第003話 ある日の朝の日常、日常の中の騒動
「赤……ちゃん、ほ……んとに?」
皆んなが盛り上がってる中ようやく事態を飲み込んだ母親のマリーさんは有難う有難うと泣きながら抱き付いて来た。
いやいや、コイツ等治した所為で俺が危なくなるとか俺が飲み込めねえよ!? どうすんの? どうすりゃ良いの?? 俺本当に危ないの!?
『落ち着くのじゃ。皆が何とかしてくれるのじゃ。単発的な事ならリリィの魔法でどうとでもなるしの』
本当か? 本当だろうな??
『物量で来られたら限界があるがその場合は味方がどうにかするじゃろ、問題無いのじゃ』
……確かに、ビアンカお嬢様に商工ギルド、傭兵に精霊神社、獣人の方々もいるし何かあっても時間を稼げば誰かが解決してくれるか?
「ママ赤ちゃん出来たの? 弟? 妹?」
父親の方は未だ俺に泣きながら祈っていたが子供のラクシス君のこの言葉で我に帰り、周りもやっと家族が助かった事を祝いお祭り騒ぎになった。
『ほれ、父親の方も手当てしてやるのじゃ』
うげげっ! またリリィから清浄過ぎる魔力が! コラッ勝手に外魔力循環すんなよな!! うごご、さっきの回復魔法のダメージも残ってるのに何すんだよ!?
『何を言うておる、ダメージなど無かろうに』
リリィが呆れたように言ってくるけど精神的なダメージがあるんだよ!?
『そうは言うが父親だけ回復させないって訳にもいかんじゃろ。お主の回復魔法だけじゃ治しきれんしの』
うぐぐ、おのれ! こうなったら早く終わらせるしかない。リリィの清浄過ぎる魔力を阻害しないように受け入れていく。ああ〜、気持ち悪い。
父親の肩に手を乗せて回復魔法を掛けていくけどリリィが痛覚を麻痺させながら回復させている。余計な事してないでさっさと治せよー!
ゴキゴキと音をさせながら無属性魔法で骨を合わせていく。父親の方は痛みを感じない事に驚いてるのか唖然としている。子供の方はちょっと怯えてますね。可哀想に、大丈夫ですよ? すぐに治して差し上げますからね?
安心させるようににっこり微笑んでると顔を赤くして俯いてしまいました。小さい子供と言うのは本当に可愛いらしいですね。更に回復魔法で繋ぎ合わせて怪我の手当てを終わらせるとリリが外魔力循環を切りました。
「はい終わりました。家族を大事にして下さいね」
微笑むと何故か父親まで赤面して、それを見たマリーさんにつねられていました。
職員だけじゃなく患者達までまだ喜び騒いでいる。他人の事で何時までお祭り騒ぎを続けるんだよコイツ等。て言うか俺に握手を求めるな、頭を撫でるな抱き付くな。
「お前天使ちゃんに抱き付くな! ボコボコしろ!!」
「うへへ、握手して貰っちゃったよ」
「キモいんだよ! コイツもやっちまえ!!」
「怪我人増やすなよ! 此処は治癒院だぞ!? て言うか変な奴を天使ちゃんに近づけるなよ!!」
そうそう近づけるなよ、って天使ちゃん言うな。ああもう、早く帰りたい。そう言えば父親はお腹の赤ちゃんには気づいてなかったんだな。まあまだお腹はそんなに大きくなってなかったし仕方ないか。
『おいお主、何時まで人妻のお腹を撫でとるのじゃ?』
ん?ああ〜、何か癒し?赤ちゃんがいると思うとねぇ?何か皆んな祈ったり有難がったり握手求められたり居心地悪いんだもん。母親は未だに俺に抱き付いてるし父親は子供を抱いて泣きながらお礼三昧。周りもお祭り騒ぎだし早く落ち付かないかな。
何かリリィがジト目で見てるけど、もう助かったんだし疲れたから帰りたいんだよ?
「静かにせんか! 五月蝿いぞ!!」
「全く、これだから下賤な奴等は……」
おお、誰かが来てお祭り騒ぎを黙らせた。これで帰れるかな? 有り難いね。
何かちょび髭の偉そうな奴が騎士を連れて入って来てる。貴族関係っぽいんだけど俺の命の危機じゃ無いよね? 有り難くないね。
「ようこそいらっしゃいました。私はこの治癒院の院長をしているドートンと申します。どのような御用件でしょうか?」
「ふん、私はナルン子爵様に仕えているベッテンと言う。先程馬車の往来を邪魔した者達が此処に来たであろう。何処にいる?」
「はて? 何の事でしょう」
「惚けるな! 此処に入った事は聞いておるのだ。む? 其奴等か、生きていたなら丁度良い」
皆んな黙って静かになっちゃった。まあ変なのに絡まれたくないからな。
うん? 何かコッチに来てるんだけど?
「ふん、貴様等の所為でナルン子爵様の馬車が穢れた。新調するので2千万イェン出すように」
「なっ! 2千万! そんなっ、払える訳無いじゃないか!!」
「何を言うか! 貴族の馬車を穢したのだぞ? 処刑されて当然なのを金で解決してやると言うのだ。寧ろナルン子爵様の慈悲に泣いて感謝するべきであろうが!」
「そっ、そもそもアンタ等が前の馬車を追い越そうと急に曲がったから……」
「無礼な事を吐かすな!!」
ドカッ「がはっ!」
父親の方が抗議したら男がいきなり殴りつけた。おお、痛そう。て言うか折角俺が治してやったのにまた怪我さすなよ。
「貴族に無礼を働いた上更に暴言を吐くとは……、これだから庶民と言うのは! まあ良い、足りない分は奴隷にでも堕として補わせるから感謝するのだぞ」
「そっ、そんな!」
「うん? そう言えば馬車には相当な血が付いていたのだが……、治っているな」
ちょび髭と目が合った。
「ふむ、お前が治したのか。…………素晴らしい、これ程の腕を持つ者が野に埋もれていたとは……、正に聖女並みではないか! うむ、その方、ナルン子爵家で召し抱えてやろう」
「? ……嫌だ」コテリ
頭おかしいのかコイツは、そんな事頼んでないし、ねぇねに会えなくなるだろが。
「むっ、所詮は下賤か。だが……見目も良いな。…………いや、非常に良い。まるで妖精のようだ。聖女と呼ぶに相応しい。ナルン子爵様もお喜びになるだろう。励むようにな」
あれ? 言葉が通じない?
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