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リリャの魔法学園  作者: 夜て
黄金探索
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夜の空から送られて

 星々の明かりだけが頼りの夜。ラウル先輩にお姫様抱っこで運ばれていたリリャは、その間にあることについて聞くことにした。それは今日、あの剣闘部のサバル先輩が見せた飛行魔法のことだった。


「先輩、ひとつ聞いていいですか?」


「なに?」


「今日、サバル先輩が飛行魔法を使っていたんですけど、サバル先輩って元飛行部だったりします?」


 リリャのその質問に、ラウル先輩は答えにくそうに曖昧な顔で回避しようとする。


「うーん、そうだね、サバル先輩は俺の一個上で元飛行部なんだけど…」


「ですよね、びっくりしましたよ、いきなり、二速で飛んで来たんですよ!二速って飛行部の中でも凄いことなんですよね?」


「ああ、まあ、そうだけど」


 飛行魔法の用語で、一速、二速などと呼ばれる意味は、飛行魔法を使った際に現れる光のリングのことを指していた。一速でリングひとつ、これは上下運動しかできないが、二速、つまりは光のリングが二つになると、ある程度空中を自由に動けるようになった。そこから、さらに三速、四速と増えていくと、速度と機動力が上がり、より自由に速く空を飛べることができた。

 そして、飛行部でスタートラインに立てるのが、二速からと言われていた。


「サバル先輩、一年の時に止めちゃったんだ。先輩、リリャと同じで、一年の頃から、二速だったらしいんだけど、とある大会で負けて、それで、自分には飛行の才能がないって、言ってやめちゃったらしいんだ。俺もあんまり、詳しいことは分からないんだけどさ、クリス先輩が言うにはそうらしい」


「クリス先輩とサバル先輩は、仲良かったんですか?」


「さぁ、どうなんだろうな…俺が入った時はもう、サバル先輩がやめてたからな、それからクリス先輩も、彼女と交流は一切無いらしいし、なんか部活のイベントの時もどっちかというと、サバル先輩が避けてるみたいなことも聞いたけど、実際のところ俺もあんまり二人のことは深入りしてないから分からないんだ。聞きづらいってのもあるし」


 確かに今日、クリス先輩の名前を出した時、サバル先輩は黙り込んで殺気のようなものまで放っていた。触って欲しくない場所に触れられたような、そんな感じだった。


「というか、サバル先輩って、剣闘部の部長なんですよね?」


「ああ、そうだな、それはまあなんというか、そっち方面の才能は凄かったってことだろな、正直、サバル先輩は俺でも怖いところあるよ、まあ、今日はリリャ、お前のことでいっぱい、いっぱいだったから、何とも思わなかったけど」


 やはりサバル先輩はなかなか怖い人なのだと、ラウル先輩の話しを聞いると確信させられた。


「アガットは、あんな先輩と一緒で大丈夫なんだろうか…」


「アガット?」


「剣闘部の私の友達です。彼女、サバル先輩と一緒に毎日稽古してるみたいで」


 あんな暴君のような人がアガットを指導していると思うと、リリャは心配でならなかった。


「いや、彼女の悪い評判は聞かないから大丈夫だと思う、俺も剣闘部に友達がいるけど、サバル先輩、最初だけ怖いけどあとは優しいって、それに人を見る目もあるようで、気に入った生徒にしか厳しくないとか、なんていうか、もしかしたら、他の奴には興味がないのかもな」


 優しいという言葉がリリャの中でサバル先輩には当てはまらなかった。初対面に剣振り回してくる人間のどこに優しさがあるのか?あれはもはや戦闘狂に間違いない、野蛮人だった。そして、リリャは自分が思いっきり反則をして、水魔法をお見舞いしたことを思い出す。


『次会ったら、殺されるんじゃないか…』


 不安に駆られ青ざめていたリリャに、ラウル先輩が声をかけた。


「そうだ、リリャ」


「え、なんですか?」


「夏に大きな大会があるから、それだけは覚えておいてくれ」


「夏にですか?」


「そう、【ゴールデンウィング杯】っていう、超でかい大会があるから、それにリリャも出て欲しいって、クリス先輩も言ってた。そして、俺もリリャにはその大会に出て欲しいと思ってる」


「別にいいですけど、私、出れるんですか…?」


 そんな大きな大会、今の自分では出るどころではないのではとリリャは思っていた。まだ、ラウル先輩の監視下でしか飛べない分際の自分では、選手以前の問題なので?と思った。


「出れるよ、というより、リリャはすでに参加条件は満たしてるから」


「そう、なんですね……」


 疲れ切った状態で、そんなこと言われても、考えられる元気はない。次第にリリャの瞼が下がってくる。


「まあ、一緒に頑張って行こう。俺もその大会には命かけてるし、なんてたって、学生時代にその大会のゴールド帯で優勝すれば、プロになれるかもしれないんだ。なあ、リリャ、お前も、空飛んで飯食っていきたいだろ?」


 ラウル先輩がリリャに熱い視線を向けるが、すでに目を閉じて深い眠りについていたリリャにはその熱い思いは届かなかった。


「たく、いいところで寝るなよなぁ、可愛い後輩め…」


 ラウル先輩が星空の夜を横切っていく。


 その後、ラウル先輩は、リリャを女子寮まで無事に届けてくれた。夜だというのにラウル先輩の気配察知した女子たちが、女子寮の門に殺到し、ちょっとした騒ぎになったということは、翌日、目覚めた時傍にいたルコから聞かされるのだった。

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