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番外悪霊28

福来友吉

世紀末のオカルトファンなら…否、映画ファンも、この名を知らないはずはない有名人…

しかして、教科書には載らない有名人。

それが福来先生だ。


彼は、科学的な視点からオカルトを…いや、超常現象を研究した人物だ。


しかし…ここで、1933年にこんな有名な実験とともに私の作品に参戦するとは!

「あの、月の裏側の写真…『悪霊』の年の事なんだね。」

私は子供の頃を思い出した。

地球にいる限り、見ることのできない月の裏側。

念写の正しさを証明するために、先生は能力者と月の裏側の写真の念写実験を行う。

そして、アポロが月面に人類を誘い、

科学技術が、人々に月の裏側の写真を届ける頃、昭和の初めに行われたオカルト実験が目を覚ます。


三田光ー氏による月の裏側の念写写真が、NASAの月の裏側の写真に酷似していたと言うのだ!


私も、当時は胸をおどらせた。

なにしろ、月は裏と表で全然、形が似ていないのだから。


「そうだ。『悪霊』を書くにあたって、江戸川乱歩もこれについて調べたり、影響を受けた可能性がある。」

自信満々の克也に山臥の素朴な質問がとんだ。

「え?でも、福来友吉って、インチキ認定されて、社会から抹殺されたんじゃなかったっけ…貞子の実験で。」


高橋貞子…彼女は実在するサイキッカーで、福来に素質を認められて、念写が出来るようになる。

が、彼女の実験は、インチキと言われ、世間の批判を浴びることになる。


「そうだよね、だから、私も、福来先生は、出さないことにしようと考えていたんだよ。」

私は、負け惜しみをするようにボヤいた。


そう、調べたさ。

日本の科学的なオカルト研究をした人だもん。

念写を発明した先生なんだから。

『悪霊』を書くにあたって、絶対、乱歩も調べたと考えたよ…

でも、私も、貞子の一件で思考停止した。


ああっ、もう。


あの有名な月の裏側念写実験が同じ年に行われていたなんて!


「江戸川乱歩…彼は、作家だよ?何となく、民衆が知っていて、魅力を感じるが、ファンタジーにしておきたい…そんなものを物語に呼びいけようとアンテナを張っていると、考える方が正しいとか思わないか?」

夜が深くなって、克也の弁舌が芝居がかる。

アルコールが無くても、自分に酔える人物は安上がりで良いなぁと、ぼんやり考えて、アイスを注文した。

その隙をついて、山臥がビールのお代わりを頼む。


「そうね、小説にするなら、少し前に炎上して、皆、色々知ってる人物が、再び、新しい事をしはじめて登場するのって、興味をひくもんね。」

私は、何度も特集が組まれた福来友吉の研究を思い出す。


科学的に、迷信や神通力を解明しようと考える、福来先生のスピリッツは、決して、悪いものではない。

「でも…『悪霊』には、そんな雰囲気なかったよ。ドイルの話とかは出てるけど。」


そう、この話に福来先生を使うのは難しい。

福来先生は、念写実験など、物理的に何かがおこる現象を調べていた印象で、心霊実験についての記述は私は見かけなかった。

口寄せなどの、物理実験や証明の難しいものは、好きじゃなかったのかもしれない。


そして、何より、江戸川乱歩のオカルト熱の無さが、気にかかる。


そこまでして、乱歩が超常現象に興味があるように、『悪霊』の文章は思えないのだ。


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