第023話 アルタード伯爵家の招待
一旦屋敷に帰ってから馬車に乗ってアルタード伯爵家に向かう。今日はビアンカお嬢様と俺、それにヒストロスさんに何故か商工ギルドのギルド長のダールトン様ともう1人知らんおっさんが乗って来てる。
「ねえナージャ、席は空いてるのだからアイリスちゃんを抱っこしなくても良いんじゃないかしら?」
「ふふ、嫉妬ですか? お嬢様も抱っこして差し上げましょうか?」
「そんな訳ないでしょ! 気が削がれるのよ! これから行くのは敵国の貴族家なのよ!! 何で貴女は満面の笑みなのよ!?」
「ビアンカお嬢様落ち着いて下さい。ダールトン様がいますから大抵の事は大丈夫でしょう」
「ええ、お任せ下さいビアンカ様」
「全く、連れて来るつもりは無かったと言うのに、貴女がどうしてもと言うから同行を許したんですからね? おかしな事はしないでよねナージャ」
「かしこまりましたビアンカお嬢様」
俺に頬ずりしながら言っても説得力が無いぞナージャさん。
馬車で15分程、貴族街の中心近くにアルタード伯爵家はあった。大きさはレンリート伯爵家よりやや大きいくらいか。まあレンリート伯爵家のお屋敷は別邸だけどな。
「ようこそ、私がアルタード伯爵家当主のレルードス・ウル・アルタードだ」
「アルタード伯爵家3子、長女のマーブル・アルタードです。本日はお招きに応じて下さって感謝致しますわ」
屋敷の中に案内され別室でお茶を飲んで休憩していると執事と侍女さんを引き連れてマーブルお姉様とその父親っぽい人が入って来た。マーブルお姉様はつり目で勝気な感じに見えるけど父親? の方は似てはいるけど神経質そうな感じだな。
「いえ、お招き頂きありがとうございますわ。フォシュレーグ王国レンリート伯爵家3子、長女のビアンカ・レンリートですわ」
「私はアデール王国王都商工ギルド長のダールトンです。本日はお話しを聞いて伝統あるアルタード伯爵家と良い繋がりが出来ればとビアンカお嬢様にお願いして参加させて頂きました」
「私は傭兵ギルドのギルド長をしているゲルトランドです。隣りのダールトンと同じく厚かましいお願いですが宜しくお願いします」
「お、おお、両ギルドとは私も良い関係を築きたいと思っていたのです。宜しく頼みます」
「はい、此方こそお願い致します」
「こほん、……お父様。此方が私を助けてくれたアイリスさんですわ」
「おお、そ、うか……? その方が??」
「こう見えてとても強いんですよ? 4人の悪漢をあっという間に倒してしまいましたし、入学試験の時も騎士の方を倒してしまったらしいですわ。それに剣術の授業でも、教師も誰も敵わない程なのだそうですのよ?」
「ほ、ほう? それは……、凄いな。いや、娘を助けてくれて感謝するぞ、おい」
「はっ、此方を……」
執事の人が持っていた袋を俺に渡して来た、って重っ!
「持ちましょう」
ちょっとよろけたらナージャさんがヒョイと持ち上げた。くっ、軽そうに……。
「娘を助けてくれた礼だ、受け取ってくれ。ビアンカ嬢、貴女には父上に後日礼状と共に贈らせて貰おう」
お金か? お金だよな? あの重さならかなり入ってるよな? ねぇねを買い取ったお金を補填出来るかな。
「ええ、私からもお父様に伝えておきますわ」
「では暫し歓談していてくれ。マーブル、お相手を頼んだぞ」
「はいお父様」
マーブルお姉様と侍女さんを残しておっさんと執事は出て行った。そしてビアンカお嬢様のところに来てお礼をした。
「改めましてビアンカ様、貴女の家臣に窮地を助けて頂きました。ありがとうございます」
「ええ、家の者がお役に立てた様で嬉しいわ。大事なくて良かったですわね」
「はい、アイリスちゃんも改めてありがとうね」
「んっ」コクリ
「サルマトール閣下、商工傭兵両ギルドのトップが来ています。ビアンカ嬢が連れて来ました」
「何だと! ……くっ、それでは……」
「如何致しましょう? 当初の予定通りに進める訳には行きませんよね?」
「分かっておる! そもそも貴様がっ。――いや、それも無理な話しか。しかしこのままではな。傭兵ギルドがお前の名を使って此処ぞとばかりに奴隷商への監視を強めてる。貴族が関わっていたのだ、いずれ此方にまで飛び火するぞ」
「はい、此処らで幕引きを図りたいのでしたが……」
「うむ、兎に角奴等がどこまでやるつもりなのか聞き出さねばならぬな」
「はい」
「場合によっては此方も考えねばならんな」
「儂はサルマトール侯爵です。アルタード伯爵家とは付き合いが深くてな、めでたい席と言う事で是非とも参加してくれと言われたのですよ」
「そうなのですか、私共はビアンカお嬢様の付き添いとして参加させて頂いております、宜しくお願い致します」
食事会は直ぐに始まった。けど何かピリついた空気を感じる。まあ危険がある訳じゃないようだし俺には関係ない、ご飯に集中するか。
「しかしマーブル嬢が大事無くて本当に良うございましたな」
「ええ、ありがとうございますダールトン様」
「しかしやはり許せませんな。民を導くべき貴族が率先して道を踏み外すなど、それに協力する商人達にならず者共もですがな」
んんー、肉が大きい、これスイーツ出るよな? スイーツまでお腹を残しておきたいんだけど残して良いかな?
「はは、ダールトン様はお優しい、それともリアースレイ精霊王国の気風ですかな」
「確かに、しかし起こる波が大きければその守るべき民まで溺れてしまう事もあるでしょう」
「そうですな、サルマトール侯爵の言う通りだと思います」
サルマトール侯爵はそう言って、だからそろそろ手を引けと言う事を暗に示している、しかし――。
「それで溺れる民とは少なからず関わっているのでは? それならば自業自得と言うモノでしょう。私達は無辜の民の支持を受けていますからな。寧ろ中途半端な真似をしたらその民の支持を失ってしまいますよ」
「……止めるつもりは無い……と?」
先程からの会話でサルマトール侯爵は内心怒り狂っていた。サルマトール侯爵自身が違法奴隷と関わっている訳ではない。だがこの国の貴族は皆商業ギルドとは深い付き合いがある。敵対派閥の事とは言え商業ギルドからは火消しに協力する様に再三圧力が掛けられて来ているのだ。
自身には民の支持など必要無いと考えているし、当然ダールトン達も同じ考えだろうと考えている。しかし敵対派閥や商業ギルドに貸しを作れると乗り込んだらコレである。
「我等はあくまでも民間の組織、民の支持を得られぬ行動には民を納得させられる理由が必要なのですよ」
故にコレは自分達、この国を使ったリアースレイ精霊王国とルードルシア教王国、ラージヒルド商業王国との代理戦争なのだろうと考えに辿り着いたからだ。
まあ、豪華だったかな。派手な皿に綺麗な料理、量も増し増しでお腹いっぱいだよ。
「ビアンカお嬢様、追い出されてしまいましたね」
「仕方ないわね。マーブル様も参加されない様だし。私も直接関わった訳でもないからお父様なら兎も角、私じゃ引くしかないわよ」
「まあヒストロスが一応グランツ様の代理と言う事で参加しておりますし、ダールトン様達なら悪くはなさらないでしょう」
「ええ、任せるしかないわ」
「ところでアイリスちゃんがマーブル様にお菓子のお土産をねだってますが宜しいのですか?」
「〜〜あの子は!?」
今は別室に子供達と通されてお茶とお菓子を出されてる。お腹いっぱいで食べれないけどな!
だからお土産に持って帰りたいってマーブルお姉様に言ったらビアンカお嬢様に渋い顔をして止められた。
「分かったから。お菓子は屋敷に帰ったらあげるから、もう持ち帰るなんて言わないで頂戴」
「あらあら、お菓子くらい良かったですのに」
「いえいえ、そのお気持ちだけで充分ですわ、ふふふっ」
うーむ、屋敷でお菓子が貰えるなら我慢してやるか。まあマーブルお姉様もビアンカお嬢様も仲良くなって良かったしな。
『牽制し合っている様にしか見えんのじゃがの』ボソッ
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