第027話 閑話 色々、前編
ゼルアス侯爵家3男ダントル視点
「父上っ! 何故俺が第二学院を落第にならなければならないのです!!」
「黙れ! 貴様の所為でどれだけ儂が恥をかかされたと思っておる!! 城で聞いた時は気を失うかと思ったぞ!!」
「っ、ですが父上! アレはあの平民が無礼を働いたのですよ!? 寧ろあの平民こそ捕らえて罰するべきです!!」
「駄目だ、……陛下に釘を刺されたのだ。その所為で宰相にも嫌味を言われたのだぞ」
「では俺はどうなるのです? 第一学院に?」
侯爵家の3男なら可笑しくはない。けど第一学院の入学試験は既に終わっているし何より第二学院の入学試験で恥をかかされた事は既に広まっているだろう。
無理矢理入ったところで今更立場がある筈が無いじゃないか。クソ、この俺が派閥を作るんじゃなく何処かの派閥に入らなければならないなんて……。
「決闘に勝った方が第二学院に通うのだぞ? 負けた方を第一学院に通わせる訳にはいかんだろう」
「なっ! そっ、それでは俺はどうなるのです!?」
「自領の学院にでも行ってろ! 貴様に出来る事は静かにして問題を起こさない事だけだ。もし次に何か問題を起こしたら幽閉して成人になりしだい家から出すからな!!」
「そっ、んな……」
ダントルは自身に向ける父親の冷たい視線に恐怖した。
「何で、こんな事に……」
「馬鹿が、決闘などせずとも貴族の子息に不敬を働いたのだ。他家の貴族に飼われているとは言え所詮平民、抗議すれば処刑くらいさせる事が出来たと言うのに」
「なっ、……それならば是非っ!」
「馬鹿か貴様は! 決闘などしたから既に貴族同士の揉め事になっておるのだ!! 劣等国とは言え貴族、決闘で勝った方がタダで引く筈なかろう!」
「そっ、……そんな……」
「もう良い、下がれ!」
部屋を出たダントルは悔しさに握り拳を壁に叩きつけた。
「それもこれもあの男女の所為だ! いずれ必ず制裁してやる!!」
獣人視点
「ああ〜、早く本国(リアースレイ精霊王国)に帰りたいぜ。なあマルドレ」
「まあウチの商工ギルドが入っているとは言っても3級品が多いからな」
「文化レベルが低いからな。周りに獣人がいないから外に出るだけで大騒ぎで窮屈だしよ」
「まあ確かに、でも外に出るって俺はこの国の馬車にも乗りたくないぞ」
「くはっ! そりゃそうだ。ウチのを真似してる所もあるけど、ありゃ耐久性にも問題があるだろ? そもそもコッチに持って来てる馬車なんてウチの旧式も旧式、時代遅れも良いトコだしな!」
「マルドレまで何アシュトンに同意してるのよ」
「「ピリララ!」」
「全く、アンタ等は当分レンリート伯爵邸には来ないでよね。本国(リアースレイ精霊王国)の恥を晒しそうで怖いわ」
「なっ、何でそんな事言われなきゃイケないんだよ! そんな権限お前に無えだろ!?」
「ダールトンさんも賛成したわよ。これ以上精霊の愛し子ちゃんに嫌われたら堪らないもの」
「ぐっ! おっ、お前まだアイツと風呂に入ってねえだろうな?」
「アンタには関係無いでしょ! いやらしい目で見ないでくれる!? アイリスちゃんにも私達の裸の事を聞いたりして、私達かどれだけ恥ずかしかったと思ってるのよ!」
ピリララと侍女達の冷たい視線を受けて小さくなるアシュトンとマルドレだった。
アデール王国内商業ギルド視点
「リアースレイ精霊王国がフォシュレーグ王国にまで足を伸ばそうとしているようですね」
「ふん! 身の程を知らぬ奴等よ、忌々しい」
「しかしこのままだと我々の勢力がまた削られてしまいますぞ? 何とかしませんと」
「うーむ、確かゼルアス侯爵家の3男のダントルが精霊王国絡みでトラブルを起こされましたな」
「何か案が?」
「ゼルアス侯爵を焚き付けてフォシュレーグ王国に戦争を仕掛けさせると言うのは如何でしょう?」
「ゼルアス侯爵は文官派、武官派とも度々揉めていますし難しいのでは?」
「武官派は常々フォシュレーグ王国を攻めたいと言っていたでしょう。閣下には此方の意図を伝えて彼等を影ながら支援して頂きましょう」
「ふむ、揉めたのがフォシュレーグ王国の貴族ですからその辺を突つけばいけますかね」
「しかしリアースレイ精霊王国に知られればアデール王家に圧力を掛けて止められかねないのでは?」
「アデール王家とて同じ事、飛空艇がリアースレイ精霊王国の独自技術である内は止められるでしょう」
「あんな物! 我々にだって出来る!! 足りないのは現物だ! アレを手に入れ研究出来れば……」
「確かに、後は知識だけの問題だな。技術力は奴等の馬車の構造を解析して同レベルの物が出来上がっている。技術的に我等とさほど違いが無いのであれば現物の見本さえあれば出来るか……」
「しかし手に入れると言ってもどうやって? 奴等は我等の言う事など聞きませんよ?」
「リアースレイ精霊王国は既にこの国の王都に根付いている。無理矢理となると、下手をすると内乱にまで発展しかねないか」
「……いっそ内乱を起こしてみるのはどうです?」
「どう言う事だ?」
「神聖教会を持つルードルシア教王国を使うのです。この国から精霊神社を排除する手伝いを…、と言えば協力してくれるでしょう。彼等には精霊神社を相手して貰い我等は商工ギルドから飛空艇を手に入れる」
「ルードルシア教王国を動かすとなるとかなりの支援をしなければなりますまい」
「奴等にとってもリアースレイ精霊王国の台頭は死活問題であろう?」
「それでもだ。少なくとも我らも矢面に立たされるであろうな」
「戦力としては冒険者を使えば良いとして、精霊神社はルードルシア教王国に任せて我らは飛空場だけか?」
「待て待て、それでは内乱とは言えんだろ。この国を動かさねば我らがテロを起こしたと言われかねんぞ」
「では王太子殿下を立たせますか。確か第4王子のサルバルトが獣人と揉めていた筈。王家の威信を取り戻す等と煽れば簡単です」
「ふむ、我らは王太子を立たせルードルシア教王国を動かす為の資金援助と傭兵を抑える為に冒険者を使うと」
「……儂は反対だ。そもそも飛空艇を奪えなかったら? 彼奴等がその辺の対策をしてないとも? 失敗したらあの愚王に儂等が処刑されかねんぞ?」
「まさかそんな、我等は天下のラージヒルド商業王国ですぞ!?」
「――いや、あり得る。そもそも飛空艇を招き入れる為に儂等やルードルシア教王国の反対を押し切ったくらいだからな」
「忌々しい。その所為で我等までがどれだけ本国(ラージヒルド商業王国)から叩かれたか」
「兎に角、あの愚王を表に立たすか儂等が表に出ないようにせんとリスクが高過ぎる」
「うーむ、……ではフォシュレーグ王国に戦争を仕掛けさせる方はどうです?」
「それならば構わんだろう。支援物資を送って要請があれば冒険者共でも送れば良い。勝とうと負けようと両国間を分断してしまえばリアースレイ精霊王国のこれ以上の侵攻を止められる」
「何処を攻めさせる? レンリート伯爵領は外せないとしても他にも考えんと」
「いや、あそこは数年前から軍備の増強をしているらしい。負けても良いとは言え我等が焚き付けるのだ。出来れば勝たせて更に信用を得たい」
「……となると精霊王国にバレないようにしませんと」
「内密に、と言う事になると支援物資を送るだけでも時間が掛かりますな」
「うむ、しかしそれも仕方がないだろう。で? 何処を攻めさせる?」
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