番外悪霊25
アガサ・クリスティが…『オリエント急行殺人事件』を引っ提げて参戦(○_○)!!
ああ…嫌な予感がしてきた。
私は完結できる作品と、どんどん謎が増えてカオスになる作品がある。
『パラサイト』を書いていた時の記憶がよみがえる…
あれも、結構、迷い、謎を置いたまま完結させた…
誰も、それに文句をつける読者は居なかったが、評価も増えなかった。
あの時と同じ、沼に引きずり込まれる感じが肌を撫でる。
「解決編を改編しろ、って、滅茶苦茶言いますな!」
今度の乱歩は関西風味にブチキレていた。
どうも、ミステリーの女王クリスティの新作と『悪霊』の内容がかぶる恐れがあるらしい。
「恐れってなんですか?むこうさんの作品、内容を把握してるんでしょうね?」
不機嫌な乱歩に担当がびびりながらなだめる。
「まあ、落ち着いてください。あっ、珈琲おかわりお願いします。」
担当は、ウエートレスを呼び止め、少し高めの喫茶店で打ち合わせをして良かったと思った。
髭を生やした上品で武骨な紳士。
いくら立腹したとしても、乱歩先生も暴れたりはしないだろう。
少しオトナな艶っぽいウエートレスの笑顔に、乱歩先生もクールダウンする。
「相手の内容も不明なのに、盗作扱いは…無茶苦茶やないか。」
少し声を落として、独り言のように乱歩先生はぼやく。
「確かに、そうですが、向こうもあの事件に着想を得て、しかも、被害者が年配女性。複数の傷が残されているらしいんですよ。」
担当は、難しい顔でそう言った。
普通なら…これくらいの類似で内容変更なんて頼みはしない。が、こちらは、江戸川乱歩、凱旋での密室殺人で宣伝している。
あとから、クリスティの作品との類似が酷くて、読者から盗作疑惑なんて出ようものなら、雑誌も先生も傷がつく。
「ほぅ…アガサ女史も、良いとこ目をつけますなぁ。」
少し落ち着いた乱歩先生は、クリスティの新作に興味を持ち始める。
「向こうは列車での殺人事件…らしいです。」
「ほぅ…走行中の列車なら、確かに、密室とも言えますな。」
何か、考え始めた乱歩先生の言葉が標準語に変わり、冷静になったのを悟って、担当もほっとため息をつく。
「いえ、雪で電車が、森で止まる…見たいです。」
「なるほど、周辺を雪で覆い、列車内で殺人をおかすわけか。」
乱歩先生の頭の中に、日本の鉄道が浮かぶ。
自分が作るとしたら…どの路線で作ろうか?
「そういうわけで、少し、様子見をする事になったのですよ。出来れば…先生には被らない結末を…ですね、考えていただけましたら、ありがたく…」
「無理や!」
乱歩先生は、即答し、おかわりの珈琲をもらい、ケーキの追加を頼んだ。
関西弁…難しいわ…
自分の空想にツッコミをいれてると、山臥が口を開いた。
「すごいこじつけだな。」




