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退屈から抜け出して

 いつもの西棟にある補習の場所としてあてがわれた特別教室。

 一年生は午前の授業が終わり、午後、リリャとキアはその空いた時間を補習の授業に当てられていた。退屈だけが支配するもうすでに完璧に理解した授業内容を、リリャは永遠と聞かされていることにうんざりすらしていた。


 そんな午後の退屈な補習の時間に、リリャは動いた。


「レキ先生!」


 リリャは、レキに向かって手を挙げた。


「どうしたのかな?」


 振り向くレキ先生が優しく微笑む。


「補習を抜けてもいいですか?」


「へ?」


 レキは優しい笑顔を張り付けたまま困惑した。リリャは確かに補習を受けなければならない身だったが、それでも、リリャにも譲れない用事というものがあった。完璧な内容の補習から抜け出すに値する理由があった。


「どうしてかな、何か急な用事でもあるのかい?」


「そうなんです。きっと今も外で待ってくれているルコと一緒に医療部の部活動に参加したいんです!」


 リリャが教室の壁を指さすがそこにルコがいるかなど、外を見てみないことにはわからなかったが、リリャには今日もルコが自分の補習が終わるまで待ってくれているという確信があった。


「テストも近いよ?」


「お願いします。テストの範囲の内容は全部理解しています」


 リリャの唐突なお願いにレキ先生は、少し考えてから頷いた。


「それなら、私が出す問題を解けたら、今日はリリャちゃんの補習は無しとすることにしょう」


 レキ先生がちゃん付で呼ぶのはリリャがそれだけレキ先生と仲良くなった証拠でもあった。


「じゃあ、簡単なのでお願いします」


「それはどうかな?」


 レキ先生はもっていた教科書のページをパラパラとページめくる。


「では、魔法は基本的に魔法使いのみに許された行いでありますが、魔法使いの称号を持たずに魔法を行使した者には、どんな罰が課されるか、答えられるかな?」


 その設問を聞いたリリャが首を傾げるどころか、何かも間違っていると分かるのはあっという間だった。


「その問題、初めから間違ってませんか?」


「ほう、というと?」


「そもそも、魔法は魔法使いだけのものじゃないですよね?私、ハンナ先生が持ってた【魔導法】の本を見せてもらったんですけど、魔法使いは、魔法を使えるすべての人に該当するって書いてありました」


 魔導法とは、国家が定めている魔法に関する制度であり、【魔導協会】が国家の魔法に関する法の顧問としてついており、定められた法律であった。リリャは、その最初の文を読んでいた。これは魔導法の中に、魔法安全学の源流となる、【魔導安全法】が記されているからで、リリャは魔法安全学を学び終えても、なおその先にある学習をひそかに続けていた。だからこそ、リリャは、補習の授業を退屈だと感じていた。リリャはすでにその先の原文の方を読み進めていた。


「だから、魔法使いとは、エーテルで魔法を使う全ての人を指すはずです。それと、その問題、魔導法の最初の定義ついてのひっかけ問題もだし、そもそも、罪とか罰とか魔法の刑法とかの話しじゃないんですか?魔導安全法でもないですよね?」


 リリャが猛抗議する。


「あはは、ばれっちゃたね…」


「ばれっちゃたじゃないですよ!」


 その問題は、魔導法の原文を呼んでいなければ正確にその問題の解釈すらできないし、答えたら答えたで、問題文の中の定義が間違っており、答えがそもそもないという罠だらけの問題文に、リリャは悩むことすらもなかった。そして、そんなめちゃくちゃな問題をだしたレキ先生に呆れてもいた。


「それにしても、リリャちゃん、よく勉強してるね。普通の子ならさっきの問題どんな罰があるか、考えちゃうんだけどな」


「私に子供だましは通用しません、それじゃあ、キアも連れて行くんでバイバイ、レキ先生!」


「え、あ、ちょっと!!?」


 焦るレキをよそにリリャは、キアの手をとって、補習の教室を抜け出した。


 補習の扉をあけると、廊下で膝を抱えて待っていたルコがいた。


「ルコ、さあ、医療部の部活動の体験入部にいくぞ!」


「え、あ、うん!!」


 逃げるように補習教室から飛び出したリリャは、キアをなかば強制的に連れ出し、ルコを伴って、医療部がある医療棟へと走っていた。

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