第009話 ある休日の……デート? エリカのデパート
学院に通う事になってひと月半、今日は休日。何時も通り早朝治癒院に来て回復魔法の鍛練とお金稼ぎをしてる。治癒院は精霊神社とは離れた場所にあって、重症者は巫女の居るそっちに行くから此処に来るのは主に軽症者だ。
「アイリスちゃんお休みの日まで頑張って偉いわねぇ」
精霊神社からの指導員のお姉さんに褒められるが自分の為だ。患者にも感謝されるがコイツ等のお陰で回復魔法の技量も上がってる。お金も貰えて実に美味しい。
『リリィのお陰じゃろ。リリィの指導があるから的確に魔法を使えるのじゃからの』
「本当ね。それに診断も凄く的確だし、この間の病気の患者さんなんて私達では悪化するまで気付けなかったわよ」
『ほれほれ、此奴もこう言っとるのじゃ』
……分かってるよ。
『軽いのじゃ! もっとちゃんと感謝するのじゃ! リリィの有り難みを分かっておらんのじゃああーーっ!!』
わっ、分かった分かった。有難いと思ってるよ本当。
「んっ、終わり」
「ふわぁ、随分楽になったわ。腰が痛くて起きてるのも辛かったのに。ありがとね♪」
何か色気ムンムンな感じのお姉さんだ。まあお姉さんと言っても20代中頃、俺の一回り下だけど。腰周りはマッサージしながらの回復魔法が良く効く。
これは普段から皆んなにやってるから得意なのだ、えっへん。
「んと、姿勢良くする。骨盤ずれてた」
「ああ〜、ははっ、気を付けるわ」
軽く手を振りながら帰って行ったけどその内また来そうだな。魔力も切れそうだしここまでかな。
「女性患者もアイリスちゃん相手なら嫌がりませんから調整しやすくて良いですね」
「ええ、偶に年頃の女の子が恥ずかしがるくらいかしら。まあそんな子供が来る事自体少ないんですけどね」
治癒院は一日中混んでいる。
軽度の怪我だけじゃなく頭痛だの腰痛だの、元居たライトハルト子爵領なら皆んな我慢する様なものでも、値段の安さから他の領地からも来ていて列が切れているのを見た事がない。
今も百人以上並んでいて俺1人じゃ朝と夜にやって良くて20人くらいが限界だし何の助けにもなってない。それでも皆んな疲れに耐えながら頑張っているから少しでもって思っちゃうんだよな。
『お金だの魔法の技量だの言っとるが本質は甘いのじゃ。何故自分では気付かないのかの?』ボソッ
今日は休みで学院はないから屋敷に戻って剣の鍛練をする。屋敷ではミリアーナにヴェルンさんナージャさんの他にも戦える人達がいるので、休みの日は相手をして貰っているのだ。
でも貴族に雇われているだけあって皆んな強い、俺よりも強いのだ。鍛練には良いけど何か釈然としない。
5月半ば、今日は肌寒いのでお湯を貰って体を拭いた。お風呂は燃料の節約と手間から夜にしか使えないのだから我慢だ。まあ一般家庭じゃお風呂自体無いから贅沢な事だし、今までの生活に比べれば贅沢過ぎるのだから不満はない。
その後ナージャさんに楽器を教わってからホリー達と街を散策する予定だ。……が、着替えがおかしい。
「ナージャさん、……服、違う」
「アイリスちゃん、いつもの傭兵スタイルは浮きます。ホリーさん達に合わせて行きましょうね?」
「んっ、納得」コクリ
白シャツに赤茶と茶色のチェックのベストとパンツ、裾を20cmくらい捲り上げて灰色の靴にパーカーを着た。
『着たと言うより着させられたじゃろ』
むむ、着替えくらい自分でも出来るぞ? させて貰えないだけだ。全く、皆んな子供扱いしやがって。――楽だから良いけど。
『その考えが普通じゃないのじゃがの』
「ん、……侍女服?」
出掛けようとしたらナージャさんと一緒に侍女服を着たミリアーナがいた。
「いやぁ、私も付いて行こうとしたら何時もの傭兵スタイルじゃ浮くって言うからさぁ。けど私そう言う服しか持って無いのよねえ。んでそれなら侍女服があるってなったのよ。どう? 似合うかな? アイリスちゃん?」
「んっ」コク
まあ似合ってはいるかな。胸がデカ過ぎるし奥ゆかしさが欠片も感じないけど。
「ありがとう〜、アイリスちゃん良い子ねえ!」むぎゅう
「ちょっとミリアーナ! ズルい……ではなくアイリスちゃんが苦しそうですよ!? 代わります」
ナージャお前まで抱き付くな、息が出来ん。と言うかミリアーナは何故そこまで付いて来ようとするのか。
「うへへ、10代前半の幼い少女達とのデートなんて混ざらない訳にいかないでしょ?」
「くれぐれも公序良俗に反しない様お願いしますよ? 度が過ぎれば帰ってもらいますからね?」
ミリアーナ……、まあナージャさんに丸投げすれば大丈夫かな。
「分かってるわよナージャ、流石に未成年の女の子達には手を出さないわよ。ただ愛でるだけだから」
「それなら分かります。良いですよね、幼い少女達とのデート」
……やっぱり駄目だコイツ等。
王都は城や貴族街が中央にあって庶民は基本的に通り抜けられない。だから目的地が遠い程、回り道をしなければならなくて邪魔くさいのだ。
貴族街を出て乗合馬車に乗って待ち合わせをしているデパートに向かう。乗合馬車があっても有料だし歩きだと遠くて不便だし、庶民には辛いんだよなぁ。
にしてもナージャさんにミリアーナまでいて何故ヴェルンさんが居ないのか。
「ハーレムみたいになるので遠慮してもらいました」
「?? 男、僕もいる」
「実質アイリスちゃんのハーレムですけど側から見ると完全に埋もれていますから」
「?? 埋もれる?」コテリ
「あらぁ? それじゃ私達もアイリスちゃんのハーレムメンバーになっちゃうわねぇ?」
抱き付くな、胸を押し付けるな、ただでさえ乗り心地の悪い馬車にイライラしてるのに鬱陶しい。
「(くっ、ミリアーナ! 侍女が庶民の目がある所で抱き付くなんて! 注意したいけどそうすると今後私もアイリスちゃんに抱き付けなくなってしまうじゃないの!!)」
待ち合わせしてるデパート前で降りてデパートに入って行く。今日は休日だからか昼前の時間でも親子連れも多くて中々混んでいるな。
「あっ、やっと来た! アイリスちゃんこっちこっち!」
エリカちゃんがやっていると言う洋服店に着くと人混みの中からエリカちゃんが手を振って来るから俺も振り替えす。隣りにホリーも居るな。
……でもあの人混みの中に入って行くの? イヤなんだけど??
「ちょっとぉ、何で来ないのよー!」
「……混んでる」
「もうっ、仕方がないんだから、って何でミリアーナさん侍女服着てんの!?」
「うふふ、普段の格好だと浮いちゃうからね。どう似合う?」
前屈みになって胸を寄せて爆乳をエリカちゃんの眼前に、横ピースしてウインクするミリアーナ。一瞬たじろいだエリカちゃんだけど負けん気が強いのかミリアーナの胸を憎々しげに鷲掴みにして文句を言っていた。
「そんな自己主張の高い侍女なんていないわよ!!」
「あん、大胆♪」
でも確かにそんな侍女はいないと思うな。結局エリカちゃんに腕を取られて人混みの中へ、はあぁ〜ダルいわぁ〜。
『されるがままじゃの』
「全くもう、本当にアイリスちゃんは!」
「いやエリカちゃん、あれだけ混んでたら躊躇うよ?」
「まあ、仕方ないか。でも週末は大体こんなもんよ」
人混みにうんざりしてるとエリカちゃんに文句を言われてしまった。ホリーがフォローしてくれたけど、何故かそれをエリカちゃんが得意気に胸を張っている。
「あらあら本当に可愛い子ねぇ? エリカちゃんが妖精みたいって言うだけあるわね。」
「えへへ、そうでしょママ! 可愛いよねアイリスちゃん!!」
エリカちゃんの母親か、うん、似てるな。胸が無い所とか幼い顔付きがそっくりだ。ギリ10代と言っても通じそうで何か親近感が湧くね。
『別格じゃがのぅ』ボソッ
「うふふ、この娘ったら昨日から明日はデートだってはしゃいでたのよ?でも貴方のような子が相手なら当然よね」
「ちょっとママの馬鹿っ、恥ずかしいでしょ! 言わないでよ!!」
「ふふっ、エリカちゃん照れちゃって可愛いわね」
「もうっ! 行くわよアイリスちゃん!!」
エリカに腕を組まれながら連れ去られてしまった。
「フランは先に来ていて上の本屋さんに行っているんですよ。合流してお昼にしましょうか?」
「んっ」コク
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