内ね。陛下には万が一難病の王族が出た場合の為の保険として、巫女との伝手を得る為と言う事にして頂戴。他の高位貴族も巫女との伝手を匂わせて黙らせて」
「俺に出来ると思うなよ!? 陛下となんて気軽に会えるか!!」
「貴方じゃなくて貴方のお父様にやってもらうのよ」
「確定!?」
「国の未来が掛かっているのよ? 当たり前でしょう」
グランツ様は絶望した表情のままふらふらと部屋を出て行った。まだまだ話しは終わってないのだけど仕方ないわね。
それから数年、計画した物は概ね上手く事が運んでいる。レンリート伯爵領内ではじわじわとリアースレイ精霊王国の商品が流通する様になって商工、傭兵ギルドを領都に建てる事が出来た。
色々策略を仕込んでラージヒルド商業王国の商業、冒険者ギルドの株を下げてから建てたけど。やはりこの国で初のリアースレイ精霊王国の拠点と言う事で抵抗は激しかったわね。
それからはかなりやり易くなった。領主権限を使って後押しをして、人と金を集めて使わせて人材の育成をおこなって行く。領都でリアースレイ精霊王国の事が認知されてから精霊神社を呼び込んだ。
ただ王都ではないからと巫女を招く事が出来なかったのは残念だ。しかし成果としてはルードルシア教王国の神聖教会を、領民を隷属して聖女聖者として使い潰している事実を広めたら暴動が起きて逃亡させる事が出来た。
そうして領内ではリアースレイ精霊王国の施設を次々と建てていく道筋が出来上がって行った。
それから何度かアデール王国に行く中で巫女オリビア様からリアースレイ精霊王国は魔力が多く扱いに長けた者達が多いと聞いた。私も舐められない様に鍛えておいた方が良いと言われたのだ。
魔力の量で差別される事は無いけど高位の身分の者は皆魔力が多いそうだ。そう言う事なら出来る事なら魔力を増やしたい。
それには魔宝石と言う物を使うのが効率が良いそうで、私はダールトンから入手してこれに魔力を籠める鍛練をする様になった。
これは魔力を保存出来る物の一種でその最高峰の物でかなり貴重な品らしく、ダールトンだけでなく巫女のオリビア様の名を使って漸く手に入れる事が出来た程だ。
この魔宝石に魔力を込めたり抜いたりする事で魔力の扱いや保有魔力の上昇に繋がるそうだ。
魔法使いは20人に1人の才能と一般的には言われているけど鍛練すれば10人に9人は使えるそうだ。戦闘での実践レベルとなると2人に1人くらいらしいけどそれも数年単位で鍛練しての話しだ。
ここら辺の国では庶民はそんな事に割く時間は無いし貴族も大抵投げ出すだろう。早熟な才能を持つ者が可能性を感じ鍛練を続けて開花させ、初めて魔法使いになれるのだ。
「周辺国で魔法使いが少ないのは当然ね」
リアースレイ精霊王国では魔力、魔法に関した知識が豊富だけど此処ではそうではない。私が得られた知識も恐らくその一端に過ぎないと思う。
それでも私は寝る時以外は常に魔宝石を使い魔力を鍛えていき、ついでに魔法も覚えていった。
「普通魔力を扱える様になったら大人でも真っ先に魔法を覚えたがる物なのですが貴女は違うのですね」
と何故か巫女のオリビア様には苦笑いされダールトンには遠い目をされてしまった。言いたい事は分かるし興味もあったけど個人の興味で外交のカードを切れる程余裕のある状況じゃなかったでしょ。
それから20年余り、色々工作を仕掛けて引き伸ばして来たけどいよいよ後数年。アデール王国との戦争が不可避の状況になって来ていた。此方の準備はまだ万端とはいかないけどこのレンリート伯爵領くらいは守り切れる様にはなっている。
そしてそんな中、私が切り崩し工作をしている隣のライハルト子爵領シラルの町に聖女が現れたのだ。
曰く、その者は普通の人間には見えない筈の精霊が見えている。
曰く、その者は巫女を超えた大巫女並みの癒しの能力を持っている。
曰く、他の巫女と違い精霊神社の外でもその能力を発揮出来る。
曰く、彼の者は精霊神の加護を持つ者なり。
接触を図ってからと言うもの、次々ととんでもない事態が巻き起こっていく。ライハルト子爵領、レンリート伯爵領に留まらずリア―スレイ精霊王国にまで影響が出ている様だった。
ビアンカお嬢様からの手紙を読むとリアースレイ精霊王国としては認めたくない、しかし精霊神に背く事は出来ない。現れてしまったのは受け入れるしかないと考えている様ね。
けど人間の国にいると言う事は人間の地に精霊神の加護がある様なモノ、それは受け入れ難い事実で何とか自国に引き入れたいと考えているらしい……か。
「想像以上の爆弾ね」
私は魔法で書類整理をしながら口角が上がるのを感じた。
ブックマークや何らかの評価を頂けると励みになるので大変嬉しいです。
これからも宜しくお願い致します。




