第004話 ある日の朝の日常、騒動解決、解決??
「失礼、この子は望んでいないようなので私からお断りさせて頂きます」
「何だと? 貴様……、卑しき下民の分際で貴族に楯突くつもりか!?」
おお、院長が間に入ってくれた。けどちょび髭親父にはやっぱり通じて無い、大丈夫かな?
「此処は精霊神社の下部施設でありリアースレイ精霊王国に所属します。貴方の言う事を聞く道理がありません」
「道理? ……道理を言うのであれば庶民が貴族に使われる事の意義を説いて仕えさせるべきであろう?」
「貴方の道理は此処では通じないと申しているのです。此処はアデール陛下の許可も得て運営しているのですよ? 異議があるのであれば陛下に申し上げて下さい」
「なっ、ん」
ちょび髭親父が顔を赤くして怒ろうとしたがすぐに青くなって周囲を見渡した。後ろの騎士は剣に手を掛け周囲に警戒しだしてる。
何だと思って周りを見ると職員や患者の人達がちょび髭親父達を睨み付けて剣呑な空気を出していた。
「天使ちゃんは渡さねえぞ」
「貴族だからって何でも言いなりになると思うなよ」
「殺ってやる、殺ってやる」
まだ言うか、誰が天使ちゃんか。
「きっ、貴様等、私の邪魔をしてただで済むと思っているのか!」
「ふう、先程も申した通り此処の運営はアデール陛下の許可も得ています。それでも貴方が口を出すのですね?」
「むうぅ、もう良い! 取り敢えず貴様等は馬車の代金を払え!! 出来なければ奴隷だ!! いいな!!」
「なっ、そんな!」
「それと子供っ! 覚えておれ! 諦めた訳では無いからな!? ここで断った事でどう言う扱いになるか覚悟しておけ、行くぞ!!」
子供じゃないし! もうプンプンだよ!!
『プンプンってお主……』
ちょび髭親父と騎士は囲んでいた職員や患者達をかき分けて逃げるように去って行った。
「へっ、ざまぁねぇぜ」
「貴族だからって何でも通ると思うなよ」
「無関係の天使ちゃんを寄越せとかとんでもねぇよな」
いやお前等何も解決してないからな? 俺はまだ狙われてそうだし馬車に轢かれた家族達だって奴隷堕ち待った無しで今も顔を青くしてるし。
「馬車の件は明らかに向こうの落ち度です。貴方方が望むのであれば我々が間に立ちましょう」
「おっ、おお、……院長様、本当ですか!? おっ、お願いします!!」
「お願いします、私達家族をどうかお助け下さい」
「おっ、おねがいします」
平身低頭、両親に頭を押さえられ幼い息子まで頭を下げて縋り付いている。
「おお、流石院長様だ。クソ貴族とは訳が違うぜ」
「でも大丈夫か? 相手は貴族だぜ? 院長貴族じゃ無いんだろ?」
「大丈夫ですよ」
大丈夫らしい。まあ俺は貴族だの何だのにはなるべく関わりたくないから深くは聞かないけど。
『貴族に世話になっておいて今更じゃないかの』
なるべくって言ったろ。明らかに面倒そうな奴等だったじゃねえか。
『それは否定出来んのじゃ』
その後再度俺の事を院長が皆んなに口止めしてから帰らされた。
レンリート伯爵邸を訪れた治癒院の院長に先程の出来事を詳細に聞いたビアンカは思わず放心してしまった。
「ビアンカお嬢様、お気を確かに」
「えっ? ……ええ、大丈夫よヒストロス」
執事長のヒストロスに肩を揺すられ何とか意識を取り戻したが動揺は取れずにいた。
「まあその貴族の家令と騎士は不幸にも賊に襲われて屋敷に戻れなかったそうなので、其方からアイリス様に関わる事は無いでしょう」
「そう、……それは不幸中の幸い……」
ってそんな偶然ある訳無いじゃない! 口封じをしたのね。貴族絡みの相手に恐ろしい事するわねリアースレイ精霊王国は。……ううん、真に恐ろしいのはそこまでさせてしまうアイリスちゃんかしら。
「はは、あの方は正しく大巫女様のようでした。危うくあの場で感涙して跪いて拝んでしまいそうでしたよ」
こっちは全然笑えないわよ! 治癒院の院長は思い出に浸るように恍惚の表情を浮かべている。まるで狂信者みたいになっていて怖い! もうまともに見れないじゃないのよ!!
治癒院の院長によるアイリスちゃんの勇姿? を更に長々と聞かされ、だんだんと自分の目から光が失われていくのが分かる。何とか話しを聞き終えて帰ってもらい侍女にお茶を貰って漸く一息つく事が出来た。
「やってくれたわねアイリスちゃん。……それにしても何であの子は何も無かったかのように帰って来て普通に過ごしてるのよ」
「それはもう今更でしょう。しかし貴族にアイリスの事を知られるのは取り敢えず抑えられたのは良かったです」
「確かにそうだけど、その口止めも何時まで有効か。それにその貴族の家令と騎士は賊に襲われて屋敷に戻れなかったって言うけどそんなの明らかに口封じじゃない!」
「リアースレイ精霊王国の間者でしょうか、恐るべき迅速さですな」
「…………私が恐ろしいのは寧ろそこまでさせるアイリスちゃんの方よ」
「はは、……確かに。あの治癒院の院長の心酔ぶりは只事ではなかったですからな」
ヒストロスも力なく答えるけど無理もない。確かに貴族絡みの相手を簡単に対処してしまうリアースレイ精霊王国の間者は恐ろしい。普通なら平民が貴族に関わるような事はないのだろうけどアイリスちゃんだからね。
リアースレイ精霊王国もアイリスちゃんに興味津々だからこれからも否応なく関わる事になりそうよね。
窓から剣術の鍛練をしてるアイリスちゃんを見る。
「お父様と同年代と思うとあの思慮の無さにイラついてしまうわね。だから10歳の子供と思って見る事にしようかと思うの」
「…………一応12歳と言う事になっておりますが?」
「それならもうちょっと分別が欲しいわね」
「――流石ですお嬢様」
「何が流石か分からないけど有難う。まあそれで何が解決した訳でもないんだけどね」
「いえ、自分の中で折り合いを付けるのは大事でしょう」
「――シャルロッテが来てくれるのが一番なんだけどね」
「それは厳しいでしょうな」
お父様からの手紙では周辺領主や王都でのやり取りでシャルロッテに連れ回されて大変らしい。延々と愚痴とシャルロッテを手放せない旨を綴られていた。
親子共に呪われているのかしら。
屋敷に帰って日課の剣術の鍛練、立てた丸太に撫でるように斬り掛かる。
『ふむ、大分無駄に当たらずスムーズに撫でられるようになったのじゃ』
リリィがうんうん唸ってる。けどそれが何の役に立ってるのか実感が湧いて無いんだけどね?
『何を言うておるのじゃ。剣の間合いを理解したからこそ無駄な動き、力みが減って相手を見れるようになったし体の負担も減って来てるのじゃ。皆にも褒められておったではないか』
うーむ。そう言われても全然勝てないしなぁ。
『ナージャやヴェルンは元々上位者じゃしミリアーナも身体強化魔法を覚えて伸びまくっておるからのう。彼奴等相手では実感出来んのも仕方がないのじゃ』
うぬぬ、でも毎回力負けするとなあ。
『お主のちんまい体躯ではスピードと技術に特化するしか無かろうて。安心せい、お主は順調に伸びておるのじゃ』
ちんまい言うな。
風呂で汗を流してまったりしてたらビアンカお嬢様に捕まって朝の治癒院の事でめっちゃ怒られた。リリィの所為だぞ。
『違うのじゃ。あんな目立つ事したのはお主の意志なのじゃ。他人の所為にするでないのじゃ!』
あんな洗脳受けて抵抗出来ないんだよ!?
『そもそも怒られたのは朝の件を報告せなんだからじゃろ!?』
そんなの知らない、リリィだって言わなかった。
『…………はあ〜、お主は』
何故か呆れたように見られているけどリリィが暴走しなければあんな事にならなかったんだから俺は悪くない、悪くないのだ。
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