先生
体育館での入学式が終わった。校長先生の退屈しない『黄金』の話しの後は、お偉い人達の退屈な話と退屈な式典がいくつも続いた。どれも自分たちのことを歓迎してくれているのだろうが、どうにも大人たちの大人たちによる大人たちの為だけの、式典へと後半は様変わりしてしまい。
リリャは、式典の後半にはもうずっとあくびをしながら、黄金のことについて考えていた。
『私が、黄金を見つけるんだ。だけど、見つけたら、その黄金がもらえるのかな?』
そんなことを考えていると、式典はあっという間に終わりを告げていた。
式典が終わると、クラス決めのため、体育館の前には四つの大きなスクロールが展開された。そのスクロールは魔法で浮いており、新入生たちは初めて見る魔法に声をあげて驚いていた。
その縦長の大きな浮遊するスクロールには、新入生たちの名前が書かれていた。
スクロールは全部で四つ、ひとクラス二十四名の名前が書かれており、朱雀、白虎、青龍、玄武と組みが分かれていた。
「それでは、前の席の人から順番に自分の名前を見つけ次第、担任の先生のところに行ってください」
一番前の席にいたリリャがルコを連れて、他の新入生たちと共に、スクロールに書かれている自分の名前を探す。
するとリリャは、朱雀というクラスで自分の名前を見つけた。
「あ、あった」
「え、どこ、リリャちゃんはどこの組…」
「スザクだって、ルコは……、えっと、あ、下の方にルコの名前もあったよ、同じクラスだ」
リリャがルコの名前を見つけてあげた。
「や、やったー!!!」
ルコがとてつもなく嬉しそうにリリャに抱き着いていた。彼女はまるでこの学園に受かった時と同じくらい喜んでいた。
しかし、実はリリャも同じくらいルコと一緒のクラスになれたことが嬉しく、飛び跳ねて喜びたかったが、ルコの喜び方が尋常ではなく、彼女をなだめる方が大変だった。
「よしよし、とりあえず、朱雀のクラスのところに行こうか」
体育館の脇には、クラスに応じた担任の先生たちが並んでまっていた。朱雀の先生は優しそうな女の先生だった。
「あなた達は、私のクラスのリリャさんとルコさんね、こっちで待ってて」
どうやら担任の先生は生徒の顔と名前を憶えているようだった。
『一度も会ったことないのにどうして知ってるんだろう?』
やがて体育館にいたすべての新入生たちが、自分のクラスの場所に移動し終わる。
「それじゃあ、皆さん、私について来て下さい」
朱雀組から、体育館を出る。すぐに外靴に履き替えて校庭に出て、校舎の東館の一階に向かった。朱雀組は校舎の東館一階の角部屋の教室だった。本館から通路を通って東館に入るすぐの場所だった。
そこは今朝、リリャとルコがマリア先輩と一緒に入った教室でもあった。
教室に新一年生の朱雀組の生徒たちが入る。
「席は後で決めるから、今は、みんな自由に座っていいですよ」
リリャはルコと一緒に一番前の席に座った。リリャは一番前の席が好きでもあった。みんなからは変っていると言われたが、黒板も見やすいし先生の声もはっきり聞こえるなどで、いいことづくめではあった。それに、手をあげれば当てられやすかったし、質問もしやすかった。
全員が適当な席に座ると、先生が自己紹介を始めた。
「これから二年間、皆さんの担任の教師を務めることになった【ハンナ・セナイフ】といいます。担当科目は魔法動物学ですが、みんなには魔法学の基礎を教えていくことになるので、よろしくお願いします。生徒たちからはハンナ先生って呼ばれているので、皆もそう呼んでくれると嬉しいです」
リリャは一番前の席で、ハンナ先生のことをジッと見つめていた。
『若くて、可愛い系の先生だ…』
薄いピンク色の髪に茶色い瞳。先生にしてはやはり若く、それでも彼女からにじみ出る明るさからも、リリャは最初からハンナ先生に好感を持つことができた。きっといい先生なのだろう。そして、二年間という短い期間だが、仲良くしていきたいと思った。
『魔法動物学って、魔獣とかのことかな?後で聞いてみようかな……』
リリャが先生に興味を持っていると、そこでハンナ先生がみんなに言った。
「それじゃあ、さっそく、みんなにも自己紹介をしてもらおうかな?できれば名前と出身、あとは自分の将来なりたい魔法使いぐらいはいって欲しいかな?まあ、それじゃあ、そっちの右端から順番にお願いしてもいいかな?」
一年朱雀組での自己紹介が始まった。