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焼肉屋はキムチよりも塩キャベツを置いてくれ

サンチュみたいにして食いたいんじゃ

前回のあらすじ 『ギャルに発勁』


「ヘリコプターってのァこんなにうるせェのか」

「初めて乗った人全員言いますねそれ」

「悪いが私はここまでだ。幸運を祈るよ」

「オウ、任せとけ。カネの準備もしとけよ」

「まぁぼちぼちやりますよ」

「うん。用心していってらっしゃい」

爆音と爆風に紛れ爆速でヘリに乗り立ち去るキキを見送るナナナギとロロ。二人が立っているのは無人の道路のような一本道で、クーロンから1km程離れた場所。クーロン周辺3kmは閉鎖され立ち入り禁止となっているが、浮浪者、犯罪者、不法移民に犯罪組織など表に居場所が無いものはクーロンへと集まる。中の治安は、考えるまでもないだろう。

クーロンへの入り口は複数存在する。いくつもの道が触手のように外へ飛び出しており、近くの道を探して勝手に繋がるという特性があるのだ。そこをまっすぐ行けばクーロンエントランスという訳である。

数十分後、タバコの吸いすぎで肺機能の落ちている二人は大きく息を切らしながらも入り口の一つへとたどり着いていた。そこはまるで高級ホテルのエントランスのようだったが、要塞のような巨大鉄門が威圧感を放っている。

「ゾルディック家みてぇだな。というか門番は?」

「見当たりませんね……」

「これじゃね?」

ナナナギは三メートル程の鉄門の端に、慎ましく、目立たないように設置されたインターホンを見つけると、一も二もなくそれを押した。

硬いインターホンが鳴り、しばらくすると鉄門が開く。特に何も指示は無いが、入ってこいということだろう。

「行くぞ」

「それ以外ないみたいですね」

その中は、巨大な入口とは裏腹にこじんまりとしたものだった。民宿の受付のようで、よく分からない小物がカウンターに沢山置いてある。

そしてその奥に、年季の入った女性が静かに座っている。

「おいババア、クーロンに入りてェんだがよ」

「ナマイキなガキだね。でもそんくらいじゃないとこの中では3時間ともたないよ」

「そっちこそ伊達に長生きしてねェ様だな。安心しろ、通夜には顔出してやっから」

「クハハッ。活きがいいガキは好きだよ。早速クーロンに入る準備をしようか」

「意外と波長が合ってますね」

「じゃあ入る前に一つだけ説明と渡すものがある。2人とも手ぇ出しな」

差し出した2人の手の甲に、『零玖』と言う文字が浮かび上がる。

「なんですかこれ?刺青?」

「なんだい、えらい若いのを引いたね。それはアンタたちの部屋番号だよ」

「じゃあこれは9号室か」

「そうなるね。いまこのクーロンには十万を超える部屋がある。まあ番号の若さは特に関係ないがね」

「そんな中から自分の部屋なんざ見つけられんのか?」

「アンタバカだねぇ。なんのために鍵じゃなくて刻印を使ってるのかわかんないのかい」

「あん?」

「クーロンの中には万能扉があるんだ。中ではマスタードアなんて呼ばれてる。それがまぁ、都会のコンビニくらいの頻度で設置されてんのさ。それにその刻印を翳すとどこからでも自分の持ち部屋に繋がるんさ」

「はえ〜」

「ほら、説明は以上だよ。さっさと入んな」

「ほんとにこれだけか?」

「おや、ビビってんのかい?」

「んなワケねェだろ。ほら、行くぞロロ」

「はぁ……」

「あ、ちょっと待ちな」

「ンだよ」

「久々にマトモそうな若者だからね。コレやっとくよ」

そう言って二人が渡されたのは、老人から貰いがちな黒糖喉飴。

「アメちゃんか。ありがとなババア」

「ありあとうございまふ」

ロロはもう口に含んでいる。

「その扉の先がクーロンの中だよ。さっさと行きな」

「うし!行くかァ」

「ちょっと緊張しますね」

気持ちを整え、クーロンへの扉を潜る。そこに広がる世界は、想像を遥かに超えるものだった。

まず空がない。衛星写真のあれは増築の末にできた、上限値を決める天井だったのだ。その様相はまるでミニチュアフィギュアの摩天楼である。

照明はあるがそれでも夜の繁華街くらいの明るさしかない。この様子だと昼夜の概念もなさそうだ。

次に衛生的なインフラがある。街が飲み込まれているのだから当たり前だが、飲み込まれたままの状態で普通に栄えている。大通りらしきところではちょっと邪魔くさいくらいの量の人間が道を歩いている。都市に巨大な蓋をしたような感じだ。

そして治安が悪くない。もっと殺伐としたものを考えていたが、目につくところでは暴力どころか窃盗も口論も起こって居ない。

そして何より建物の高さ。ほとんどの建築物が増築され、見上げると首が痛くなる程だ。

それらの建物が階を跨いで、屋上を跨いで、渡り廊下のようなもので複雑に絡み合う。蜂の巣の密度に蟻の巣の複雑さ、それらが蜘蛛の巣のように繋がりあっている。さながら立体の超巨大あみだくじのようだ。

クーロンの放つ異様な雰囲気に飲まれていると、その陰鬱とした空気とはかけ離れた声がどこからか響く。

『ハッピィ〜〜〜〜〜〜!?』

『フレヤッホォォ───!!!!!!!!!』

アイドルフェスのコールアンドレスポンスのように、女の問いかけに多数のむさ苦しい声が応える。

様子を伺うために少し進むと、その正体はすぐに判明する。爆発を踏むように移動しビルの間を縫い駆け回る女、そしてそのファンらしき漢達がそれを見あげながらサイリウムを振っている。

「なんじゃありゃァ」

「アイドル……ですかね」

「ンなの見りゃわかる」

「おやwwwwクーロンアイドルハッピー♡フレヤッホー氏をご存知ないとわwwwもしかして新参ですかなwwwww」

いつの間にか隣にいたキモータが聞いてもないのにマウント取りながら話しかけて来る。

「クーロン初日なんだ。知らなくて当然だろうが」

ナナナギは第一印象で人を判断しない。自身の強さから来る圧倒的自信で、誰に対しても良くも悪くも平等に話す。だがここではそれが裏目に出た。

「フレヤッホー氏〜〜!!!!!!新参発見ですぞ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」

キモータが大声を出すと、それに気がついたように女が進行方向を変える。

「こっち来てないですか?アレ」

「こっち来てるな、アレ」

だんだんと女の容姿がはっきりと見えてくる。髪色はブルーとピンクを交互に混ぜたショッキングな色合いで、それがポニーテールとツインテールを組み合わせたボリューミーなトリプルテールになっている。白を基調としたフリフリの服を着ていて、マイクを持っているので何やら歌を歌っているらしい。アイドルだから当然と言えば当然だが。下に蠢いているサイズのあってないチェックシャツをダメージジーンズにINして眉毛も爪も手入れしてないギトギトの髪のオールドタイプキモータ達へ溢れんばかりのファンサービスをしながら、確かにその女は特撮作品のような爆発を伴いながらこっちへ向かって来ていた。

「そこの二人〜〜!!!!」

明らかにナナナギとロロへ呼びかけている。正直関わり合いになりたくない。なりたくないが、逃げるよりも先に女が二人の前へ降り立つ。

「二人はクーロン初心者かな?」

特徴的だが不快ではない、むしろ聴き応えのある声で女は問いかける。

「いきなりごめんね!驚かせちゃったよね。私はハッピー♡フレヤッホー!クーロンに光を届ける新進気鋭のアイドルです☆」

「オウ、そうか。頑張ってな。じゃアタシ達はこれで」

この時ばかりはナナナギのドライさをナイスと思わざるを得ないロロだった。

「どこに行くのかな☆」

「やることあンだよ」

「やることって?」

「あァ〜。言えねンだわ。スマン」

瞬間、フレヤッホーの空気が変わる。

「……もしかして政府に雇われたのかな?」

ここで致命的なミスがあった。ロロが明らかに顔に出してしまったのだ。なぜ知っているのかと。

そのことに気がついたナナナギが戦闘態勢に入るよりも速く、フレヤッホーはマイクを口元に近づける。大きく息を吸い、ストレス発散の為に叫ぶような形で、既に手遅れの攻撃が始まっていた。

『 』

問・大きな音で人間の平衡感覚、動きに影響を与えることが出来るのか?

答・一瞬だけなら140〜160dBで鼓膜が破れ、内部の耳石器までダメージが行きめまい等のダメージを引き起こす!

フレヤッホーが発したはずの声は無く、ナナナギとロロの耳からは血が流れる。内耳や三半規管がやられ、まともに立てない。全身を強烈な衝撃波が突き抜けたような感覚。

ナナナギには覚えがあった。低音強化のウーファーをフルに積んだ改造車をなにかのイベントで見かけ、それが音を出した瞬間の身体を内側から叩かれるような、響くような衝撃。

「今だよ!ギーちゃん!!」

合図と共にロロとナナナギの足元が爆発的する。おそらくそういう異才を持った仲間がいるのだろう。しかしその姿はみえない。だがそれが幸いして直撃は避けている。

「聞こえてないかもしれないけど言っとくね☆わたしの異才は”爆音自慢ヴァルカン”って名前なの☆……騙し討ちみたいでイヤだなぁ、コレ」

話し終わると同時に、ナナナギの拳がフレヤッホーの顔面スレスレを掠める。

「すごいね☆まだ動けるんだ☆」

「あぁ?なンも聞こえねぇよブス」

「あ゛?」

実際ナナナギの耳と平衡感覚は未だ回復していない。その身体を支えるのは空手道から三戦。見よう見まねだが安定して立てている。

「ブッ殺してやんよ☆」

再びマイクに向かって叫ぼうと息を吸うフレヤッホーの肺へ、気を伺っていたロロのスモーキン・ジョーキーが相乗りする。ロロが操れるのは”煙”そのもの。タバコはなくとも爆煙を操ることなど造作もない。喫煙の習慣すらないフレヤッホーは咳き込み、その隙にナナナギはロロを抱えて走る。フレヤッホーを倒すためではない、一時退散のために走るのだ。

フラフラになりながらもなんとかたどり着いたのは、どこにも繋がっていない無機質な扉。そこへ腕をかざし、すかさず中へ転がり込む寸前。やはり爆風によってそれは阻止される。

今二人は鼓膜が破れている。端的に言うと意思疎通ができない。ガッツリ襲われているこの状況でだ。致命的である。

ナナナギはすかさずポケットからスマホを取り出し、メモ帳へ要件をまとめる。ナナナギはフリック入力派である。

ロロへ差し出されたスマホには短く三つの文。

『あいどるとばくはつ』

『あたしはあいどる』

『つかまえていえ』

ロロが目を通したのを確認したナナナギは目を合わせ小さく頷く。ロロも理解したことを伝えるために頷き返す。

平衡感覚は既に回復しつつあり、ロロは脇目も振らずに走り出す。そしてナナナギは、一通りむせ返り終わったフレヤッホーと再び対峙する。

「よおブス。ヤニは美味かったか?」

「テメェは殺すよ♡覚悟しな」

鼓膜が破れているはずなのにはっきりと声が聞こえる。

「私のヴァルカンは伝えたい人に伝えたいことを伝える。耳が聞こえないなんて関係ないよ☆」

「あぁそうかい。そのまま悪口でアタシを倒すのか?」

「バカだねぇ。もう忘れたの?」

フレヤッホーがマイクに向かって何かを叫ぶと、衝撃波がナナナギを吹き飛ばす。

「デケェ声も出せんだよ」

その声は既にナナナギへ向けたものではなかった。気がつけば先程のオタクたちがまた集まって来ている。衝撃波の時の言葉で呼んだのだろう。

『フレヤッホー氏の単独バトルライブですぞォ!!』

『皆の者!ペンラは持ったか!!!』

立ち上がったナナナギが見たそれは異様な光景だった。ナナナギとフレヤッホーを囲うリングのように、オタ芸をするオタク人肉壁が出来上がったのだ。大量のオタクの一糸乱れぬ掛け声で、空気が揺れている。

『オイ!!オイ!!オイ!!オイ!!』

「……いいのか?ファンに流れ弾が当たっても」

「当てるわけないじゃん」

『タイガー!!ファイヤー!!サイバー!!ファイバー!!』

そう何度も同じ技をくらうナナナギではない。既に衝撃波は見切っていた。確かにその軌道上から逃れたはずだった。

しかしナナナギは、またしても吹き飛ばされる。目、鼻、耳から血が流れる。それだけのインパクトだが、ナナナギの背後に陣取っていたオタクたちにはダメージが一切ない。

『ダイバー!!バイバー!!!』

「指向性って知ってるかな?」

「クソ、アタシだけ狙い撃ちできんのか」

「そう♡今衝撃を伝えたい人はキミだけ。声はみんなにも届いてるけど、攻撃を受けるのはキミだけ」

「個人への過剰なファンサは関心しねェなァ」

「まだまだ元気みたいだね」

「そうでもねぇよ。あと一発でも喰らえば終わっちまう」

「その割には顔が諦めてないよ?」

「ああ、初めてアイドルをすげぇと思ったからな。敬意だよ」

「……敬意?」

「ああ、正直クーロンのことはまだ全然わかんねぇが、これだけの人の心を動かすのは並大抵じゃないと素人でもわかる。正に衝撃を受けたよ。ライブも初めてだしな」

「今更命乞いかな?」

「ちげェよ、そっちがアイドルならアタシはサムライだ。お前を倒す前口上だよ」

「できんの?」

「やるさ」

『『ジャージャー!!!!』』

ナナナギはフレヤッホーに向かって一直線に走り出す。これが最後のチャンスなのは誰もがわかっていた。この気を逃せば一方的に嬲られて終わる。

──────だからこそナナナギは笑っていた!

これまでの経験から、ナナナギがフレヤッホーに到達するまでに二発。必ず衝撃波を受けなければならないと覚悟した。

まずは一発目。走りながらナナナギは低く低く体勢を落とす。攻撃から逃れるためではなく、それによって後退しないようにするためである。この一発は喰らわなければならない。万が一これで気絶でもしたら終了である。

来たッ!そしてナナナギは耐えた!!ここはもう根性だった。ナナナギは、勝ちを確信した。

フレヤッホーのヴァルカンはその性質上連発ができない。大きな衝撃波にはそれなりに大きな声を出す必要があり、呼吸を整えなければならない。

次で終わらせる。フレヤッホーは深く深く息を吸う。最大火力で迎え撃つのだ。既にナナナギは眼前にいる。これが最後の一発。今日一番のヴァルカンを行う。

そして迎える二発目。ナナナギは、フレヤッホーに負けじと大声を出したッ!己の大声でフレヤッホーの衝撃波を相殺したのだ!これを逆位相という。

そしてそのままナナナギはフレヤッホーに!なんと!濃厚なキスをしたッッッ!!!!

ナナナギの口内からフレヤッホーの口内へ、固形物が吐き出される。それは入口で貰った黒糖喉飴であった。

それが喉へ直撃し、喉が詰まり呼吸ができなくなる。ヴァルカンを封じたフレヤッホーのみぞおちへ、渾身の正拳突きが叩き込まれる。

───────フレヤッホーは喉飴を吐き出しながら、力なく倒れた。

宙を舞う喉飴を口でキャッチし、喉を鳴らしながらナナナギは言う。

「言ったろ?”一発でも喰らえば終わり”だって。まぁ喉飴一発喰らわせたんだけどな。……それにしてもデケェ声出させやがって、喉飴舐めてても喉痛いわ───────ああ、こっちのは聞こえてねェか」

オタクたちはその光景が信じられないと言うふうに立ち尽くしている。ナナナギはフレヤッホーを抱え、キモータたちへと伝える。

「ちょっとアイドル借りるぞ!!殺しはしない!!!」

誠意が伝わったのかオタクの海が割れ、マスタードアへの道が現れる。

途中から全く爆発はなかった。ロロを信じて良かったと思った。

「さて、アタシ達の部屋は広いかな?」

ゆっくりと、ドアが開く。




ナナナギがフレヤッホーを倒す少し前、ロロも目的の場所へ辿り着いていた。そこは廃ビルのブチ抜きワンフロア。その先に爆発させる方の異才持ちがいる。

ロロはナナナギと別れる前の爆発の違和感に気がついていた。

1つ目は”連発してこない”ということ。連続爆破すれば楽に殺せるのにしなかった。となると ”爆発は一回ずつしか起こせない”のではないか。

2つ目は”直撃しなかった”こと。実際にこちらを目視して爆撃している訳では無さそうである。注意深く見てみると、爆発に伴う炎や煙はどこかへ還って行っていたのだ。

ロロが立てた仮説はこう。『爆発する物質みたいなものを自在に操れるが、それは一つしかない。爆発させる度に炎と煙と風になったそれを、手元に戻して再度爆発するように加工する必要がある』というものだ。実際それは当たっていて、還って行く煙にスモーキン・ジョーキーを紛れさせてそれを追ってきた。

扉を蹴破ると、先にいたのはくたびれたおじさん。だが彫りが深く、俳優としても通用しそうな顔だ。

「驚いたな。もうバレたのか」

「わたしは優秀なので」

「自信いっぱいだねぇ。そして若い。いいことだ。なんでこんなとこ来ちゃったかね。未来ある若者が」

「わたしにも目的がありますし、未来なんてものは無いです」

「ああなんか悪いこと言っちゃった?ごめんね?おじさんになるのは怖いねぇ」

「まぁなんでもいいですけど。爆発止めて貰えませんか?」

「あぁ〜。場所わかったってことは何となく察しついてるでしょ?もう向こうで爆発はないよ」

とりあえず第一関門は突破したとロロは思った。

だがここからが難しいことも、同時に理解していた。

「オレはガギエルダ・グゲゴリオ。異才は凡暗BOMB CLAPという」

「わたしはロンリ・ロンリー。異才はスモーキン・ジョーキー」

「じゃ、やろうかお嬢ちゃん」

「はい。尋常に」

瞬間ロロの足元が爆ぜる。階下に落下しないようにスモーキン・ジョーキーをロープのようにして相手から距離をとる。幸い廃ビルのフロアの天井には剥き出しの鉄筋が複数あり、スモーキン・ジョーキーをロープのように使って移動することができた。ターザンのように。

そして見えた、手元に戻る爆発の元が。やはり仮説は当たっていた。だからこそ冷や汗をかいた。

……ここでは連発できる。

手元に戻すのに時間がかからない分、連発ができる。この規模の爆発を何度もやられたら身体がバラバラになってしまう。

短期決戦しかない。ロロは移動しながらタバコに火を付ける。このタバコが無くなるまでに決着をつける。

「ダメだろ、女子高生がタバコ吸っちゃあ」

「わたしは二十歳ですよ。おじさん」

軽口を交わしながらも爆発は小刻みに続く。ロロを追い立てるように、狩りのように。ロロはそれを縦横無尽に躱しつづける。ターザンのように。

何かおかしい。攻撃のリズムと場所が単調すぎる。そう思ったのも束の間、爆発から逃れた先でさらに爆発が起こる。逃げ遅れた右足が巻き込まれる。少なくともこの戦闘では使用不可能だろう。

おかしい、いくらなんでもスパンが短すぎる。

───────そうか、爆発の元を分けたのか。それなら一回の爆発の威力は落ちるが、連続発破が可能だ。

地に落ちたロロにグゲゴリオが語りかける。

「どうする?降参するなら見逃すけど」

「おじさん、もう決着は着いています」

ロロが拳を握りこむと、グゲゴリオの身体が見えないなにかに縛られる。

ロロは爆発から逃れながら、わたがし機のような細い煙のワイヤーをグゲゴリオの周りに張り巡らせていたのだ。何せ見えないほど細くしたせいで量が必要になり、そのせいで右足を怪我してしまったのだが、なんにせよこれで。

「決着ですね、おじさん」

「オレも鈍ったなぁ」

「おじさんの言い訳は見苦しいですよ」

「……完敗です。お嬢ちゃん」

「よろしい」

スモーキン・ジョーキーを利用してグゲゴリオと共に廃ビルを降りると、ちょうどそこにはマスタードアがあった。正直この足では歩けないのでラッキーだ。

「じゃあ、わたし達の部屋に来てもらいましょうか」

「……甘い匂いするといいなぁ」

ロロが携帯灰皿へタバコを捨てる。

ゆっくりと、ドアが閉まる。


次回『尋問というよりお泊まり回』

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