夏祭り裏 視線
喫茶店を出たキアは、先を歩くガラナドたちを呼び止めようとした。
「あの…」
だが、キアがガラナドたちの元にたどり着く前に、彼女の周りを取り囲んだのは、フードを被った二十名ほどの集団だった。
「お前たち…」
「キア様、正気ですか!?」
フードを外したのは、キアの護衛であるマグリカ・セイブだった。
「マグリカか」
「こっちがどれだけ心配したと思っているんですか?あんな野蛮な喫茶店に入って、こっちは気が気じゃなかったですよ」
「あの人たちは悪い人たちじゃない」
「どっからどう見ても悪者集団ですよね!?あんな広場で、殺気振りまいてるイカレタ集団!!どう見ても頭おかしいですよ!!!」
マグリカはすでに涙目になって、キアに言い迫っていた。
「こんな街中でそんなことする悪い集団はまずいない。彼らはただ餌を撒いていただけ、本物はいつだって影の中に隠れてる」
「まあ、そういうことだ」
するとキアとマグリカの後ろには、ガラナドが立っていた。
「で、でたなぁ!!全員戦闘準備!!」
「だから、やめてって」
マグリカが慌てて部隊を動かそうとしたところで、キアが制止に入る。
「キア・グランド、彼らは、お前の部下か?」
「そう」
「グランド家の精鋭ってわけか、こいつらが」
ガラナドが周りを見渡す、ローブの者たちはしきりに彼女のことを睨みつけては敵視していた。
「精鋭は私だけ」
そこでガラナドが驚いた顔をした。
「やっぱり、お前、噂は本当なのか?」
「そのことで少し話がある場所を変えたい」
「まさか、お前、わざと私たちの巣に飛び込んできたのか?」
「あなたのことは学園に来る前から知ってる。ただ、どこにいるかまではずっと掴めなかった」
「どうして私を知ってる?」
「父が私に必要な情報はすべて流してくれた。その中で私はあなたのことを知った。【ガラナド・ジャラハン】」
ガラナドはそこで諦めたような顔で、口角をわずかに上げて、小さく息が抜けるように笑った。
「そうか、なら、話しは早い。そうだなぁ、場所を変えよう。ここでは見てるやつが多すぎる」
その時、ガラナドが視線を送ったのは、広場の反対側のとある建物だった。何の特徴も無い古くから立っている建物が広場の周りには並んでいる。どの建物も外観は同じで、見分けはつかないが、けれども、その中の特定の建物をガラナドは凝視していた。
「ガラナドさん、ひとつお願いがあるのですが」
「なんだ?」
「あの喫茶店にいる、二人に警護を付けて欲しい、それもばれないように」
キアは二人の身の安全の確保をしたかった。それは、キアにも広場のとあるひとつの建物から嫌な視線を感じていたからであった。
「そういうことなら、任せておけ。おい、お前たちあの喫茶店にいた女の子たちを見張っておけ、ばれないようにだ」
ガラナドの指示で、何人かが先程の喫茶店の方へと戻っていった。
「これでいいだろ?」
「問題ない」
「それじゃあ、行こうか、場所は我々が案内しよう、護衛の皆さんもついて来て下さい、隠れながらでもいいですが、ここは堂々と行きましょう。余裕をもって」
キアの部隊とガラナドの部隊は、トレイドルの広場を後にするのだった。




