素敵な先輩
早起きして外に飛び出していたリリャとルコは、偶然であった先輩に連れられて、校舎内を案内されていた。
「私の名前は【マリア・フィリディーズ】あなたたちの名前を聞いてもいいかな?」
マリア先輩がリリャとルコに尋ねる。
「私の名前は【リリャ・アルカンジュ】っていいます!」
最初にリリャが名乗った。
「わ、私は、【ルコ・アムール】です」
次にルコが名乗った。
「そうか、リリャちゃんに、ルコちゃんだね、私のことはマリア先輩でもマリアでも好きに呼んで」
「わかりました。じゃあ、マリア先輩で」
マリアは赤い巻き髪が似合うとても好感の持てる女性だった。先輩に持つにはとても親しみやすく、リリャは彼女のことを一目会った時から気に入っていた。親切心から気遣いまでマリアは先輩としては最高の人だった。
校舎の中を案内された。玄関から入ってすぐのホールの正面には、二階へと続く階段がある他には、中庭に続く、扉があった。
「こっちよ」
玄関からすぐに左へと曲がると、そこは東館に繋がる通路だった。ガラス窓が並ぶ通路を抜けるといよいよ、そこが自分たちが通うことになる教室だった。
「きっと、ここが君たちのクラスになる教室かな?このフロアの一階と二階が小等部の子たちの場所だから」
教室の扉を開く。
「これが魔法学園の教室………」
そこにはおよそ三十人ほどが入れる教室が広がっていた。新入生たちのために机と椅子が並んでいた。
「普通だ…」
「そりゃあ、普通よ、教室だもの」
リリャの予想では、もっと魔法学園の教室は、飛び抜けた何か魔法道具に溢れ、魔法生物が歩き回る、個性的なものを想像していたが、前に在籍していた小学校と何も変わらない教室にリリャはがっかりだった。
「もっとすごい教室を想像していたんだけど…」
「フフッ、安心して驚くような教室は、校舎の外にはたくさんあるから、これからのお楽しみね、それよりも、もっと校舎のこと紹介するからついてきて!」
リリャとルコは、マリアに連れまわされた。校舎の東館と西館に挟まれた中庭、そこでは掲示板があり、学校中の情報がいつでもなんでも載っており、年がら年中何かしらのイベントが学園各地で行われているようだった。
校舎の本館の二階には先生たちの職員室があり、個性豊かな先生たちが生徒たちを待っていると教えてくれた。ただ、職員室は用が無い限りは入ってはいけないとのことだった。校長室も同じく二階にあるとのことで、校長先生は生徒たちにとても優しく学園のみんなからも慕われているいい校長先生のようだった。
東館が、小等部から高等部の生徒たちの教室であるのに対して、西館は、保健室、音楽室、礼拝堂、多目的ホール、シャワー室、理科室などなど、学校の主要教室があるとのことだった。
ただ、魔法に関する施設はすべてこの校舎の外にあるとのことで、この学園のメインはやはり校舎の外の施設なのだという。
そして、リリャとルコが、紹介されたのはこの学園の中心でもあるその校舎の中だけだった。
「そろそろ、時間か、じゃあ、最後は校庭を見て、入学式をやる体育館に行こうか、体育館は校庭の隣にあるから、校庭を横切って行こう」
マリアについて行く。校舎の東館と西館に挟まれた中庭を本館から真っすぐ抜けた先には、この学園の校庭が目下に広がっていた。緑の芝の斜面沿った階段がその校庭まで続いており、リリャたちは、階段を下りて、広々とした校庭に出た。
「マリア先輩、今日はありがとうございました」
「いいのよ」
「私、マリア先輩みたいな素敵な先輩がいるって分かって、私、ここでの学園生活がとっても楽しみになりました!ね、ルコ!」
ルコも首を何度も縦に振って興奮気味だった。これからここの生徒になる喜びを噛みしめているようだった。
「そうね、私もこの学園がとっても好き、ずっとここにいたいくらい好きなのよ……」
マリアは後ろの校舎を見上げながらどこか寂しそうな顔をしていた。だが、すぐにリリャとルコに向き直ると、とびきりいい笑顔を見せてくれた。
「だけど、あなた達が来てくれて、もっと好きになれそう!」
リリャとルコはそれから、マリアに連れられて体育館へと足を運んだ。そこではまだ生徒たちがおらず、先輩や先生たちが入学式の最終準備の真っ最中で、リリャとルコが一番乗りだった。