第029話 幕間 コレットチーム、新メンバー
アイリスが拠点にしていたシラルの町、そこでスタンピードが起きた時からシラルの町を離れるまで一緒のチームを組んでいたコレット、ラビィ、ルルの3人はアイリスに会った事で冒険者から傭兵に転職していた。
そして真面目に依頼を受け鍛練も続け、充実した日々を過ごしていた。
そうこうしている内にアイリスと別れてから3ヶ月、時は5月に入っていた。
「おめでとうございます。これで3人共ランク2に昇格です」
「「「ありがとうございます」」」
「やったあ! これで町の外にも依頼で行けるよ!」
「落ち着いてラビィ。無茶はしないからね?」
「分かってるわよコレット。でも嬉しいじゃない? やっとだよ? 3ヶ月も掛かったんだからね?」
「分かったから! ラビィのそのテンションが怖いんだって!」
跳び跳ねんばかりに瞳をキラキラさせてクルクル回るラビィを責任感の強いコレットが周りに迷惑を掛けないように落ち着かせようとしていた。
「ん、ラビィは何かやらかしそう」
「ちょっ、何よルルまで! あぁーあ、2人共すっかりスレちゃって、純真なのは私だけかぁ。アイリスちゃんも草葉の陰で泣いてるよ?」
「いやアイリスちゃん死んでないから! て言うかスレてないわよ何て事言うのよ!?」
今は5月初め、傭兵ギルドに加入してから3ヶ月が経ってランクが1から2にやっと昇格した。冒険者ギルドならランク2になるのはどんな依頼でも10回こなせば良いから10日どころか日に幾つも受ければ数日で上がってしまうのに。
まあだからこそ冒険者はすぐにランクを上げられるけど、荒くれ者や犯罪者崩れのような人達もそのまま高ランクになれてしまってトラブルが絶えないのだが。
それに冒険者ギルドは低ランクの人達に対して補償も何もしないから皆んな何時も金欠で犯罪紛いの行為に手を染め易く、周りから食い物にもされ易い。
「私達が武具を買わされて借金を背負わされたようにね」
「ちょっと思い出させないでよー、トラウマなんだからぁ!」
「分かってるわよ。私だって思い出したくないんだから……」
それに比べて傭兵ギルドではランクを上げるには最低限の読み書き計算は必須、それに加えて人間性を見極める為にこれだけの時間を必要とされるから傭兵ギルドでは驚く程トラブルは少ない。
その上傭兵ギルドでは寮があったり低ランクの傭兵にも手厚い補償を色々してくれるから安全にお金を貯められるのだ。
なかなかランクが上がらない事に焦りを感じてしまう人達もいるけど、そう言う訳で低ランクでも真面目にやれば傭兵ギルドは居心地が良い。
でもまあラビィの浮かれる気持ちも分かるんだよね。私達には目的があるんだ。ランク3に上げてアイリスちゃんを追い掛けるって目的が。
私達の恩人でいつか恩を返せたら良いねって話しをしてたんだけど私達3人のチームに新しく仲間が1人加わった事で一気に現実的な目標になってしまったんだ。
その人の名前はタニアさん、タニアさんは何とランク5の冒険者で私達と同じくアイリスちゃんに助けられた人だった。私達の目的を聞くと一緒に来てくれると言ってくれたのだ。
今も冒険者だけど傭兵ギルドにも所属していて兼業している。普通は兼業なんて冒険者ギルドは認めないんだけどタニアさんが高ランクだったから渋々受け入れたらしい。
凄いな高ランク。そんなこんなで彼女も私達と同じくアイリスちゃんに恩返ししたいと言って来て仲間になったんだ。
私達はランク1の時は町の中で傭兵としての仕事、今は建物の建て直しや町の壁の補強が多くてタニアさんも一緒に受けていた。飲食店の手伝いなんかもあったんだけど、タニアさんには嫌がって拒否されてしまっていたんだよね。
「アタシみたいな大女にそんな仕事合う訳ないじゃないか。笑い者になる気は無いよ」
「タニアさんを笑い者に出来る人がいるとは思えないんだけど」
タニアさんは元々高ランクの冒険者で戦鬼なんて物騒な2つ名を持っていてこの町でも有数の実力者だ。
「馬鹿な奴等ってのは何処にでもいるもんさ。特に冒険者なんてな。まあアタシは冒険者の方の仕事もあるし、傭兵ギルドの仕事はランクを上げる最低限で良いんだよ」
そうやって私達は傭兵ギルドの依頼を受けない日を作って鍛練をしたり勉強をしたりもしている。鍛練にはタニアさんも参加してくれる時もあって色々勉強になる。それ以外の日はタニアさんは冒険者として依頼を受けているそうだ。
高ランクなだけあって数日単位で町を離れる事もあるけどその都度調整して同じタイミングで昇格出来るようにしていた。
傭兵ギルドの鍛練場では鍛練する事も評価に繋がるから沢山の人達が参加していて一緒に鍛練出来て話しも聞けて為になる事が多い。知り合いも増えてその人の人となりも分かって複数チームでの依頼の時に役立つらしい。
アイリスちゃんを追い掛ける時はタニアさんの冒険者でのチームは解散する事になっている。最初に話しを聞いた時はその時になったら揉めるんじゃないかと思ったけどそれは無いと分かった。
「いや、あの聖女様がいなけりゃタニアは死んでただろうし、俺等も怪我を治して貰ってるしな! 行くななんて言えねえよ!?」
「神聖教会と敵対してるんだ。強え味方は幾らいても足りないだろ? タニアなら役に立つ。俺等の分も守ってやってくれよなタニア」
「任せな、あの聖女様のお陰で怪我どころか古傷の膝や目まで治して貰ったんだ。アタシはまだまだ強くなってみせるよ!」
「まあそう言うこった、俺等は嫁もいるし子供もいる奴もいる。容易に付いて行くとは言えねえ。けどあの聖女様に恩義も感じているし、何か返したいとも思っているのさ。何せ金すら受け取らずに町を出て行っちまったからなぁ」
「神聖教会だったらどんだけ金を取られるか分かったモンじゃねえしな」
「ばっか神聖教会にあんな怪我を治せる訳ねえだろ!?」
「そりゃそうだ!「「「わはははは!」」」」
私達が心配していたのを見てタニアさんが自分の冒険者チームと会って話す機会をくれたんだけど……。
それで皆んな納得してるって分かったんだけど。
…………言えない、………………言えてない。
――――――アイリスちゃんが男だなんて!!!
それにコレットとしては何時かアイリスちゃんに会えたら良いなくらいの気持ちだった。
確かにスタンピードの時にアイリスちゃんに会えなかったら重体だったルルはそのまま死んでいたとは思う。私やラビィだって生き残れたか分からなかった。感謝してるしアイリスちゃんも良い子だけど展開が急過ぎて気持ちが追いつかないよ!?
なのにルルは直接助けられたからか無口なのにやる気満々(偏見)だし、ラビィも物怖じしない性格であっさり切り替えちゃってるし、……何で私だけ取り残されてるのよぉおおおーーっ!!
ルルとラビィに思わず恨みがましい目で見てしまうけど何とか消化した。こうなっては既に手遅れ、どうなる事でもないだろう。
傭兵ギルドでランク2になると町の外の依頼を受けられるようになる。まあ簡単な依頼だけだけど……。そしてランク3になると護衛依頼とかで他の町とかにも行けるようになる。
私達の目的をギルド長のレーナさんには話して相談してある。レーナさんとはスタンピードの時からの付き合いなのだ。前ギルド長のシャルロッテ様は美人過ぎるし、怖すぎて近寄りがたかったけどレーナさんとは割りと普通に付き合えている。
いやレーナさんも美人なんだけどね? 庶民派美人って言うか、まあシャルロッテ様を知らなかったらレーナさんにも緊張してたと思うけど。
それでレーナさんからの提案でランク3になったら特別にレンリート伯爵領への依頼を貰えるようにしてくれる事になってるんだ。前ギルド長だったシャルロッテ様に取り次いで貰ってアイリスちゃんに会えるようにしてくれるらしい。
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