優しい光
「さあ、着いた」
リリャが、キアとルコを連れて、目の前に聳え立つ建物を見上げた。
校舎の西側に広がる魔法特区アイリス、その中の北側に医療棟はあった。特徴的な清潔感ある白い大きな建物は、いかにも病人を扱っている場所ですと明言しているような漂白されたような場所であった。
建物の扉の前には医療部体験入部の会場と書かれた看板もあった。
「医療部の会場はこっちだって、二人とも行こうか」
医療部の長い廊下を歩きながら、後をついてくるキアにリリャはここらで無理やり連れて来たことを謝った。
「連れ出してごめんね、そのキアは、医療部とか興味なかった?」
「ううん、ついて行くよ、リリャ」
相変わらず表情は無を張り付けたようだったが、それでも、キアも悪い気はしていないようだった。
「そっか、ありがとう、今日はルコの為にここに来たかったんだ、ね?ルコ」
「うん、ありがとう、リリャちゃんも、えっと、キアさんも」
ルコが何度も頭を下げていた。
リリャたちが進んで行くと、廊下に飾られたなにやら勲章やトロフィーのようなものがたくさん置いてあった。
『ここの医療部って、確か、凄いって聞いてたな…』
リリャたちは並べられたトロフィーの棚を通り過ぎて、会場を目指す。
この医療棟、医療施設として機能しているのはもちろん、学生だけではなく外部からの医師たちも滞在していた。学園内での魔法事故など怪我人が出た祭の出動に常に備えおり、この医療棟は学園内の生命線ともいえる場所だった。
ただ、ここは学園でもあるため、学生たちが医療の技術あるいは、治癒魔法を学ぶ場として、学園側が、将来の治癒魔法使いを増やすために用意した場所でもあり、学生たちは医療や治癒魔法に関して、実践に近い体験を外部の医師たちから教われる学びの場としても機能していた。
医療部の生徒たちはこの部活動内で、すでに医療の学習そして、医師として貴重な経験を積み、卒業後はすぐに街の医師団へと引き抜きなどがあり、他の部活動と比べると、学園外の社会との繋がりが強い部活動でもあった。外部の医療機関との繋がりが色濃く表れる部活動である医療部。それはもはや部活動というよりは医師を育てる育成機関としての立ち位置を医療部は築き上げつつあり、学園内でも、その実績は高く評価され、医療部は他の部と比べるととても優遇される立場にあった。
特にここ最近の高学年の先輩たちは、どうやら、この医療部でやたら優秀な成績や実績を積み上げており、現在、この魔法学園アジュガの医療部は、パースの街の医療機関、軍医、白魔導協会、その他各地域の医師団から注目を集めているようだった。
リリャたちが、体験入部の会場にたどり着くと、そこにはまず新一年生が結構いた。女子生徒の比率が多かった。そして、それに負けないくらい他の上の学年の先輩たちも集まっていた。ホール内は各学年ごとに分けられ、会場にはたくさんの女子生徒たちで溢れかえっていた。
リリャたちもしばらくそのホールで待っていると、部長のビクトリアがみんなの前に現れた。
「一年生の皆さん、これから医療部の活動内容について話していくので、ぜひ、最後まで聞いてください。それと毎年、この体験入部に参加してくれている皆さんにも感謝しています」
先輩たちの中には、ビクトリアに黄色い歓声をあげている者たちがいた。どうやら、彼女のファンのような者たちもこの場に集まっているようだった。
「さあ、一度静かにお願いします。いまから、まだ医療部を知らない方々に説明を始めますので」
医療部の部活動の概要を部長のビクトリアがみんなが静かになると説明し始めた。
「医療部は、主に二つの大きな流れがあります。ひとつは治癒魔法です。きっと皆さんはこちらを学びにこの医療部に来ていただいたと思います。治癒魔法は、魔法を用いた治療なので簡単に三つのクラスに分けられています。それが、低位、中位、高位の三つです。皆さんには初心者でも習得できるような、低位の治癒魔法から少しずつ学んでいって欲しいと思っています。この治癒魔法を専門としている外部の先生たちもこの医療部にはたくさんいらっしゃるので、ぜひ声を掛けてみてください。ここは医療施設でもありますが、学びの場でもありますので」
ビクトリアがそう言うと、周りにいた先生たちが、一年生の生徒たちにニコニコと手を振っていたり、笑顔を向けていたりした。
「そして、二つ目は医術です。こちらは治癒魔法を使わない傷の治療技術になります。医療道具などを使って、実際にケガをした部分を物理的に、包帯や、紐などで止血したりと、少々魔法学園に来たのにと思うかもしれませんが、こっちも大事な技術で廃れさせてはいけないものとして、我が医療部としては、医術も取り扱っています。ぜひ興味があれば、医術の方も体験していってください」
ビクトリアが簡単に部活動の紹介を終える。リリャは、治癒魔法の方に興味があったが、あいにく、まだ、魔法安全学のテストに合格していないため、体験はできそうにもなく、見学がこの時点で決まっているようなものだった。
『まあ、今日はルコの為に来たようなもんだしいいか…』
リリャが隣にいたルコを見ると、彼女もリリャの方を見て、楽しそうに笑っていた。
「それではこれからみなさんには医療部の活動を実際に体験をしてもらいます。この医療棟内に、沢山の体験コーナーを用意したので、棟内に設置された看板に従って、移動をお願いします」
すると先輩たちは去年からすでに知っているのか、すぐにホールから飛び出して行ってしまった。
一年生たちは、ホールの前に設置された看板を見て、どこを回ろうか考えているようだった。
「ルコはどこに行きたい?」
「白魔法のコーナーに行きたいけど」
「えっと、白魔法は…」
ただ、そこでリリャたちがみた看板に白魔法のコーナーはなかった。
「白魔法のコーナーは無いみたいだけど」
「あれ、そうなんだ…それなら、治療魔法でもいいよ、あ、二人は見たいところあった?」
キアは首を横に振っていた。
「もう、今回はルコが主役なんだから、ほら、遠慮しないで治療魔法のコーナーに行こう!」
医療棟の一階で行われていた治癒魔法のコーナーの教室は大勢の生徒たちでにぎわっており、リリャたちがたどり着いたころにはもう、満員で入室はできないようだった。
「人、多いね、人数が減るまで別の場所いこうか」
リリャたちはその後、医療棟を見学するという意味でも、棟内を歩き回った。魔法に関するコーナーはどこも人気で、人であふれかえっていた。やっと入れた教室のコーナーも、治癒魔法の歴史を紹介しているコーナーで、実際に魔法を体験できる場所ではなかった。
だが、リリャはそこに置かれていた治癒魔法の本を数ページめくるとそれはそれで面白く、しばらく、ルコとキアのことも忘れて読み込んでいた。そのため、ルコとキアもしばらくはこのコーナーで足止めということになった。
「ルコ、ちょっと来て」
展示コーナーの机に置かれていた本を読んでいたリリャはルコを呼んだ。ルコが来るとリリャはほんの一部を指さした。
「ここに白魔法のことが書かれてるよ」
「え、どれどれ」
ルコが覗き込むそこには白魔法の起源についての歴史が簡単に書かれていた。
*
白魔法の起源は、千四百六十年に実在したとされる【聖女ナイラ】の固有魔法とされている。彼女の白き輝きを伴う治癒魔法は、一度に何百何千という膨大な数の人々を一瞬にして癒したとされている。まさに彼女に治せない傷はなく、どんな重傷もたちまちに完治させたとして記録されている。このことからも、彼女は、今も一部の地域では聖人として崇められている。
だが、一方で、彼女の固有魔法は、白魔法として転用されたことで、現代にいたるまでの戦争の激化を招いたとして、死の女神として忌み嫌われている一面もある。
*
「ナイラだって、ルコは知ってた?」
「し、知らなかった…私、まだ、何も勉強できてないから…」
「じゃあ、まずは初めの一歩だね、白魔法はこのナイラって人が、えっと、固有魔法ってなんだ?」
そこで隣に来ていたキアが口を開いた。
「固有魔法は、天性魔法のこと」
「え、ああ、そうなの、あれだよね、生まれつき持ってる人は持ってる魔法のことだよね、聞いたことある。私も小さい時、そういった魔法ないかなっていろいろ試したことあるよ」
「天性魔法は、あんまり子供の時には発現しない。というより、発現していたとしても自覚がない事の方が多い。どちらかというと、成長して自分の中にそういった力があったことに気付く事の方が多い。それと、その聖女ナイラ、『死の十年』という五百年戦争の中でも、最悪の地獄の時代を築いたことで戦士たちの間ではとても、有名よ」
リリャは、キアが良く話していることにも驚いていた。
「死の十年?」
「そう、白魔法はその完璧に傷を癒す高い治癒能力から、戦場ではなくてはならない存在になった。だけど、その影響で戦場で使われていた魔法がより強力になることは誰の目から見ても明らかだった。白魔法で癒される前に殺す魔法の開発が進んで、今では白魔法以外の魔法は総じて黒魔法と呼ばれるくらい、白魔法は人々の魔法に対する価値観を変えた」
やはり、彼女も補習を受けるような生徒ではなかった。同じ歳とは思えない豊富な魔法に対する知識。そして、キアという女子生徒が、特別な生徒だということは、前に彼女の護衛の人たちを見ればよく理解できた。
リリャとルコは、キアのことをただ黙って見つめていた。
「しゃべり過ぎたか…」
「え、ああ、違うよ、聞きいっちゃって」
「家の事情で戦争に関することは、小さい頃から教えられていたんだ」
「へえ、そうなんだ!凄いなぁ…」
ただ、リリャからすれば、キアが凄いわけありだけど秀才程度にしか認識しておらず、彼女がどんなに凄い人だったとしても、リリャからすれば彼女は、自分のひとりの友人として変わることはない。
庶民であるリリャには、先輩たちならまだしも、上下関係に対して考え方が希薄であった。
「ねえ、もっと教えてよ、キアの知ってること、なんだか、興味が湧いて来た」
リリャがキアに詰め寄るが、彼女は遠慮した。
「構わないけど、後での方がいいんじゃない?今日はルコさんの為に、ここに来たんでしょ?」
「おっと、そうだった、ごめんよ、ルコ」
リリャがルコに振り向くと、彼女は首を左右にぶんぶん振っていた。
「いいよ、私は、全然。体験っていっても、そもそも、私、この医療部に入るつもりだし」
「いいや、ここはルコ様の命令を聞きます。なんでもご命令ください、ルコ様」
リリャがふざけだして家臣の真似をする。
「なんでも、急にそんなこと言われても…」
その時だった。ルコのお腹がなったのは。グウウウと可愛い音がなった。彼女はそれを懸命に抑えようとお腹を抱えてしゃがみこむ。
「おや、ルコさん、お腹がすいたのかい?」
「え、あ、そ、そうみたい…えへへへ」
「そうか、そうか」
ギュルルルル。
そう言っていると、リリャの腹も盛大になった。リリャは一切恥ずかしがるそぶりを見せることは、一切なく、堂々としていた。腹が鳴るのは、腹が減っていると告げているからしかたないのだ。
「今日はもう飯にしよう、医療部の体験入部は今日までじゃないし、またみんなでこようか、キアもそれでいいかな?」
「ああ、二人に従う」
結局、医療部体験入部の初日で、リリャたちが得るものはなかった。
そして、リリャたちが腹ごしらえに行こうと、医療棟を出る直前だった。
「あら、あなたは、確か、ルコさんじゃない?」
「あ、こ、これは、ビクトリアさん、お、おはようございます!」
「こんにちは、みんな、もうお帰りですか?」
ルコの焦った挨拶に返事をしたのは、医療部部長のビクトリアだった。彼女は後ろに医療部の部員を連れていた。彼女は同じ学園内の生徒でもとても大人に見えた。
「えっと、そうです。今日はどこも回れなくて、明日またこようかと思って…」
あの人見知りのルコがビクトリアとは、率先して話せているのを見るに、医療という世界にルコはとても魅力を感じているのだろうと、隣にいたリリャは勝手に想像する。
「そう、それがいいわ、医療部も結構人気の部だから、初日はどこもこむのよね」
ビクトリアという女性はとても優しい口調で、ルコも安心して話せているようだった。
「あの、ちょっといいですか?」
リリャが横から割って入った。
「えっと、あなたは…」
「リリャです。ひとつ聞きたいことがあるんですけど」
「なんでしょう?」
「白魔法は、体験できないんですか?」
そこで、ビクトリアが少し困った顔をした。
「ごめんなさい、白魔法は、生徒の中でも私しか使えないの」
「もしよければ、ルコに白魔法がどんなものか体験させてあげることはできませんか?あなたにしかできないなら、白魔導士を目指しているルコに教えてあげて欲しいんです」
リリャが部長のビクトリアに対してそのような生意気な口を利いていると、今度はビクトリアの後ろから医療部の部員が話しに割って入って来た。
「ちょっとあなた、一年生?ビクトリア部長は今忙しいの、あんた達なんかに構ってる暇なんてないのよ」
凄んで来た上級生に対して、リリャは一歩も引かなかった。
「そうですか、ならいいです。お邪魔して申し訳ございませんでした。ルコ、行こうか」
リリャがルコの手を取る。
「待って下さい」
リリャが不機嫌な態度で振り向く。
「何ですか?」
「もしよければ、今ここで見せてあげることもできますが、どうですか?」
「ちょっと部長、ダメですよ、白魔法の無駄うちは」
「大丈夫です。それに何日も使っていないと、白魔法の感覚を忘れそうになるんです。それだけは絶対に避けなければなりません」
「ですが…」
「それに、ルコさんは、将来私たちの部に加わる仲間なんですから、後輩にいいところを見せるのは先輩の務めでもあります」
ビクトリアが、その部員をなだめると、ルコに向き直った。
「ルコさん、白魔法がどういうものなのか、一度見ておくのも大事だと思います。ですがひとつ約束してください」
「何ですか?」
ルコはまっすぐビクトリアのことを見つめていた。普段、あまり、人の目を見ないルコが、ビクトリアに対しては心を開いていた。
「………」
リリャは黙って二人のやり取りを見守っていた。
「ルコさん」
「はい」
「たとえ、白魔法が使えなかったとしても…」
そのことを聞いたリリャが聞き捨てならないと声を上げた。
「ちょっと!」
「シッ…」
しかし、その時、ビクトリアがリリャに静かにと口元に人差し指を立てて、向けた表情は、とてもさっきまでの優しい顔とは比べ物にならないくらい、恐ろしいものがあった。
リリャは開いた口が塞がらず、その場で静止していた。
「たとえ、白魔法が使えないと分かっても、どうか、医療のことを嫌いにならないでください、それが私からの簡単な約束です…」
その時見た、ビクトリアの顔はどこか寂しそうな顔をしていた。
「そ、それなら、お約束できます。わ、私は、人を助けられるような人になりたいんです」
ルコが緊張しながらも言葉を紡ぐ。
そして、その合間にそっとリリャの方を一瞥する。
「私には憧れの人がいます…だから、その人のようになるためにも、私は人助けができることを、この魔法学園で学んでいきたいんです。白魔法はその人助けの中でもとっても、凄いことだから、私は目指しているんです。だから、たとえ、ダメだったとしても私は他の方法で、人助けができることを探します。それは私の人生の目標なんです!!」
ルコの想い。それは人助けだった。彼女らしいと思った。ルコはとても優しい心を持っている。他人はルコの外側の気弱な部分しか見ることができないが、リリャからすれば、ルコの意思は強い。
だから、こういう時、試されている時、ルコは負けない。それは彼女にちゃんと芯が通っているからであって、そういうところが、自分とは違っていたりするから、リリャはルコのことを尊敬していた。
『それにしても、ルコの憧れている人ってだれなんだろう…』
リリャはルコの憧れの人が誰なのか、詳しく知りたかったが、そんなことよりも、ビクトリアの表情がみるみる内に穏やかになっていることに気付いた。
「ルコさん、あなたの素晴らしい答え確かに受け取りました。その答えが嘘じゃないと信じて、今、あなたにお見せします。これが白魔法です」
すると、ビクトリアが、目を閉じ、小さく短い呪文のような願いのような言葉を唱えた。
「優しき光よ」
白い柔らかな光が、ビクトリアを中心に、辺りにゆっくりと広がった。その光はまるで、風に揺れる植物のように、自然に優雅に、光の手がまるで女神様の手が、誰か傷ついた者がいないか探る様に、その光は辺りに広がっては、消えた。
リリャが白魔法を見たのはその時が初めてだった。
とても優しい、その魔法に、今日紹介されていた聖女ナイラが、誰かを傷つけたくて生きたとはとても思えなかった。
『これは、凄い、魔法だ………』
リリャが白魔法を見て感動して言葉を失っていると、なぜか隣にいたルコが嬉しそうにこちらを見て微笑んでいた。
その時、リリャはルコがどんな思いで微笑んでいたのか、まるで見当もつかなかった。
ただ、そこには綺麗で優しい安らぎだけが満ちていた。
***
医療部の体験入部の帰り際、リリャたちが食堂に向かっていると、ルコが言った。
「リリャちゃん、キアさん、今日は、その、私の、用事に付き合ってくれてありがとう、もしよかったら、明日は、リリャちゃんの飛行部の体験入部にいくし、キアさんも、その何か見てみたい部活動があったら………」
ルコがそこで口をつぐんで、リリャに助けを求めるように見つめていた。リリャはもちろん、ルコが何がいいたのか、よく分かった。一緒に来て欲しいのだろう。
「私とルコがお供するよ」
そうリリャが続けると、ルコが助かったといったような顔で何度もうなずいていた。
「キアはどこか見てみたい部活動とかあるの?」
「ない、部活動に入るつもりはない」
「え、そうなの!?」
「ああ、だから、リリャの行きたい部活動に行けばいい、飛行部なの?」
「そうだよ、キアも明日一緒に来てくれる?」
「かまわないが、私とリリャは明日の午後も補習だ」
「それなら、今日と同じ手を使うから大丈夫、大丈夫。それにレキ先生はなんやかんや甘い方の先生だから、なにかと理由をこじつければ、簡単に抜け出せるって!」
調子に乗っていたリリャに、キアが平然とした顔でリリャの後ろに注目していた。
「リリャ、後ろ」
「え?」
リリャが後ろを振り向くとそこには、レキ先生が立っていた。
「ほう、どうやら、僕は、リリャさんに、そうとう甘く見られていたのですね?」
レキ先生はとても、意地悪そうなにやけ顔をしていた。
「明日は、そう簡単には逃がしませんから、覚悟しておいてくださいよ!リリャさん!!」
そういうと、レキ先生は颯爽と、夕暮れの道を校舎の方に去っていった。
「なんで、こんなところにレキ先生がいるの…運悪いよ……」
「………」
キアは去って行く、レキ先生のことを見つめていた。
「あの人はどこにでも現れる」
「え、どういうこと?」
「さあ、私にもわからない…」
キアの発言に、リリャは首をかしげていたが、そこでギュルルルルルルルル!と悲鳴のような腹の音が、リリャから鳴った。
「まあ、いいや、ごはんにしよう!さあ、ルコ、キア行くよ」
それから、リリャは明日どんな作戦で補習を抜け出すか作戦会議をするためにも、すかせたお腹で、食堂へと向かい、一日を終えるのだった。




