表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/200

夏祭り裏 地下水襲

 地下のバーの裏口には真っ暗な地下通路があった。真っ暗な通路を炎で照らすと、そこには岩肌がむき出しの壁があった。道は軽く傾斜になっており地下へと続いていた。道幅は大人二、三人が横に広がれる程度で、天井もそれなりに高く三、四メートルほどあった。地面もしっかりと整備されていた。


 ガラナド率いるエリザ騎士団と、キア率いる護衛隊は、この地下通路を背後から迫りくる灼熱の流水から逃げている最中だった。


「パースに地下迷宮があってよかったな、溺死しなくてすむ」


 キアの先頭を走るガラナドがそう言った。


 パースの街には迷宮のような地下通路がいくつもあった。これは、かつて小さなセウス王国が襲撃を受けた際に住民たちが速やかに戦火を逃れるために掘ったものであった。国土の小さいセウス王国の民たちは、よそに逃げ場ないため、こうして、地下通路を通って生きながらえた歴史があった。


「隊長、後ろの隊員たちから伝言です」


「なんだ?」


「おそらく、背後から敵が熱湯と共に迫って来ています」


「なぜわかる?」


「土魔法の壁が破壊されているようで、それに水の流れが一向に衰えません。これは術者が水を操作しているか、あるいは土の壁を破壊しているとしか…」


「そうか、わかった…」


 ガラナドが背後の状況を理解した。


 背後から迫りくる灼熱の流水は、エリザ騎士団の隊員によって、土魔法の壁でせき止めてはいるため、負傷者たちを運ぶ者たちに歩幅を合わせることもできた。それに、いくら流水といえども、通路を分厚い土の壁で塞いでしまえば、本来ならそこでせき止められるはずなのだが、土の壁は何度も突破され、そのたびに、後ろで隊員たちが対処していた。

 土魔法は他の魔法に比べて魔力消費量も重いため、連続して魔法を出すことが困難だった。このままでは流水の勢いが勝ち、こちらが流されてしまう危険があった。


 しかし。


「それなら、私も後方に行って力を貸す。それよりも、お前たちはこの先にある地下ホールに出ろ、あそこまで行けば、流水も関係ない」


 パースの地下には、地下ホールという、大きな空洞がいくつか存在していた。そこに今流れてきている流水が入ってきたところで、その地下ホールは、さらに別の下層の地下ホールへと繋がっているため、今、キアたちが向かっている上層部分の地下ホールに水が溜まることは決してなかった。


「地下ホールに出たら、お前たちは、そこから地上を目指し、ケガ人を安全な場所に避難させたのち、イザイの指示のもと地上の敵を討て」


 ガラナドが部隊全体に指示を出す。


「私も、背後の敵を片付けたら、すぐ地上に合流する」


 すぐに地上に出て敵を叩くはずだったが、最初の一撃は、相手の方が一枚上手だった。地下にいることで水攻めを仕掛けて来たことで、敵は、こちらを一方的に追い詰めるつもりのようだった。しかし、パースには地下深いアリの巣のような迷宮があるため、水攻めには全くもって向かない。仮に地下を浸水させるとしたら、この街を丸ごと洗い流すほどの水が必要で、まず人間には到底不可能な芸当だった。


 部隊が、地下ホールに出る。狭い地下通路とは打って変わり、だだっ広い空間が広がっていた。天井を支えているのか、四つの巨大な石の柱が、ホールの地面から突き出しては天井に繋がっていった。


「いらっしゃいませ、エリザ騎士団の皆さん、お待ちしておりました」


 ただし、ここで思ったよりも、事態が深刻なことに、キアたちならび、ガラナドたちは気づかされることになった。


 地下ホールには、すでに先回りしていた敵が待ち伏せていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ