第015話 ある休日の……デート? 反抗、殲滅
大きな音と複数の叫び声が聞こえてきた。どうやら突入を選んだようだな。
「なっ、何だ!? 何が起こっていやがる!!」
「敵! 侵入者じゃねえか!?」
ドタドタドタ「おいお前等敵だ! 衛兵が来た! 人質を取れ!!」
上から降りてきたチンピラが声を上げ牢屋を開けようと鍵を開ける。うーん、1人増えて4人になっちゃったな。
実力が分からないしマーブルお姉様達に動かれる前に片付けちゃおう。油断してるだろうしイケるだろ。リリィ、フォロー頼んだぞ?
『任せるのじゃ!!』
「おら来っプアッ!?」
チンピラが牢屋を開けた瞬間に麻袋を投げつけ精霊剣を抜いて胸に突き刺す。深々と突き刺さり脱力したチンピラを後ろのチンピラ3人の真ん中の奴に蹴り飛ばす。
「うわっ!?」「コイツッ!?」「おい武器を持ってるぞ!!」
相手が混乱してるのを無視して、その勢いのまま左側の片手剣のチンピラに潜り込むように下から胸に突き刺す。
「ぐふっ!?」
後2人、右側のナイフ男は混乱から立ち直ってそう。なら蹴り飛ばした男を退けて、まだ態勢を整えてないもう1人の片手剣の男目掛けて俺は再び突きを放つ。
突きはこの細剣を手に入れてから1番力を入れて鍛練した剣技だ。それに加え、漸く使え出した身体強化魔法で瞬発力を引き上げた突きだ。男は後ろに飛んで避けようとしたが、それよりも速く腹に精霊剣が突き刺さっていった。
「ぐっぶぁっ!」
ぶっちゃけ鍛練の成果が出たと思えて嬉しかったけど、まだナイフ男が残っているから油断はしない。
相手を牽制するのに余裕があるように見せる為、ゆっくりとナイフ男の方を見ながら精霊剣に付いた血を払った。
「なっ、何なんだお前! 何なんだお前はぁっ!?」
俺に恐怖してる??
……良いな。今まで侮られる事はあってもこんな風に恐れられるなんてなかったからな。ちょっと興奮しちゃうな。
「チッ!」
ナイフ男は落ちてる剣を拾って俺に投げつけた。リリィのお陰で上がった視力で良く見える。投げられた剣を精霊剣で軽く払ってナイフ男を目で追う。
ナイフ男は横を抜け牢屋に入ろうとしていた。人質を取るつもりか!?
完全に油断した。逃げるか向かって来るかと思っていたのに俺に対して人質を取ろうとするなんて考えた事も無かった。リリィッ!!
『任せるのじゃ!!』
俺は全力で精霊剣をナイフ男に投げつけた。正直俺の力じゃ刺さる筈が無い。けど精霊剣の保有魔力を消費すれば鍵を切れると言うくらいだ。人に刺さるくらい切れ味を出すのも訳ないだろう。
その予測通りナイフ男の背に精霊剣が深く突き刺さり男は崩れ落ちた。これで全員倒したか。
一息ついて牢屋の中を見るとホリー達やマーブルお姉様達が引いてる。俺に対する怯えが感じられるな。まあ目の前で人殺してるからな。
『気を抜くでないのじゃ! まだ上に敵はいるのじゃぞ!? 早くリリィを抜くのじゃ!!』
おっと確かに、慌てて精霊剣を引き抜いて階段前に張り付く。上手く引き抜けなくてリリィの力を借りたのは内緒だ。
『うむ、まあ大勢は決まっておるがの。今ナージャが下りて来るのじゃ』
何だよ、なら慌てる事ないじゃないか、早く言えよな。
『お主の気構えが出来ておらんからじゃ』
うぬぬ、確かに、それを言われると何も言えない。
『まあそもそもこの状況下でマーブルの膝枕で眠りこけてるのがおかしいのじゃがの』ボソッ
階段を離れて精霊剣に魔力を通し、血を落として綺麗にしてから鞘に収める。久しぶりにしたけど便利だよなこれ。
ガタガタッ「皆んな大丈夫!!?」
殺気を撒き散らしながら下りてきたナージャさん、怖っ、えっ? 何これ??
ちょっとびっくりしながらも一応両手を軽く上げて抵抗の意志が無いを示しているとナージャさんは周囲を確認してから笑顔でこっちに来た。
「ああアイリスちゃん無事でしたか! 大丈夫でしたか? 怖かったでちゅね~?」
ってナージャさん? 何故抱き上げる? 何故頬擦りする? 相変わらずだなこの人。
『お主が両手を広げて迎え入れたからじゃろ』
「ちょっとナージャ、今それどころじゃないでしょ! 全く、皆んな無事なね」
おっと、ミリアーナにヴェルンさんも来たのか。上はもう大丈夫そうだな。――ところでミリアーナ、お前はお前で何故無事を確認するのにベタベタ触るんだ?て言うかワンピースを捲り上げるなコラ。
「ナージャ、他のお嬢様方を牢屋から出して差し上げ下さい。ミリアーナ、アイリスは怪我をしていないようですので脱がさなくて大丈夫ですよ?」
ヴェルンさんに目で訴えたら止めてくれた。でもナージャさん? 何故俺を抱きかかえながら皆んなを牢屋から出してるの?
皆んな俺に怯えていたから反応が怖くて顔を見れないんだけど? まあ顔を隠すのに丁度良いか、ナージャさんに抱きかかえられたまま顔を埋めて隠れよう。
「あらあらアイリスちゃん、怖かったんですねぇ〜? もう大丈夫ですよー? ふへへ」
気持ち悪いわ! 何だよふへへって!?
「上の誘拐犯達の制圧は終わりましたが、……此処の敵はアイリスが?」
「んっ、倒した」
ヴェルンさんの問いにナージャさんに抱きかかえられ顔を埋めながら答えると何か考え始めた。
(全員突きで倒しているようですね。危機に陥っても戦える。相手を殺せると言うのは大きい。まあ対等以上の相手にどうなるかは分からないか)
その後ナージャさんに抱き上げられたまま1階に上がった。でも空気が重い、皆んな暗くなってるな。助かったんだから良いじゃないか、……とは言えないよな。
人を殺した俺に対しても怯えてるんだし、これじゃ今日は甘い物は無理だよな。
『考えるのがそれか』
だって仕方がないだろ? 生かして捕らえる余裕なんて無かったんだから。誘拐犯の多くは生きて捕らえられたみたいだから俺が動かなければ他の奴が殺さずに捕まえられたかも知れないけど。逆にこっちの誰かが被害にあってたかも知れないしな。
『うむ、それは当然じゃ。お主は間違えておらん、良くやったのじゃ』
まあ皆んな怪我が無くて良かったよ。
『うむ』
でもこれでホリー達との買い食いももう無くなるかな、ちょっと寂しい気がする。ああ、それにマーブルお姉様達のサロンでお菓子はもう無理かな? かなり寂しい、泣きそう。
『友情よりお菓子か……』
それはそれ、これはこれ、だろ? それに友情って言うか俺は保護者みたいなもんじゃないか。
『ぷふっ! ――保護者?? お主が??』
……何か馬鹿にしてる?
『っくく――ごほん、気の所為なのじゃ』
「アルタード伯爵家のご令嬢マーブル様ですね」
「はっ、……はい」
「私は傭兵ギルドの職員のラーフィルと申します。折り入ってご相談があるのですが宜しいでしょうか」
「……何でしょう」
「今回の事件ですが、このまま衛兵に預けてしまうと相手方の貴族家から圧力が掛かり事件事態無かった事にされかねません。それにこれまで他にも関わった貴族がいても同様でしょう」
「ちょっと、お嬢様に何をさせる気ですか!?」
「憂いを無くす為にもアルタード伯爵家から傭兵ギルドに調査を依頼、口添えを頂きたいのです」
「分かりました、父に相談してみます」
「よろしくお願いします。今アルタード伯爵家に使いを出していますので暫くお待ち下さい」
「ええ」
マーブルは血の気が引いたまま侍女達に支えられ椅子に腰を掛けてアイリスの方を見た。
明日から04時10分と10時10分に投稿します。
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