第026話 後日談と日常とステータス
神聖教会では神官達が違法奴隷にされて買われた人達の解放を親族や友人達に叫ばれ対応に苦慮していた。
「クソ、何故我らがあのような目で見られなければならない!」
「全くだ。奴隷如きに余りに不敬であろうに!」
「しかしどうします? 奴隷の家族だかがおかしな噂を広めていて、信徒共まで疑念の目で見て来てますよ」
「どうもこうも放っておけば良い! 奴等に何が出来る訳でもあるまい!」
「しかしリアースレイ精霊王国が裏で暗躍しているのであれば終息はしないのではないですかな?」
「ならばどうすれば良いと言うのだ!?」
「それは……、そう言えば貴族共はどう動くのでしょう? それに商業ギルドも」
「ふん、どちらも精霊王国の商工ギルドと揉めておるわ」
「欲深い事ですな。……確か奴等は土地を欲しておりましたな」
「彼奴等にくれてやるモノ等何も無いぞ!?」
「ええ、ですが我等がこのような状況になっているのは商業ギルドに不良品を掴まされたからでしょう。貴族も同じ被害者ですから」
商業ギルドでは更に混沌としていた。違法奴隷の知人達が騒ぎ立て、神聖教会の神官に貴族の使者までが責任を商業ギルドに押し付けようと詰め寄って来たのだった。
「クソ! 全て儂等の所為にするつもりか!? 買っていたのは奴等じゃろうに!!」
「買い手の要望に応えただけだと言うのにどう言う事なのだ!!」
普段は汚点は他者に押し付けて美味しい所だけ搾取する商業ギルドの長達は初めて搾取される側に回った事を受け入れられず憤っていた。
しかしそんな中にも多少現実を理解している人間もいた。上の人間の我儘に普段から振り回されている様な立場の人間だ。
「平民の目が厳しくなっている状況で貴族や神聖教会にまで離れられるのは不味いでしょう」
「そんな事は分かっておる! それを何とかしろと言っているのだ!!」
今までなら市場を独占していたから何があっても商業ギルドに頼るしか無いと言う強みがあった。しかし王都にのみで言えばリアースレイ精霊王国側の商工ギルドがある為、その強みを充分に活かせない状況になっていた。
その上で神聖教会とこの国の貴族にまで距離を取られると流石にダメージがデカい。更に時が経てば王都以外にも飛び火するかもしれないと言う恐れもある。
「使えない土地をくれてやるのは?」
「王都に使えない土地等無いであろう」
「ええ、ですが土地を寄越せと言われている以上渡さない訳にはいきません。せめてスラム街の飛び地でも渡して有効活用出来ないようにするのです」
「確かにスラム街の土地はあるが飛び地等無いぞ?」
「飛び地と言うのは相手に有効活用されない為に言ったのです。価値の低い土地を飛び地にしてくれてやりましょうと言う話しです」
「んん〜、…………成る程、奴等に何かくれてやると言うのは業腹モノだがこれ以上騒ぎが続くのはな……」
斯くして方針は決まったが、上手くは行かなかった。
当然である。いっ時でも早く解決したいが商業ギルド等と言っても強者の立場でしか交渉した事が無い商人とも言えない商売下手である。相手が受け入れる前提でゴミを渡されても商売敵が譲歩して手打ちになんてする訳が無いのだ。
「スラム街の狭い土地をまばらに渡して済まそうとしたそうですな。建物を建てようとすれば商業ギルドの所有地を侵してしまい土地使用料を取られてしまう……、決裂して当然ですな」
「今回の騒ぎ、治める気がないのですか? そう言えば商業ギルドが発端でしたな」
当然早く鎮静化して欲しい神聖教会や貴族からも更に突き上げられる事になる。と言うより騒ぎが治らない事に怒り心頭で詰め寄っている。
「碌に交渉も出来ずにこんなモノを寄越して納得させようだなんて正気を疑いますな。それとも我々商工ギルドに喧嘩を売ってるのですかな?」
自分達も主犯だろうに、と横目で見ながらダールトンはその勢いに乗って商業ギルドの長を貴族達と共に責め立てていき、結局表通り沿いから続くスラム街の一画を譲渡させる事で話しを付けたのだった。
「大分大きく削り取ったな、これなら違法奴隷の保護の手間を考えてもかなり美味しいんじゃねえか?」
「気軽に言ってくれますね」
商工ギルドに戻ったダールトンは傭兵ギルドの長と今後の対応を話し合っていた。
「賠償は結局我々がする事になるでしょうね。その時に騒ぎの鎮静化を言い含めるしかありませんが、全員を納得させるのは無理でしょう」
「かと言ってほっときゃ何処にだって消されかねないぞ? 平民の命なんて何とも思ってない連中ばかりだからな」
「それに強く言い過ぎると我々も彼奴等と同類だと言われかねないですからね。騒ぎを抑えつつ反感も持たれない様に立ち回らなければなりません」
「ああ〜……、まあ頑張れや。そう言うのは任せるわ」
「何言ってるんです。貴方もやるんですよ。違法奴隷の中には傭兵ギルドの関係者もいるでしょうが」
「うぐっ! ……そりゃ、……確かにそうだけどよ。俺そう言うの苦手なんだよな」
「はは……、まあお互い頑張りましょう」
偶には1人で寝たいもんだなぁ……、と思って昼寝しようとしたけど何か落ち着かない。ここ数ヶ月誰かしらに挟まれて寝てたからなぁ。
主にナージャさんとミリアーナだけど。
そして自室のベッドで寝付けずにウロウロしてたら目敏くビアンカお姉様に見つかってしまった。
「あらアイリスちゃん、今日は1人でお昼寝? ナージャはどうしたの?」
「ん、孤児院」
「あら、1人で行ったのね」
「んっ」コクコク
「ミリアーナは傭兵ギルドに行ってたわね。……仕方がないわね、1人じゃ寝られない様だし一緒にお昼寝しましょうか」
「わーい♪ お姉様好きーー♡」
(ぐふっ! 可愛すぎる。お姉様呼びは真芯に来過ぎるわ!! こんな妹が欲しかったわね。お父様達頑張らないかしら?)
ビアンカお嬢様はお姉様呼びが気に入ったらしい。ごっこ遊びが好きだなんてまだまだ子供だよな。
微笑ましく思いながら我儘を聞いて乗ってあげる事にしたんだ。ナージャさんに教わった通りビアンカお姉様に抱き付いてスキンシップをすると、とても嬉しそうにするのだ。
『分かっていてもそう動けるお主は凄いのじゃ』ジト目
ふふっ、まあな。まあ単純に人と触れ合いたいんだろう。まだ幼いのに貴族の令嬢ってのも大変なんだな。
『…………昼寝自体が子供っぽい行動じゃしの。お主を微笑ましく感じているのじゃろ』
何で俺が微笑ましく感じられる方になるんだよ。大体昼寝はリリィがやらせてるんじゃないか。
『うむうむ、視力聴力はもうええじゃろ。今は魔力関係を寝ている間に引き上げているのじゃ。鍛えている時以外は積極的に寝るのじゃ』
……まあ、寝ていて強くなれるんだから良いんだけど。
だらしない顔をしたお姉様に手を引かれてお昼寝した。お姉様も色々大変そうだし休めて丁度いいだろ。
『だらしない顔って……』
アリーニャさんにビアンカお姉様と寝てたのを怒られた。まあ分かってた事だけどな。けど親元を離れた子供が父性を求めるのは微笑ましいし、代わりに怒られるくらいはしてやるさ。
後ナージャさんが孤児院から帰って「手ごたえは感じましたがまだ足りなかった様です」と肩を落としていて、ミリアーナも傭兵ギルドで「喰い損ねた」と肩を落としてたけど良く分からない。
『分からんでええのじゃ』
あれからお昼寝もビアンカお姉様とする様になった。ナージャさんとミリアーナと寝てたら不満そうに言って来たんだよな。
それから昼寝にビアンカお姉様の所に行くのが日常になったんだけど、何故か俺がビアンカお姉様に甘えてるみたいに受け取られてるんだ。
――やれやれだな。
『――やれやれなのじゃ』
まあそんな感じで朝夕の治癒院で回復魔法、学院で空いた時間に剣術の鍛練、ホリー達と甘味巡りをしながらナージャさんと孤児院に通わされたりする日々を送って2ヵ月半、学期末テストを無事乗り越えて6月半ばから7月いっぱいの夏休みに入った。
アイリス 王都到着日→夏休み前
体力量 11→12
魔力量 24→30
筋力量 13→13
瞬発力 16→16
スキル
魔力操作レベル 019→028
火魔法レベル 014→016
回復魔法レベル 013→025
無属性魔法レベル 008→015
強化魔法レベル 006→012
念動魔法レベル 000→010
[精霊剣魔法レベル1000]
[精霊剣保有魔力 0300]
成人男性平均ー成人女性平均
体力量 20-15
魔力量 5-10
筋力量 20-17
瞬発力 20-18
スキル 魔法使い平均
魔力量 030
魔力操作レベル 025
各属性魔法レベル023
筋力上がらないなあ。此方に来てから2ヶ月半か、ちょくちょく確認してたけど体鍛えてんのにどうなってんの?
『うぬぬ、リリィもここまで適正が無いとは思わんかったのじゃ。しかし魔法使いとしては魔力量も操作レベルも1人前、回復魔法も1人前レベルになったのじゃ』
筋力は無理なのかな? 夏休みは副都の迷宮に潜れる事になったし魔法を鍛えるかなぁ。
『いやいや、剣技の技量は上がっておるのじゃ! 身体強化魔法で幾らでも補えるのじゃ、諦めるでないわ!!』
……必死だな。まあ精霊剣としては剣として使って欲しいんだろうけど。
次話から幼少期のシャルロッテ視点の幕間が5話、レイク視点でアイリスと別れた後の幕間が5話入って第5章に進みます。
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