第023話 授業開始、剣術授業
学院の1年間は4月から6月までの1学期、7月が夏休みで8月から10月が2学期、2週間の秋休みがあって11月から1月までの3学期となっている。
俺は入学試験の成績によって剣術と魔法と数学は免除されている。と言っても1学期だけだし学期末の試験は受けないといけないけどな。2学期も免除を受けたければ2学期初めに試験を受けなければならない。
まあ何が言いたいかと言うと空いた時間を鍛練に使えるって事だ。学院が始まってから屋敷で剣や魔法の鍛練に楽器の練習と幾ら時間があっても足りない状況だったのだ。
ビアンカお嬢様の屋敷の使用人として給金は貰えるけど将来の為にもっと金を貯めておきたい。
そこで学院の空き時間を鍛練に、学院に行く前の早朝と放課後に商工ギルドの治癒院か精霊神社に行って回復魔法を使って小遣い稼ぎをする事にした。
屋敷では鍛練もするけど主に楽器の練習になる。学院では幾つかの楽器から選ぶので俺はナージャさんに教わっているリーフに似た弦楽器を選んでいる。
学院で使わないリーフは習わなくても良いと思うけどナージャさんは許してくれなかった。リーフは木製で弓の様な形をした物に縦に弦が15本張られている楽器で、それに比べれば学院の物はシンプルで扱い易い。
傭兵ギルドの狩りや採取は王都を出るのにそもそも時間が掛かって出来ないし、王都内の依頼は時間が合わないモノやビアンカお嬢様達の許可を得られなかったモノしかなかった。
……馬小屋清掃、美味しいのに。
翌日剣術の時間、免除になってるけど初めてだしちょっと興味があったから受けてみた。因みに歴史の授業は拷問だった。嘘と分かってるモノを大真面目にこれから毎時間受けなきゃイケないのか。無理しても2学期は免除を受けられる様にしよう。
剣術の授業は2組合同、100人でやる。置いてある鍛練用の武器から選んでそれぞれ鍛練するそう。細い竹で編み込んだ物で危険は余り無さそうだ。
重さや重心は重りでバランスを取ってるから振る感じは本物とそう変わらない。でも命の危険は無いけど当たれば勿論怪我するから防具は必須。とは言っても基本は寸止め、痛いのは俺も嫌だからそれは賛成だ。
武器は自由に選べる。女子は大概ナイフ、護身用だな。ホリー達も皆んなナイフ、て言うか皆んな出席免除にならなかったんだな。
「て言うかアレで免除になってたら逆に驚きじゃない?」
「ホリーの言う通りよ、それよりアイリスちゃん免除になったのに受けるの? 数学は抜けてたから剣術もって思ってたのに」
「ちょっと体験……する」
女性がナイフを持つのは護身的には有効だろう。ナイフは襲われた時に相手が殺す気ならそれ程役に立たない。けど誘拐する気ならナイフを持った相手と言うのは面倒臭いだろうからな。
後は少数派で細剣を持ってる娘が何人かいるくらいか、使い熟せるのかね? 俺もリリィの事もあって当然細剣だけど男子に細剣使いは他にいない。けど気にしない。女の子だけとか今更だし気にしない。気にしないったら気にしないのだ。
『重くそ気にしとるのじゃ』やれやれ
男子は片手剣や両手剣に槍とか思い思いの武器を選んでいるな。
男子40人女子60人くらいかな。貴族は男女同数くらいだけど商人は男子が少ない。学院に通わず既に働いてる場合が多いからだな。大人になると男の方が戦闘職に付く事が多いから死ぬ確率が増えて男女の人口比率もそんなものだ。
教師が4人付いて軽く体を動かしてから武器種ごとにそれぞれ剣の振り等を教えていって素振りをさせていく。まあこんなものだよな。
素人の振りの子供が多い。まともに振れてるのは男子が半分の20人程と細剣を持った女子の中で2人程かな。
後で聞いた事だけど男子は低位貴族の子息は家で教えられているし、商人の息子は付き合いのある貴族の子息と手合わせさせられたりするらしいから最低限の腕はあるそうだ。
「よぉーし、そろそろ手合わせして行くぞ。それぞれ同じ武器を持っている教師の所に並べ!」
言われた通りに細剣を持った教師の所で他の生徒と並んでいく。細剣を使う生徒は俺を入れて6人。教える教師も女性なんだな。その教師、ハートリス先生は普通の剣も振れそうな体格だ。130cmの俺より頭1個半高いから170cmくらいかな?
「それじゃ1人ずつ相手するから他の人は見学する様に、順番は決まって無いから好きに来なさい」
「「「………………」」」
「?」コテン
「――行きます」
何故か女子全員がコッチを見た、と思ってたら皆んな俺を上から下まで見てから目を合わせて剣を振れてた女子の1人が前へ出た。
『どんなもんか分からんから最初は嫌だったんじゃろ』
えっ?
『男のお主に、と思ったけどお主この中でも背丈は低いし華奢じゃしの。それであのオナゴが気は進まんが買って出たのじゃな』
ぐふぅっ!! 何それ! 俺この小娘共に貧弱だと思われてんの!?
『今更じゃの、それよりあのオナゴに悪いと思わんか』
うっ! 確かに悪かったな。
前に出た女の子がハートリス先生と剣を交えていく。ハートリス先生は受けの姿勢でいくようだ。
「行きます、……はっ!」
じりじりと距離を詰めてから振り下ろしの一撃、ハートリス先生は細剣で簡単に弾く様に受けてそのまま細剣を相手の首筋に置いた。
「っ、……負けました」
「はい、予備動作が大きいわね。相手に読まれるわよ。次っ!」
「はっ、はい」
ぼうっとしてたら最後の順番になってしまった。2人目も簡単に倒されて後は素人ばかり、すぐに俺の番が来てしまった。俺が前に出て構えるとハートリス先生は今までより少し腰を落とした。
『警戒されとるの、入学試験を見ておったのかの?』
「どうぞ」
「んっ」コクリ
待ちの姿勢は変えないか。斜に構え剣先を相手の目線に合わせる。互いの細剣が触れる程近づいた。俺は相手の細剣を軽く弾きながら踏み込んで胸に突きを放った。
ハートリス先生は下がりながら体を捻り、俺の細剣を避けて細剣で弾き飛ばそうとして来た。けど空振り、読んでいたから細剣を引いていてその隙を付いて首に細剣を突きつけた。
「……負けました」
ハートリス先生が負けを認めて細剣を下ろすのを見て2歩程下がってから俺も細剣を下ろし警戒を解いた。試験の時みたいに勝負が決まってから攻撃されるかもしれないしな。
『うむうむ、そう言う心構えは大事じゃぞ? 良い傾向なのじゃ。まあ女教師は無表情でお主をガン見しとるがの』
怖っ! 何で!?
「貴方強いわね」
「んっ、……ありがと?」コテン
皆んなの所に戻ると細剣を使えていた女の子が話し掛けて来た。
「っ、(可愛い)……ナナリー・ベリエルよ」
「んっ、アイリス・フローディア」
パンパン!
「それじゃそろそろ生徒同士で手合わせしましょうか。お互い怪我しないようにね」
「……相手してもらって良いかしら?」
「んっ」コク
細剣を選んだ女子生徒と1人ずつ戦っていった。人数が少ないから女教師のハートリス先生も混じって来たけど何とか勝った。ハートリス先生は傭兵だとランク3の中頃、身体強化魔法を使わないからミリアーナよりは下な感じかな。
剣が振れてる2人、ナナリー・ベリエルとカリナ・ネリフェスはランク2くらいか、でも細剣使いとしては違和感があるんだよな。
「それは私もカリナも弟の剣の相手をさせられていたからでしょうね」
「はい、領主候補として鍛える為に歳の近い相手として私も相手をしていました」
「そう言う場合大抵お互い片手剣で稽古をしますから、細剣の戦い方は分からないのです」
「何で細剣?」コテ
「貴族の子女としては格好が付かないから、ですわ。平民の女性の中では珍しくないようですけど」
「片手剣は女性らしくは無いですからね」
周りの女の子達もうんうん唸ってる。いや待て、……。
「細剣、……女らしい?」
「あら、貴方にはお似合いよ? お可愛らしいですし」
ははっ、まさか。
「お……男らしく……無い?」
おお、皆んなの反応が怖くて顔が見れない。
アイリスが俯いて持っている細剣の竹刀が震えている様子を見て女子生徒達は察した。――可愛いは不本意なのだと。
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