番外悪霊37
私と克也は、お互いに相手の成功を祈っていた。
そんな行為は、大昔から感動的で好ましく描かれる…
内容がオカルトじゃなければ。
克也は、この夜の話し合いをヒントに、怪奇小説で大賞を狙ってほしいと考え、
私は、克也の様々なネタで、いつか、オカルト雑誌『みい・ムー』に克也理論が載る日がくることを夢に見た。
が、お互い、ありがたいけど、迷惑だとも思っている。
いい年をして…SPRとか、心霊科学研究とか…
そんな事をしていたなんて、近所の人に知られたくはないからだ。
が、私が大賞をとるなんて、スプーン曲げより難易度があるし、
克也の理論が世に認められるなんて、念動力で空を飛ぶくらい難しいことに違いない。
そして、何より恥ずかしい。
そんな事を考えていると、克也が少し、面倒くさそうに話をはじめた。
「第3の案は、極めてつまらなくありきたりだ。
だから、話さないつもりだったが、卯月さんがありきたりの話を書きたいようだから、それに合わせた話をしよう。」
克也は少し不満そうだ。
「ありきたり?」
私は、不思議な気持ちになる。
「ああ、我々の読者には、つまらない内容だが、普通に書くなら覚えておく必要が知識だ。」
克也、なんか、俺様系にキャラ変してきた…いつもは腰の低い人なんだよな。
「いや、私、いつでも真面目に書いてるんだけど…」
色々、突っ込みをいれたくなる。
我々の読者とか言うくらいなら、ちゃんと活動に参加しようよ〜
モヤモヤする私に山臥笑いかける。
「ゾーンに来てるから、ちゃんと聞いておけよ!」
困惑する私に山臥がワンポイントコメントを発した。
「ゾーン…」
私は、絶句して克也を見た。そして、山臥に心の中でツッコミを入れる。ゾーンって何?
その様子を見て、正気を少し取り戻した克也はトーンを落として話はじめた。
「期待されても困るな。大して面白くもない。」
「で、なんなの?」
つまらないときほど、前置き長いんだから。
「検閲だ。」
「けんえつ?」
私は一瞬、何の事だか理解できなかった。




