第017話 エリカの家へ
「アイリスちゃん、昨日は本当に助かりましたわ。ありがとうございます」
「んっ」コクリ
マーブルお姉様の家に食事会に誘われたらしいけど、当然その前に学院で会うのである。今はマーブルお姉様の侍女さんに連れられてサロンでお菓子をご馳走になっている。
マーブルお姉様と取り巻きの少女達、そして侍女さん達。見事に女だらけだな、あむあむ。しかし昨日は俺に忌避感? を抱いていたみたいだったのにこの変わりよう、子供でも女は強いって事かね、あむ。
『お主が赤子みたいにナージャに抱っこされながら大泣きしてたからのう。そりゃ忌避感も何も無くなるのじゃ』
誰が大泣きしたって言うんだ。あんなもんが俺の本気の大泣きの訳ないだろ、んく、んく。
『何の自慢なのじゃ?』
リリィが何故か呆れたようにジト目で見てくるけど、断固大泣きしたなんて事実は大人として否定させて貰うぞ? もぐもぐ。
「本当に、この子が誘拐犯を倒したんですか?」
「ええ、4人もいたのですがあっと言う間でしたわ」
マーブルお姉様が誘拐された事は箝口令が敷かれているけど此処にいる人達は知ってるようだ。あむ、もぐもぐ。
因みにホリー達は今日は休んでいる。流石に誘拐されたのはショックが大きかったようだ。んっ、サクサク。
その点マーブルお姉様は気丈に振る舞っているな。ただ何時もより抱っこがキツいんだが?
『昨日の今日じゃ、そのくらい受け入れてやるのじゃ』
分かってるよ。ビアンカお嬢様も休むと変な噂を立てられかねないからマーブルお姉様は無理してでも出て来るかも知れないって言ってたからな。もぐもぐ。
大人として傷心の子供の我儘くらい受け入れるさ。あむ、んっ、んっ。
『少女に世話を焼かれる幼児にしか見えんのじゃがな。そろそろ食べ過ぎではないかの? お菓子でご飯が食べられなくなるのじゃ』
誰が幼児だ。
ふっ、ご飯なんてとっくに食べられないぞ? 今日はマーブルお姉様を慰める為に相手して食べてるんだ。そう言えば許されそうだろ? ナージャさんも何も言わないし。
その後もお菓子を食べ昼食を抜いて帰ったらヒストロスとアリーニャに怒られた。更に当分屋敷でのお菓子を禁止にされた上、買い食いも許可制になって大泣きする事になった。……解せん。
『これがお主の本気の大泣きか』
リリィが戦慄したように何か呟いていたが俺の耳には届かなかった。
翌日ホリーとフランは学院に来たけどエリカちゃんは来なかった。まだショックが抜けてないようだ。
そこで元気づける為にパジャマパーティーとやらをする事になった。皆んなでこの前買ったパジャマとそれぞれお菓子を持ち寄って行くらしい。
ビアンカお嬢様にナージャさんが話したら許可してもらえたのだ。
「そう言う理由なら仕方がないわね。でもナージャ、余り羽目を外させないように目を光らせてね」
わーいわーい、おっ菓子おっ菓子♪
「アイリス、落ち着きなさい」
思わず頭を左右に揺らしているとヒストロスさんに頭を抑えられて怒られてしまった。でもこれでお菓子を沢山食べられるぞー!!
『(ここで調子に乗ってまた怒られるのが目に見えるようなのじゃ)』呆れ顔
ビアンカはその様子を頭を抑えながら見る。瞳をキラキラさせて嬉しそうにしてる様は天使を思わせると言うのに。
(次々と問題を起こしている自覚はあるのかしら。怒鳴りつけたい所だけどお菓子くらいでそんな笑顔向けないでよね。――可愛いって狡いわ)
エリカちゃんの家はデパートの裏手にある社員寮だそうだ。学院を終えて夕方にデパートでホリー、フランと待ち合わせてからエリカちゃんの社員寮に向かう事になった。
因みに今日もナージャさんとミリアーナが侍女服でついて来てる。ヴェルンさんは傭兵と徹夜で周囲を警備するらしい……大変だな。
『(お主を守る為じゃろが、自覚が無いのじゃろうな)』
「社員寮って初めて見ました、大きいですね」
フランの言う通りにデカい、デカ過ぎる。デパート程じゃ無いけど同じく5階建てで此処に住むとなったら幾ら取られるのか予想もつかない。
「それがダダなのよ。目先の利益しか見てない商業ギルドじゃ考えられないよね」
「確かに、でもそれでやっていけるんですね」
社員寮には基本的に社員と家族しか入れないからエリカちゃんのお母さんに迎えに来てもらってフランと話してる。
「エリカちゃんはちょっとね。外に出る踏ん切りが付かないみたいで。事が事だけに無理矢理って言うのも可哀想で困ってたのよ。元気づけてくれるとありがたいわ」
「はい、皆んなその為に来ましたから。ねっ、皆んな?」
「はい、頑張ってエリカちゃんを元気づけます!」
「んっ」コクリ
俺がビビらせちゃったからかも知れないしな。……拒否されなければ良いけど、ちょっと不安になって来た。
「エリカちゃん、皆んな来たわよ。ママは仕事に戻るからちゃんと相手するのよ! じゃあ皆んな、夜には戻るからよろしくね?」
「「はい」」「んっ」
エリカちゃんのお母さんはエリカちゃんを無理矢理部屋から出して挨拶だけして仕事に戻って行った。
「エリカちゃん大丈夫?」
「大変だったもんね? 私もお母さんに心配されて暫く休むように言われたのよ?」
ホリーとフランがエリカちゃんを慰めるように話し掛けている。俺には無理だなあ。良い年のおっさんが少女達の輪に入ってく? 無理無理、元々人見知りだし口下手だし。
て言うかやっぱりエリカちゃん俺と目を合わさないよな? 避けてると思う。――と思ったら何故かナージャさんとミリアーナが手を握って頭を撫でたりして来た、何だ?
『避けられて落ち込んでいると思ったんじゃろ』
「社員寮って豪華ですねー。社員皆んなこんな部屋に住めてるんですか?」
「そっ、そうよ。1階に社員食堂とお風呂があって各部屋に台所も付いてるんだから」
「お風呂もあるの!? すっごぉい」
「ふっ、ふふん。そうでしょ? 自分の部屋だってあるんだからね。見せてあげるわ」
ホリーとフランはエリカを落ち込んでいたら誉めて調子づかせようと話していた。アイリスに相談しなかったのは言わずもがなである。
エリカちゃんの部屋は白を基調にピンクが所々にあしらわれた可愛い部屋だった。
「うわぁ、可愛い部屋ですねぇ」
「ぬいぐるみがいっぱいでエリカちゃんらしいです」
「……アイリスちゃん、その子気に入ったの?」
3人が仲良さげにしていて所在無いなと思ってたら突然エリカちゃんに声を掛けられた。
「そんなに気に入ったんなら、あ、あげても良いわよ?」
何言ってんだ??
『お主がぬいぐるみを抱きしめて頬ずりしてるからなのじゃ』
うえっ!? いつの間に?? 怖っ!?
「だっ、駄目です! アイリスちゃんのぬいぐるみは私が! このナージャがアイリスちゃんと買いに行くのですから!!」
「……そ、……そう」
ナージャさん? 皆んなドン引いてるぞ?
エリカは恨めしげにナージャを見ていた。賊に対したアイリスに怯えはしたけど当然感謝もしてる。
直接お礼を言うのは恥ずかしいが、だからこそぬいぐるみが気に入ったなら話すきっかけにもなるし、あげてもお礼になるから丁度良い。――と思ったらコレである。
ブックマークや何らかの評価を頂けると励みになるので大変嬉しいです。
これからも宜しくお願い致します。




