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大木

静かな9月の夜がふけて行く…

ヘットホンから流れてくる『東京音頭』の陽気なメロディーが浮いていた。


私は西条八十先生の『トミノの地獄』について話を書こうとしている。

あの、不気味で暗い大正ゴジックの世界から、『東京音頭』に気を向けると、多彩な西条先生の才能に驚く。


私はいまだに、ファンタジーを書けずにいる。

一応、様々なジャンルを少しづつ書いては見るものの、得意、不得意はあるし、大概、皆、投稿する作品のジャンルは片寄るものだけど、西条先生は、恋愛から、音頭まで、よくもまあ、作り続け、そして、しっかりとヒットさせて、憎らしい事に、いまだに色褪せない。

天才と言うのは…実在するのだ。


江戸川乱歩がデビューから『悪霊』を連載するまでの道のりは、

関東大震災から復興を終える東京の歩みでもある。

10年…江戸川乱歩の名前はミステリ界で光輝き、

焼け野原になった東京もまた、首都として復活を遂げていた。

『東京音頭』は、そんな背景で作られた曲らしい。

だから、明るく、陽気な詩と曲調で作られているのだそうだ。


私はこの陽気な曲に合わせ、地獄を巡る覚悟を決める。


『パラサイト』を開かなくては。


ああ、素人の自作の再読…

これは地獄だ。

悪魔が鏡を嫌うシーンがあるが、あんな感じで自分と向き合う行為は、痛いし辛い…


が、やらないわけにはいかない。

次回作も作らなきゃいけないし、書き始めた考察文も完成させないといけない。

見ないわけにはいかないのだ。


私は自作の載ったサイトを開く。

情報を確認する。

完結の時から、ブックマークは減っていない。

嬉しくもあるし、連載の再開のプレッシャーもかかった。


とにかく、『トミノの地獄』に関連する回を探した。


最後辺りから、それっぽい題名をクリックする。

出てきた文章が…胸を突き刺す。


なんか…エジプトの話とか書いてあるよぅ…

アミメットって…


嫌な予感と、記憶がよみがえる。

最後の辺りは、時勢に合わせて混乱している。

2022年は、激動の時代だった…

ウクライナとロシアの紛争やら、元首相の暗殺やら…

剛が突然死して、私はその度に混乱した。


何度かエンディングを変更したから、なんだか、ちぐはぐと物語は進む。


2年に渡る長い1日を駆け抜ける主人公の池上に心が揺れた。


私は沢山の(つる)に覆われた大木のような物語にため息がつく。

大木から蔓を剥ぐように、物語から絡まった謎をとき(ほぐ)すところから始めないといけない。


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