第014話 魔法と傭兵と冒険者と
ボロボロになって汗もかいてる。ダルいけど浴場で汗を流さないと風邪引いちゃうな。
『待つのじゃ。本当はまだ早いがそろそろ魔法の練習もしておくのじゃ。スタンピードが起きてからでは遅いでな』
魔法?
『うむ、魔力の通りも多少良くなっておるから今の状態を確認しておくのじゃ』
「ん……分かった」
疲れてるけど、まあ仕方がないか。
被害が出ないように村から出て森の側まで行く。そこで山火事にならないように地面に向けて火の魔法を放つ鍛練をする。
「大気に潜む精霊よ、我が魔力を糧にその火の力を示せ、ファイヤーボール」
おお?
「大気に潜む精霊よ、我が魔力を糧にその火の力を示せ、ファイヤーボール」
おお。
「大気に潜む精霊よ、我が魔力を糧にその火の力を示せ、ファイヤーボール」
うん、確かに発動がしやすい。早くなった気がする。前はファイヤーボールを打つのに8秒掛かってたのに7秒掛からないくらいになってる。
因みにこの呪文、精霊剣の能力で精霊が見えるようになったから、いずれ精霊に力を貸して貰えるかも知れないと妹精霊に教えられたのだ。
お前が精霊だろと思ったけどコイツだけでなく、世界に溶け込んでいる精霊の力があるらしいのだ。
『うむ、精霊を明確に意識出来るのは精霊が見える者の特権じゃからの。これは子供が使う初歩の呪文なのじゃ』
ここでも子供かい!?
『初心者なのじゃから当たり前であろう』やれやれ
元々俺は詠唱無しで魔法を使ってたけどかなり効率が悪かったらしい。
『今回は体調改善と魔力の通りをメインに治療したがそれでもまだまだこれからじゃ。落ち着いたら更に身体の強化に魔力の増加もやって行くのじゃ』
オイオイ大丈夫かよ。自分が自分じゃなくなるとか無いよな?
『呪いの邪剣じゃあるまいしある訳ないのじゃ! 相変わらず無礼じゃのお主は。……とは言えお主が寝てばかりいたのは我が調整に使っておったからじゃ。それが副作用と言えば副作用なのじゃ』
――寝るだけなら別に良いけど。
『スタンピード対策で急いでいるのじゃが、それが終われば普通に睡眠をとっていけば良いのじゃ』
翌日の昼過ぎからパラパラと兵士や傭兵、冒険者がやって来た。スタンピードはまだ起こって無い。人集りが出来ている方に歩いて行くとエリックが他の傭兵達をまとめてた。
「ようアイリス、思ったより皆んなの動きが早いだろ? ウチのギルド長が町長と冒険者ギルドのギルド長を脅したらしいぞ?」
「ふん、それに同行させられた俺はエライ目に遭ったぜ」
若干やつれたサージェスがいた、戻って来たのか。
「んん? アイリス、お前さんまた可愛くなってないか?」
嫌な事言うなよな。村の女達にまでイジられてうんざりしてるんだからな?
「おいおいエリック、傭兵にこんな娘いたっけか? 紹介しろよ」
柄の悪そうなヤツが来た。コイツ確か傭兵ギルドで見た事あるな。確かランク4のグリーストだったか。
「何言ってんだ。こいつアイリスだぞ?」
「はあっ!? アイリス? えっ? あのアイリス?? ええっ? ……いや、確かに……背丈は……でも、ねえだろ流石にコレは!?」
「寝て健康になったらこうなったらしい」
「いや寝たらって……、コレなら俺男でも一晩イケるぞ?」
「ひっ!?」
なんて事言うんだコイツ!! 思わずエリックの影に隠れちまったじゃないか。
「おうおう、何だ可愛い反応するじゃねえか? イケない気分になって来ちゃうぞ? うひひ」
「ひやぁっ!」
ぬぅっと顔を覗かせてきて悲鳴が出てしまった。情け無いけど魔物と違ってこれだけは全く耐性の出来ない恐怖だから仕方ない。
「その辺にしておけ、悪ふざけが過ぎるぞ」
エリックが助けてくれたけど遅い、遅いよエリック。
「ひゃうっ!」
「全く男ってヤツは。こんな小っちゃい子相手に何やってんのよ。大丈夫アイリスちゃん?」
後ろから抱き締められて固まってしまった。でも女の声だったよな? 恐る恐る顔見上げると見知った傭兵の女がいた。ランク3の双剣使いの女で20歳過ぎだったか? 俺より頭一個以上高い飄々とした雰囲気を持つ赤い髪と目の巨乳の女だ。
でもこんなスキンシップとってくる女じゃなかったはず。て言うか胸の鎧が後頭部に当たって痛い。胸デカいんだよなコイツ。
「ミリアーナ……」
「…………ミリアお姉ちゃんって呼んで見ない?」
「……俺、……歳……上」
「うふふっ。フードで隠れてたけど素顔はこんなに可愛かったのねアイリスちゃん、もう堪らないわ!」
全然聞いてない。て言うか力が強い! 全く引き剥がせない!? ううっ、遊ばれてる。――頬にキスするな、顔をスリスリ擦り付けるな。
「――エリックぅ……」涙目
「すまん、俺には止められない」
裏切り者め、エリックはスタスタと逃げて行った。サージェスは……、目を逸らしやがった。グリーストは物欲しそうに見てるだけ、と言うかコイツには助けられたくない。むしろコイツの方が怖いくらいだ。
「きゃあっ!」
何だ!?
「何っ!」「あっ、ちょっ、早い!?」
女の叫び声がした方を向くと抱き付いていたミリアーナにそのまま引っ張られて現場の方に走らされた。
って早い早い! 引っ張るなミリアーナッ転ぶっ、転んじゃうぅ!
「何よ、どうしたのアレ?」
「冒険者が村の女に強引に酒の相手をさせようとしたんだよ」
絡まれた女と絡んだ冒険者達を挟んで牽制してる奴等がいるな。冒険者が8人、牽制してる奴等が3人、その周りを囲ってゾクゾクと人が集まって来てる。
「傭兵如きが黙ってろ!」
「そうだクソが、目障りなんだよ!!」
「アイツ等傭兵なのか。見た事ないけど」
「最近来たらしいわよ。でもあの様子なら余裕そうね」
確かに落ち着いてるな、傭兵の方の3人共。
「何時スタンピードが起こるか分からないのに酒か? しかも村の女にまで迷惑掛けるなんてバカなのか? それとも酒や女に逃げないと怖くてやってられないのか?」
――けど完全にケンカ売ってるな。
「んだと、うらぁっぎゃっ!?」
殴り掛かったアホにカウンターで殴り返して、オイオイいきなり剣を抜いて首筋に突き付けた大丈夫か?
「村の人間に迷惑を掛けるな」
「俺達は命懸けで戦ってやるんだぞ! 感謝を体で払うくらい当たり前だろうが!?」
「「「うわ最低っ!!」」」
周りにいた冒険者や傭兵の女達から冷たい声が飛ぶ。まあ当たり前か。
「はあ、……村の人間は逃げても良いのに逃げずに、戦う俺達の為に食事の用意をしたりして彼等なりの戦いをしてるんだよ。そこに上下の差を付けるなよな」
「しょ、食事くらいで対等な訳ないだろ!?」
「そうだそうだ!」
「なら冒険者は食事を自分で用意すれば良い。村人達は傭兵ギルドの保護下に置く」
人垣からレイク達が割って入って行った。
「なっ何を勝手な事を言ってやがるっ!」
「そうだっ、兵士だって黙ってないぞ!?」
周りにいた冒険者達からも声が上がる。まあそりゃ当然か。自分達は関係ないのに巻き込まれて割り食わされるんだ。
「そう言うならこのバカ騒ぎをお前達が止めていたら良かったんだ。これはそっちのギルド長も了承済みだ」
「なっ、どう言う事だよ!」
場が騒然として来たな。さっさとこの場を離れたい。ミリアーナが離してくれないけど。
足が宙を浮いていてパタパタさせても動かないんだよ?
「そんなに元気ならスタンピードが起きたら真っ先に突撃して貰おうか」
レイクが恐ろしく冷たい目と声で威圧してから去って行った。やっぱり怖いなアイツ。……て言うかこんなんで本当に大丈夫かな。
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