第028話 閑話 色々、後編
サルバルト第4王子視点
「クソがぁ!! 何なんだよアイツ等はぁあああーーっ!!」
「おっ、落ち着いて下さいサルバルト王子!」
「ウルセェエエーーーーッ!!」
「きゃあっ!!」
大荒れに荒れていたサルバルトは城の自室で物に当たり人に当たり暴れ回っていた。侍女や教育係りの女達が暴力を振るわれ、怯えながらも何とか宥めようとしていた。
「サルバルト王子、そろそろ落ち着いて下され」
皆がサルバルトに怯えている中にこやかに声をかける人物がいた。
「ふぅーっ! ふぅーっ! ふぅーっ!」
「イヤイヤ、陛下にも困ったものです。幾ら飛空艇が欲しいとは言えたかが獣人如きに人権を与え、ましてや高貴なる王族と対等とするなど……」
「神聖教会の生臭司祭が何のようだ!」
「これは手厳しい、お怪我をなされたと聞いて神官を連れて来たと言うのに。勿論2人共生娘でございますよ?」
司祭と呼ばれた中年の男の後ろに隷属の首輪をした神官服を来た少女達が顔を青くして震えていた。
「……ふん、ならばその女共を置いてさっさと消えろ」
「ええ、しかし最近は王都で神官の資質を持つ者達は軒並みリアースレイ精霊王国に盗まれてこの者達も地方から見目の良い者を厳選して苦労してやっと連れて来たのですよ。全く、この王都も年々住み辛くなりますね」
「……何が言いたいんだ!?」
「ラージヒルド商業王国も情け無い。さっさと飛空艇を造れるようになっておけばこのような事にもならずに済んだものを。そう思いませんかサルバルト王子?」
サルバルト王子は苛立ちを隠さずに神聖教会の司祭を睨み付ける。早く要件を言えと言わんばかりだ。
「獣人如きが我等の上を、空を飛ぶ等あってはならないのです。飛空艇は我等のような神職に着く者や王族のような真に高貴な身分の者達の為にあるべきでしょう?」
イラつきながらも黙って聞いているのを肯定と受けて話しを続ける。
「獣人等本来は家畜であるべきだと言うのに嘆かわしい事です。人に噛み付く家畜等殺処分すべきですのに、……王太子殿下もお嘆きでしたよ」
「…………」
「しかし表立って陛下を否定も出来ません。ですがせめて意趣返しはしないと舐められてしまいませんか?」
「だから何だっ!! 何が言いたいんだ!?」
「獣人共はレンリート伯爵邸に良く通っているとの事です。王子が獣人共と揉めたのもそれ絡みですよね? 我々としてもあの家には苦い思いをさせられているのです。あのレンリート伯爵領では畏れ多くも神を否定し神聖教会を排除する暴挙に出たのです」
「我々は無辜の民にまで神罰が降る前に懺悔して欲しいと考えているのですよ」
両手を広げ自己陶酔に浸りながら1人芝居をするように語り聞かせてからサルバルト第4王子を真っ直ぐ見つめた。
「陛下の言もあり獣人には手を出せませんがレンリート伯爵家側は違いますよね?」
その後幾らか言葉を交わしサルバルト第4王子と司祭は互いに笑みを浮かべながら別れて行った。
「ふう、やれやれ。さて、これで上手く踊ってくれるか」
「神聖教会としてはこれ以上レンリート伯爵に力を持たす訳には行きませんからね」
「出来れば此処でリアースレイ精霊王国の勢いを断ちたい所です。ラージヒルド商業王国も何やら画策しているようですし何とか連携してみますか」
因みに神官少女2人は手を付けられる前に獣人のアシュトン達に強奪されていったので無事だった。
シャルロッテ視点
レンリート伯爵領の領都、商工ギルドギルド長室で恰幅の良い壮年のギルド長に冷や汗をかかせながら、シャルロッテはにこやかに話しを進める。
「そう、一応最低限予定通りには元アドン男爵領の開発は進めているのね?」
「はっ、はいシャルロッテ様、……しかし、立地が悪すぎます。明らかに大赤字になりますよ?」
「それは想定内よ。他から補填すれば良いわ」
「……ですがレンリート伯爵には許可を得ていないのでしょう?」
「アレはまだ頭が固い所があるから仕方がないわよ。まあ今回ライハルト子爵領で上手く立ち回ったから貴方達も進出しやすくなったでしょう? その利益を回して進めれば良いわ」
「いやえっと……」
「それとそろそろ元アドン男爵領に最低限此処と同規模の商工ギルドを建てて頂戴」
「ええっ? いやそんな無茶を言われても……」
「なら私が責任を持つわ。あそこの商工ギルドのギルド長も私がやるわよ」
「いえ、……ですがそちらの傭兵ギルドのギルド長に就任したばかりですよ?」
「両方やるわよ、何か問題が?」
「……いえ、ありませんが……」
「そもそも貴方達の所為で私達は時間が無いのよ?」
「は? ……えっと、それはどう言う?」
「貴方達リアースレイ精霊王国がアデール王国と貿易を進めて力を付けさせてしまったから増長してこの国、フォシュレーグ王国との戦争の気運が高まっているのよ。だからレンリート伯爵領には対抗するだけの力が必要なの」
「そっ、……れは」
「別にそれで責任を取れとか言うつもりは無いわ。お互いが利するよう協力をしましょうよって話しよ、ね?」
「は……はい」
「何とかアドン男爵領周りを領地をもう少し削り取りたいのよね」
「………………」
そうシャルロッテは微笑んだが商工ギルドのギルド長は血の気が引く思いだった。どうやって? などとは聞けなかった。
ビアンカ視点
「ビアンカお嬢様、商工ギルドから連絡がありました。第二学院中等部の女子生徒絡みの件ですが、アイリスと揉めた剣術のグイスト他主導していた2名を解雇にして犯罪奴隷に、それ以外の関係者は過去に渡って調べて賠償金を支払う事で決着を付けたようです」
「そう、…………それで第二学院の方は落ち着くかしら」
「……アイリスが新たな問題を起こさなければ、ですな」
「そんな事分かっているのよ! その問題を起こさないかって聞いてるの!!」
「落ち着いて下さいビアンカお嬢様。ナージャの報告によりますがクラス内は落ち着いているとの事です。教師陣の方は今回の件で釘を刺しましたし、後は貴族の子息子女が多い上位クラスとの問題が起きなければ、ですが」
「一々不安要素を組み込んでこないでよヒストロス!」
「同学年の男共はこの間の剣術の授業の事を聞いて距離をとってる感じね。後は上級生が絡んで来なければ大丈夫だと思うわよ?」
「……ミリアーナ」
「でもあの程度なら上級生でも負ける事は無さそうだし、第二学院ってそこまで気を使わないといけない相手っているの?」
「何処にでも理屈の通らない馬鹿と言うのはいるものです」
「まあ、……ね」
「それで? 貴女は問題起こさないでしょうね? ミリアーナ」
「私? イヤイヤ、流石に未成年の女の子に手を出したりしないわよ。可愛い女の子も多いから目の保養には良いんだけどね」
手を振って否定したミリアーナだがその発言に思わずジト目になるビアンカだった。でも手を出さないなら、と飲み込む事にした。
「ビアンカお嬢様、その顔ちょっとゾクゾク来ちゃうわね」
「「………………」」
「それじゃ傭兵ギルドに行ってくるわ。良い娘がいたら鍛練の相手でもして貰おっと♪」
「……ナージャ(子供好き)と言いミリアーナ(女好き)と言い、何であんなのばっかり集まってるのよ」
「…………」
部屋を出て行くミリアーナを見て呟くビアンカにヒストロスも何も言えなかった。
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