第012話 レイク達と鍛練、ってガッカリしない?
朝になってまた軽く走り込んで剣を振るう。昨日の疲れは残ってないな。そう言えば精神的には兎も角、肉体的にはそこまで疲れてなかった気がする。
『まだまだじゃが体のバランスが正された事で疲れ辛くなって来ておるのじゃ。まあお主が寝とる間に調整がてら回復魔法も掛けとるがの』
それ回復魔法の方が大きくない?
『うぐっ!』
いやまあどっちでも有り難いんだけどね?
「熱心ですねアイリスさん、お早うございます」
レイクとエリックが揃って歩いて来た。仲が良いのかな?
「んっ、………………おはよ……」コクリ
レイクには昨日運んで貰ったし挨拶くらいしておかないとな。
「おう。しかしお前、朝練なんてしてたか?」
「剣、…………慣らす……してる」
「俺も日課の朝練です。向こうで仲間もやってますよ」
「俺はゴブリンの事でちょっと落ち着かなくてな」
「何言ってるんだよ。お前が落ち着かなかったら誰がお前の仲間達を落ち着かせるんだ」
コクコク(うんうん、もっと言ってやれレイク)
「あいつ等なぁ〜、いい加減少しは大人になって欲しいぜ」
そう言って頭をかいて苦笑いするエリック。まあアイツ等ももう24・5レイク達より4・5歳も年上なんだしな。後レイクの口調、やっぱり俺にだけ丁寧だな。
「それにしても、何で彼等はアイリスさんにキツいんだ?」
「……ん? …………嫉妬……」
「えっ?」
「嫉妬? ……エリックがアイリスさんに構うからですかね?」
「んっ、……そう」コクリ
「いやいや、だって、えっ? 俺の所為? でも、何でアイリスにだけ??」
「取られるとでも思ったんじゃないのか? 慕われてるなエリック」
コクコク
「いや、でもコイツ今はこんなだけど、町じゃ何時もスッゲー疲れた感じだったんだぞ? 出会った時なんか小さいしスラムの痩せ細ったガキかと思ったくらいだったし、放っとけないだろ」
誰がスラムの痩せ細ったガキだよ失礼だな。まああの時は傭兵じゃなく冒険者だったし、寮も無いからカツカツで確かにやさぐれてたけど。
「今だって昔寝込みを襲われたトラウマでちゃんと寝れてなかったり何時も1人でいたりするんだぞ?」
『まあ今は我のお陰で良く寝とるのじゃがな!』むふん!
まあな。傭兵ギルドの寮でも鍵は付いてるけど、周りは厳つい傭兵ばかりだから怖くて安心出来なかったんだよな。
「それで、今は寝れてるのか? 顔色が良くなって若返って見えるんだけど」
「ん、だいじょぶ」
頭を撫でるな、女を口説くような事言うな。気持ちが悪いぞ。
『我がいれば何かあれば知らせられるから安心じゃろ』
本当はそれが一番大きいんだけど教える訳にもいかないし。誰かに剣が狙われても堪らないからな。
「それはそうと、アイリスさんも俺達と一緒に鍛練しませんか? リックとトマソンと向こうでやってるんですけど」
『それは良いのじゃ。1人でやるより応用の効く力になるからの』
「…………手加減、……する?」上目遣い
「っ――ええ、それは勿論」
爽やかな笑顔を向けて来るけどコイツ脳筋だからな。確認しておかないと信用出来ない。
村の中央で村人に見られながらリックとトマソンが打ち合っている。どっちがリックでトマソンか知らないけど何でこんな目立つ何処でやってんだよ。
「――此処で?」
「ははっ、俺達も隅でやろうと思ってたんですけどね。エリックが戦う姿勢を見せる方が村人が安心するとか言うのでね」
――それ俺が入るとガッカリしない?
「先ず俺と軽く打ち合いませんか?」
レイクが木の棒を渡してくる。俺の細剣に近い感じだ。元から誘う気だったのかね。わざわざ探したか作ったんだろコレ?
俺は持っていた精霊剣を椅子に立て掛けて木の棒を受け取る。
「寸止めで宜しくお願いします」
「んっ」コクッ
俺は半身になって腰を落とし中段に構えてレイクを見る。背が高いんだよな195cm……くらいか? 130cmの俺より頭3個分くらい高い、エリックよりも少し高そうだ。
レイクの武器は片手剣、とは言え俺から見たら大剣だ。それを片手で振り回されると思うと怖い。盾は使わずに小手で代用してる。
隙が見えない。って言っても対人戦なんて数えるくらいしかやって来なかったんだけど。取り敢えずじっとしていても仕方がないか。
軽く踏み込んで棒を振り下ろす、けど軽く弾かれ打ち返された。何とか躱すけど畳み掛けるように打ちつけられる。
「うーん、色々打ち分けているのに反応出来ていますね」
うぐぐ、こっちは力に差がありすぎて見えても両手で何とか受けるだけしか出来ないのに。でもレイクが本気で振ってたら体ごと両断されてるんだろうな。
暫くしてレイクは手を止めて待ちの構えになった。このままじゃ鍛練にならないと思ったんだろうけど、普通に屈辱だぞ。
俺は手を振って腕の痺れをとってから再び構えをとる。もうちょっと相手になるようにしたい。
『身体能力も技量も相手が圧倒しておるのじゃ。スピード勝負などするでないぞ? 勉強じゃ、ゆっくり剣を振っていくのじゃ』
手から離れていても声が届くのかよ。て言うかゆっくりってどう言う事だ?
『この程度の距離ならばの、それよりやってみるのじゃ』
チッ、取り敢えず言われた通りゆっくりと面を打っていく。レイクはそのスピードに驚いたようで防御するだけだった。そのまま胴、再び面と打っていく。
『もっと腰を落とさんか、体が正面を向いておるぞ。ほれ攻撃が単調になってきた。相手をちゃんと見るのじゃ』
五月蝿い五月蝿い、ゆっくりなのに何故か苦しい、攻めても攻めても全く崩せないのにこっちは何度も破綻して剣を突きつけられる。その上駄剣が五月蝿いし。
『誰が駄剣じゃ! 相手の目の動きを良く見るのじゃ。呼吸を感じるのじゃ。足捌きも見るのじゃ。剣だけに意識し過ぎなのじゃ。体全体の動きを意識するのじゃ。ほれ姿勢が悪くなっておるのじゃ』
「あっ」
振り下ろし切り上げようとした所にまた首元にレイクに木の棒を突きつけられた。どういう展開でそうなったかは分かるけど、どうしてそうなったかがまるで分からない。
「ここまでにしましょうか」
「……ん」
くそ~、分かっていたけど全然相手にならない。ちょっと涙が出そう。
「アイリスさんは細剣は誰かに師事しているのですか?」
「…………」フルフル
「いえ、打ち合っている最中、正しい形、教えられた形に持って行こうとしているように感じたので」
『良く見ておるの、コヤツ』
そう言えば……。
「レイク……ランクは?」
「ランクですか? 俺はランク6ですね。リックとトマソンはランク4ですよ」
「高い」
「ふふっ、ありがとうございます」
ランク5から上級者と言われていてランク6はその上。こんな小さな町にはほぼ居ないランクだ。
エリックが30歳でランク5と考えるとレイクは異常、他の2人のランク4だって中堅って言われて20歳前後と考えればかなりの才能だろうな。
「…………死んで良い才能じゃ……無い……」
自分との余りの差に思わず感情を吐露してしまった。
「アイリスさん? ……死んで良い才能なんてありませんよ?」
「ひぃっ、ごっ、ごめんなさい」
怖っ、コイツ怖っ! いきなり周囲の空気が重くなってレイクから何かの圧力を感じた。魔物の咆哮でも受けたかのようだ。思わず縮こまって謝っちゃったじゃないか。
『魔力による威圧じゃの。まあ意識してやった訳じゃ無かろうが』
「ああ、アイリスさんすみません。怯えさせるつもりは無かったのですが」
「イッ、イエ、ダイジョブ、……デスヨ?」
「全然大丈夫じゃないですよね。震えてますよ?」
だったら近づくな、肩を抱くな余計震えるわ!
「アイリス、次は俺とも戦ってくれよ」
「リック、今はちょっと待ってくれ」
「いやいや、お前に怯えてんだからお前が離れれば良いだよ。ほら、お前はトマソンとな」
「そうじゃなくて誤解を解きたいんだよ」
「暫くすれば落ち着くから大丈夫だよ。今はそっとしておけ」
その後どうにかリックの説得に応じて渋々離れて行った。
「大丈夫か?」
「ん、……ダイジョブ」
ちょっと疲れたような返事になってしまった。
「アイツも悪気は無いんだけどな。加減が効かないって言うか何と言うか……」
苦笑いするリックを見る。180cmくらいか、レイクよりは低いけどそれでも頭2個分くらい差がある。武器は槍、今は長い木の棒を代わりに持ってる。
「レイクの威圧の影響が残ってるかもしれないから、初めは受けるだけにするよ。大丈夫そうなら打ち込んで行くから」
コクッ
その後リックと打ち合ったけど中々やり辛かった。中距離は槍の独壇場、内に入っても楽じゃ無い。まあレイク程の理不尽さは感じなかったけど。
更にトマソンとも戦った。身長は190cmくらい? 2人の間くらいだ。皆んな背が高いんだよな。高ランクは体にも恵まれているモノなのかね?
武器は両手剣、重そうな剣だけど今はちょっと長めの木の棒を両手で持ってる。
ガンガン剣を弾かれるんだけど? それ本物の重そうな両手剣で出来るの? ああ、出来るの。腕が痺れて戦闘不能、流石に自信無くすわ。
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