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学園案内

 ハンナ先生の学園の教育理念の講義の後は、この学園でのルールについて重要なことを教えてくれた。入ってはいけない場所や、飛行してはいけない区域、食堂の場所に、売店の場所、それと困ったことがあった場合生徒の相談相手になってくれる相談窓口の場所や、授業の時間割など、これから学園内で生活するために必要な知識の大方はここで話してくれた。


 学園の鐘が鳴る。それは授業の終わりを意味していた。


「それじゃあ、この後は、みんなを学園内に案内するから、トイレいく子はいっておいてね」


 しばしの休み時間を挟んだ後、リリャたち学園の一年生はクラスごとに学園内を案内された。

 リリャとルコはあらかじめ、今朝会ったマリア先輩に校舎内を案内されたばかりだった。東館と西館のことは把握していた。

 東館が小等部から高等部の教室で、西館が保健室や理科室などの特別教室などで構成されていた。それはリリャが前に通っていた小学校と同じような作りをしていた。

 しかし、そこから、校舎の外、学園の敷地内を案内されると、リリャとルコの知らない世界が広がっていた。

 校舎の裏手にある校庭は全部で三つあり、それぞれ第一、第二、第三運動場と名前がついており、そこでは野外での魔法実技の授業が上級生たちに対して行われていた。派手な炎魔法が土の壁に打ち付けられていた。男子生徒たちは燃え盛る炎が飛び交う光景に興奮していた。


「あれは、魔力量を鍛える授業ですね。負荷のかかる魔法を放って、自分が魔法を使える回数や量を見極めるのにも役立ちます」


 朱雀組は、魔法が飛び交う光景を横目に見ながら、学園の敷地内を進んだ。


 運動場を後にして、広大な敷地内を西へと進んで行くと、建物群が見えて来ていた。


 ハンナ先生は一度立ち止まると振り返ってみんなに言った。


「魔法のことを学ぶとなると、外せないのがこの【魔法特区アイリス】です。ここには魔法に関する施設が数多く存在しています。みんなも自由選択の科目を取る時、このアイリスにある数多くのラボにお世話になると思いますので、ちゃんと場所を覚えておくようにしておいてくださいね」


 そこにあるのは紛れもなく街だった。学園の中に街があるのには驚いた。そして、それがすべて魔法に関する施設だというのだから驚きだった。


 魔法特区アイリスの中に入る。そこにはこの魔法学園に通っている先輩生徒たちが、行きかう魔法の街が存在していた。空には背中に光のリングである飛行魔法で移動する学生たちに、この街の至るところで、ありとあらゆる魔法が使われていた。荷物を運ぶために物体を浮遊させていたり、空中には魔法で描かれた文字でなにやら部活動の宣伝をしているようだった。


 そこにひとりの男子生徒が、リリャたちの頭上に飛行魔法で近づいて来た。


「お、新入生の諸君、入学おめでとう!」


 突然現れた彼は、朱雀組の生徒たちの視線を釘付けにした。みんなが騒いでる中、その彼が尋ねる。


「突然だけど、この中で、飛行魔法に興味がある人はいるかな?」


 みんな彼が飛行魔法を使っていることに驚いてそれどころではなく、男子生徒たちは、みんなすげえとしかいっておらず彼の話しを聞いていないようだった。女子たちも突然現れたカッコイイ先輩に、目を輝かせているものも何人かいるようだった。


「【ラウルさん】勧誘は後でしてください。今は、この新一年生の生徒たちにこの学園アジュガのことを案内していたところなんですから」


 ハンナ先生はラウルと呼ばれた先輩生徒とは認識があるようだった。


「すみません、ただ、ハンナ先生からもぜひ俺たちの【飛行部】のこと伝えておいてください、それじゃあ」


 ラウル先輩は、空高く飛び上がり、どこかへと飛んで行ってしまった。


「リリャちゃん」


 ルコがリリャの袖を引っ張っていた。


「ん?」


「飛行部だってよ、リリャちゃんにピッタリじゃないかな?」


「そうね、後で行ってみる価値はありそうね、その時はルコも一緒について来てくれる?」


「う、うん、いいよ、私は飛ばないけど」


「私もまだあんな風に飛べるかは、分からないけどね。もし飛行魔法の適性がなかったら、最悪空を飛ぶのだって諦めなくちゃいけないし」


 実際に飛行魔法を見て、リリャも自分もあんな風に空を飛べると思うが、自分に適性があるかないか少しだけ不安があった。みんな最初に掲げる自分の魔法使いのビジョンがあるが、それでも適性が無く、目指す魔法使いに慣れないことだってあるということは知っていた。魔法は、必ずしもすべての魔法が使えるわけではない。その人にあった系統の魔法的適性があった。それは人によってさまざまであり、生徒たちも途中で理想の魔法使い像を変えるということはよくあるとのことだった。自分にはどんな魔法使いになるのが向いているかそれを探すのも、この魔法学園に入学した意味としては大いにあった。


「だ、大丈夫、リリャちゃんは、きっと自分のなりたい魔法使いになれるよ」


「ありがとう、ルコ」


「うん、だって、リリャちゃんは私のとっても尊敬する人だから、当たり前だよ」


「そっか、なんだか、私も飛べるような気がしてきた。ああ、なんだか、飛行部に行くのが楽しみになって来た!」


 リリャたちは、アイリスの魔法街を歩いて回った。


 それから、ある程度学園内の敷地をぐるりと軽く一周すると、リリャたちは校舎の東館一階にある自分たちの教室へと戻っていた。


「今日のところはひとまず学校の案内で終わりなので、午後からは授業が無いです。なので、みなさん、自由行動になります。ただ、ちゃんと生徒手帳のルールは守って過ごしてくださいね?そうじゃないと、罰則を受けて最悪退学になりますからね?いいですね?」


 生徒たちが歩き疲れて気だるげな返事を返した。


「そうだそれと、午後から、この校舎の中庭で先輩たちの部活動勧誘の出し物があると思うのでいってみるといいですよ」


 それから、リリャたち新一年生は、この魔法学園で初めての午後の自由時間を迎えることになった。

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