第010話 調査の結果
「げっ、ゴブリン10匹くらいだ。多分さっきの奴等を追い掛けて来たんだろう。どうする? やり過ごすか?」
「いや、殺ろう。――あっ、アイリスさんは大丈夫ですか?」
「だいじょぶ」
レイクを半眼で睨み付ける。お前本当いい加減にしろよ。
木を壁にして待ち構えるとサージェスが隣りに陣取った。コレで隙が無くなった。レイクは構わず正面に突っ立ってる。
ゴブリンがレイクの横を駆け抜けると3匹のゴブリンが一瞬で斬り裂かれた。相変わらず凄いな。横から抜けて俺達の方にも半分、5匹のゴブリンが襲いかかってきた。
けど5匹全部が血走った目で俺を見てるのは何で!? 怖気が走るんだけど!? 何で俺ばっかり、そんなに美味しそうに見えるのか?
「アイリスさんっ!?」
そしてレイクの反応にもいい加減イラついて来たぞ。
サージェスが短槍を大振りして牽制、引いたゴブリンの中で近くにいた奴に俺は突きを放っていく。更に1匹倒した所でレイクが挟み討ちの形で殲滅していった。
『早速突きが役立ったではないか』
……まあな。サージェスが横に付いてくれたからだけど。
「大丈夫ですか?」
「ふう、どうやらお前さん。ゴブリンに美味しそうな獲物と見られているようだな」
「………………」ジト目
サージェスを睨み付け、つまらない会話を終わらせて先に行くように促していく。再び歩き出すと空気が澱んできたのが俺達にも感じ取れた。そのまま暫く歩いていると多くのゴブリンの声が聞こえてきた。
「此処からは更に慎重に行くぞ。単発でもゴブリンが来た場合はやり過ごす。無理そうなら不意打ちで始末する。場合によっては逃げる。判断は俺に任せてくれ」
サージェスの言葉に頷く。レイクではイケイケで付いてイケないからな。レイクも異論は無いようだ。これがリズやラストとは違うトコだよな。剣の腕もだけど。
サージェスが近くの小枝を幾つも切り落として紐で束にして手渡してきた。
「木に隠れながら進むが、前方を確認するのに顔を出す時はこの葉を通して見るようにしてくれ」
そう言って手本を見せてくれたが木から枝葉が出てる様にしか見えない。まあ俺も似たような事やってるけどレイクは感心したように頷いている。イケイケな行動するし脳筋かコイツ。
サージェスからレイクがレクチャーを受けてからゴブリンの集落を確認する。かなりでかい集落だ。妹精霊から情報を得ていたけど実際に見るとかなり怖いものがあるな。
やっぱり枝葉を使って屋根を作ってその下で生活している。けど俺でも分かるぞ、思ったより状況はひっ迫してるよな?
「共食いが始まっているな」
「ああ、何処からか魔物や果物も手に入れているようだが……」
「全く足りてない。魔物の肉を奪い合っていたり木の皮に齧り付いている奴もいるぞ」
ゴブリン同士で殺し合ってそれを眺めて笑っている奴等がいる。負けた方が食われているけど勝った方も連戦させられている。殺されると分かっていても少しでも長く生きようとしてるのか何も理解出来てないのか。
ああ、目眩がする。早く町に帰って寮で寝たい。何故俺はこんな何処にいるのか。
「上位種は……」
「――あっち……」
俺は奥の方、中央右寄りの大きな屋根の所を指さす。
「良く見えますねアイリスさん」
本当に目が良くなってんだよなぁ。でもちょっとやり過ぎじゃない? いや嬉しいんだけどさ。今は見たくないモノが見え過ぎて足がすくみそうなんだよ?
『戦いに身を置くのじゃ。妥協は出来んのじゃ』
いやまあ、俺も願ったり叶ったりではあるんだけど。
「内訳を教えてくれるか?」
『通常種以外ではソルジャーが15匹くらい中央にいるのじゃ。全体では……50くらいじゃな。それとナイトが中央に3匹、全体で5……6匹かの』
ゴブリンは通常で130cmくらいでゴブリンソルジャーは150cmないくらいでちょっと筋肉質、で180cmくらいのちょっと太ったゴツい奴がゴブリンナイトって言うのか。
『知らんかったのか』
俺のランクじゃ通常のゴブリンとだって殆ど戦わないんだよ。
「以上ですか?」
「んっ」こく
「ゴブリンナイトは完全な上位種だ。だが気掛かりがある。この規模でナイトがそれだけいるならキングがいてもおかしくない筈だ」
「どう言う事だ?」
「コレが、……まだ本隊じゃない可能性がある」
「!!? まさか、……そんな……」
うえぇ、マジかよ。500の群れが本隊じゃないって、コレかなり不味い状況だよな? レイクもサージェスも厳しい顔つきになってるし。
「レイク、取り敢えず戻るぞ。皆んなと合流しよう」
「あっ、ああ、そうだな」
コケッ「んぷっ!」
足が震えて力が入らなくて転けてしまった。今まで安全第一に生きて来たのにこんな所でこんな目に遭うなんて。ちょっと涙目になってしまう。
「アイリスさん、大丈夫ですか?」
「おい、何してる急ぐぞ!」
「すみませんアイリスさん、運びます」
「うえっ?」
レイクに軽々と抱き上げられてあっという間に皆んなと合流してしまった。……力強いなコイツ、羨ましいわ。
「……お姫様抱っこ」
「ははっ、……まるで女みたいじゃねえか」
皆んなと合流したけど、何時もならもっと絡んでくるリズとラストが何故か困惑してるようにつぶやくだけだった、何があった?
『オナゴみたいに運ばれてその感想、流石なのじゃ』
命の掛かった状況で何言ってんだ。訳の分からない事を言うなよな。
その後状況を話していくと流石に皆んな一様に暗くなっている。
「レイク、悪いが俺達はここまでだ。急いで町に戻って正確な情報を上げたい。応援を呼んではいるがコレに対処出来る程の応援が来るとは思えん」
「ああ、そうだな。行ってくれ」
足早に去っていくサージェスを見送りながら俺達もこれからの方針を話し合う。
「出来れば少しでも間引きしたい所だな」
「ああ、消化不良だったから丁度良いぜ」
「そうね、私もあんた等が張り切り過ぎた所為で活躍出来なかったし」
「では「えっ? ――バカ?」
「なっ、何ですって!? 誰がバカよ!」
「テメー調子乗ってんじゃねぇか、あ!?」
ラストが俺の胸ぐらを掴んで睨み付けてきた。けど正気かコイツ等、レイク達もリズもラストもバカばっかかよ。まさかエリックも賛成じゃないだろうな?
「止めておけお前等、良く考えろよ? これからこの人数で何処にあるか分からない小規模集落を探すのか? 上手く見つけても今は7人しかいないんだぞ? 怪我した所にスタンピードが起きたらどうすんだ?」
バカ共の発言にエリックが咎めるように言う。ほっ、流石にエリックはまともだったか。
「逃げられるのを前提にしてさっきのように俺達が突っ込んで行くのはどうだ? お前達は無理しないで適当に散らしてくれれば良い」
「逃げたゴブリンに人間の外敵がいる事を知られるぞ。下手すると村への侵攻が早まるかも知れない。それに此処で幾らか数を減らした所で村まで来られたら終わりなのは変わらないだろう。応援が来るまで時間が掛かるんだ。今、敢えてリスクを犯す必要は無いだろ」
そうそう言ってやれ、て言うかもう戻りたいんだけど? いい加減疲れたし今スタンピードが起きたら逃げ切れないぞ? せめてもっと離れた所で話そうぜ。
「第一俺等が狩りに行ってる間に村が襲われたら元も子もないだろ?」
『全く、言いたい事があるなら己れで言わんか』
無視無視、あ、でも。
「村で女子供の避難をさせたりと、出来る事は幾らでもある。近くの村にも避難を呼びかけないとな」
「エルビア、……応援」
「ああ、そうだな。確かにシラルの町だけじゃ厳しいかも知れない」
シラルの町は俺達が拠点にしていて応援を呼んだ方だけど、人口5千程の町で兵士は100そこそこ、傭兵冒険者合わせて300程、練度にもよるけど全員集められる訳でもないし、それだけじゃ厳しいだろう。
反対側のエルビアの町も此処からの距離と人口は同程度だし呼び掛けた方が良いだろうと言う事だ。
「そうだな、近くの村々でも有志を募りたいけど、そこまでいくと越権行為か」
「けど事態を知らせておいて避難の準備をしておいて貰うのはありだろ?」
「……ふう、確かに……少し熱くなり過ぎたようだ。――村に戻ろう」
レイク達も納得した為、漸く村に帰る事になった。
『で? ――お主は何時まで抱っこされておるのじゃ?』
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