第021話 その後の影響とナージャとデート?
商業ギルドでは先の誘拐騒ぎについての話し合いが続いていた。
「クソッ、ゲネッテ伯爵家まで調査の手が入ったぞ! 奴隷商も1つ潰されたし他にも貴族派の奴隷商まで身動き取れなくなっている!! どう言う事だ!?」
「ゲネッテ伯爵の所の馬鹿ガキがアルタード伯爵家の令嬢を拐おうとしたからだ。此方に任せていれば万全の体制でやってやったと言うのに愚かな事を!」
「せめてアルタード伯爵家がゲネッテ伯爵家と同じ派閥なら何とか穏便な解決も出来たのだがな」
「最早ゲネッテ伯爵家等どうでも良い! これ以上飛び火して堪るか!!」
「非合法奴隷の売買も実質止められてしまっているからな」
「アルタード伯爵家が頑なのだ! 我等が間に入ってやると言っているのに首を縦に振らん!!」
「ここまで我等に被害が抑えられないのはおかしい。リアースレイ精霊王国が裏で暗躍しているのではないか?」
「ううむ、監視は奴隷商だけではないぞ? このままでは戦時物資の輸送にも影響が出る。フォシュレーグ王国との戦争は遅らせねばならんな」
「庶民の商業ギルド離れはどうするのだ? 客も減っているが商工ギルドに乗り換える店まで出て来ているぞ」
「これでは戦争を起こして両国を分断させて、リアースレイ精霊王国のフォシュレーグ王国入りを断たせても本国の我等の評価は下げられるぞ」
「ううーぬ、やはりこの国でリアースレイ精霊王国の力を削がねばならんか」
「くそぅ、何故このタイミングで貴族の令嬢の誘拐なんてしやがるんだ! しかも失敗なんてしやがって!!」
「たった1つの事件で大幅に計画が狂ってしまったな」
アイリスが関わらなければマーブルの誘拐は成功してしまい奴隷商、商業ギルドに手が及ぶ事も無く戦争準備も行われていた事になる。国家間の戦争にまで影響を与えていた事を知れば多くの人が戦慄を憶える事だろう。
「ゼルアス侯爵を丸め込んで国軍共と繋げたと言う所でコレか。忌々しい」
「神聖教会も動きを同じくしていたと言うのに、コレで足もとを見られるでしょうな」
この会話を第三者が聞いたら暗躍してるのはリアースレイ精霊王国ではなくお前等だろとツッコミを入れるだろう。
ところ変わって神聖教会でも同じような会話がされていた。
「しかし戦争が遅れるとは、精霊神社を叩く好機と思ったのだがな」
「我等を非難する者共もいるとか、我等は奴隷を買っただけ。違法かどうか等知らんと言うに全く、神をも恐れぬ何と無知な者共か。あり得んぞ」
庶民からすれば清廉であるべき教会の人間が奴隷を買っている時点で問題だと見られているのだが、彼等にはそこまで考えが至らないのだった。
「サルバルト第4王子に王太子殿下にも話しを通してしまったと言うのに、……如何しますか?」
「商業ギルドの所為だと言うしかあるまい。サルバルト第4王子は獣人に直接やられてるから抑えるのが大変だがな」
「全く、商業ギルドの連中も情け無い」
「然り、奴隷の提供すらまともに出来んとは嘆かわしいですな」
「奴隷等消耗品に過ぎないと言うのに、我等に使われる事の崇高さを分かっていないのです。知っていれば神に逆らうような不敬な真似が出来る筈が無いのですから」
神聖教会の言う奴隷とは生死すら自由に出来る違法な奴隷の事である。これまた第三者が聞いたら嘆かわしいのはお前達だと言うだろう。
アイリスの介入によって貴族令嬢の誘拐事件が表沙汰になり、更にリアースレイ精霊王国の圧力が掛かった。
それにより違法奴隷の件が商業ギルドが主導で多くの貴族に神聖教会も買い手として名が上がっていた事が判明。多くの国民から反発が起き、互いに火消しに忙殺される事になったのだ。
ビアンカと父親のグランツがその事実を知ったらアイリスに感謝するのか恐怖するのか……、少なくとも心労と言う痛撃は与えられる事にはなるだろう。
エリカちゃんも学院に復帰して皆んなの日常生活が戻って来た。俺も変わらず治癒院と学院に通いながら剣や魔法に楽器の練習をしている。ただ最近治癒院でこの間の事があった所為か、フードで顔を隠しながら手当てしていてもキラキラした目で見られたりするのが増えてきた。
こうして毎日使っているお陰か自前の回復魔法でも一般の回復魔法使い並みの能力が付いて来たと思う。それでも回復魔法は正確な診断が必要だからリリィ任せになるけど。
『お主も中々正確な診断が出来るようになっておるのじゃ。じゃがリリィとしてはもっと戦闘に力を入れて欲しいのじゃがな』
いやいや、充分鍛練してるだろ。朝夕の鍛練に学院でも抜けられる授業は抜けて鍛練に回してるんだぞ? 身体強化魔法だって使えるようになってきたしな。
『うむ、しかしまだまだ練度を上げていかねばの。ただ実戦で使えたと言うのは大きい、褒めてやるのじゃ』
あんな雑魚相手に何言ってんだよ。寧ろあんな雑魚相手なら魔法無しで簡単に倒せるようになりたいな。
『何を言うておるのじゃ。魔力はまだまだ伸びる。寧ろ息をするように自然に使い熟せるようになるべきなのじゃ。魔力消費など気にしなくて良いのじゃ』
それお前からの魔力回復ありきの話しだろ。気持ち悪くなるからイヤなんだけど?
『命には変えられんじゃろ。それにリリィが褒めたのは実戦で使えた事なのじゃ。鍛練で出来ても実戦は駄目なんて良く聞く話しじゃろ』
アホか、それこそ今更だな。魔物相手に戦ってるし人殺しだって初めてじゃないんだぞ。10代の頃は良く襲われて返り討ちにしてたからな。
『……良く勝てたのぅ』
……相手が体目当てだからな。殺されない事は分かってたし何か知らんけど相手が油断しまくってたんだよな。
『(今でさえ10歳くらいにしか見えないのじゃ。当時なら油断するなと言う方が無理があったのじゃろうな)』
まあ当面の目標は無属性魔法だな。見えない魔力弾に魔力盾が使えるようにならないと、いつまでもリリィ任せって言う訳にもいかないからな。
そして休日の早朝、何時も通り治癒院に行ってから屋敷で剣と魔法の鍛錬をした。
今日は夕方からマーブルお姉様の家にお礼がしたいとかで会食にお呼ばれしてるから、それまでナージャさんに連れ回される事になった。
「さあアイリスちゃん、ぬいぐるみを買ってあげますからデー、お外に行きましょうね♪」
ナージャさんは本気で俺がぬいぐるみを欲しがってると思ってるのだろうか? 正気か?
『お主が否定せんからじゃろ』
だって何か怖いんだもん。そうして初めにデパートのおもちゃ売り場を見た。
「うーん、やっぱりフランさんのお店の方が質が良いですね。行きましょう」
それから再度フランのお店に行って1つキープしてから幾つか店を回って行ったがナージャさんが納得出来る物は無かったようだ。
『いや、お主と王都を回りたいから振り回しとるだけじゃないかのぉ』ボソッ
お昼になってデパートで食事、何か小分けに色んな料理が入ってる豪華なヤツだ。ご飯に旗が刺さっているのは何か意味があるのか?
『お子様ランチと言っておったのじゃ』ボソッ
それにしても歩き回ったり次々ぬいぐるみを抱かせられたりするのは剣や魔法の鍛練とは違う疲れが出るなぁ。
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